魔力ゼロの異世界転移者からちょっとだけ譲り受けた魔力は、意外と最強でした

淑女

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第二章・ギルドで最低ランクまで落ちてしまったので、リアルを頑張ります。

*七十六・鈴魔法学園・再び魔黒曜石の洞窟へ

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 花梨は、早苗が魔法学園に入りたいとほかの人と言い争って、魔力を隠して通うのが面白いのにと子供のように駄だをこねていたことを知っていた。
 だから花梨は、早苗だと思えてならない。

 昨日の模擬戦も、西尾お兄ちゃんの異質な魔力を隠蓑かくれみのに、と考えれば妙に納得が出来る。

 ロベルト教師が、「あいさつは基本だ」と言い、昨日と同じ流れで自己紹介をすませた。
 そして、
なえです。属性は水と風です。魔力量は少ないですが、よろしくお願いします」
 新入生がそう頭を下げて。
 ロベルト教師は「今日も歓迎会だ。俺は今日も飲むぞ!」と、声を大にした。

 結果。今日も、一の五の教室の授業はなかった。
 なんとなくそれに不安を感じる花梨・咲希・小春・クオンだった。

 鈴魔法学園・三日目。

「今日は、新入生達・五人は、素材集めをしてもらう。まとめ役は、ロイで。一応ロイの持ち帰った素材はなかなかの物だったし、期待しているぞ」

 まあSSSランクだからな。あれぐらい当然かと言えば、当然か。ロベルト教師はそう思っているが、ほとんどは花梨の手柄ということを知らない。
 ロイは魔力ゼロの能天気なヤツが玄武竜をいとも簡単に倒したことを説明したが、ロベルト教師は信じなかった。

 そういうことで、再び魔黒曜石の町へ。
 理由は、鈴魔法学園から近いからだ。
 その付近の洞窟で採れる魔黒曜石は、純度次第では学生レベルに限らずトップクラスの素材だ。

 ただし、そういうレベルの素材が採れるのは奥の方で。奥へ進む程に危険度もます。
 奥を目指すならば、当然のように準備が必要になる。お腹を充分に満たすのもそのうちの一つだ。

 ギルド・黒曜の近くにある食堂・ブタのシッポで、
「腹が減っては、いくさはできぬ。って、ね」
 小春はそう言いながら箸でどういう原理かは分からないが残り四分の一をスパゲッティをその一回の動作で口へと運んで、口いっぱいにほおばり、皿を重ねて。
 苗と咲希も花梨も皿を重ねていく。

 どんどん皿がつまれる光景に、ロイつい思ったことを口にしてしまった。
「早苗。なんで、それだけ食って成長しないんだ」
 とっても素敵な笑みを向ける苗。
「成長ってどこかしら、ロイ君?」

「そりゃもちろん、背とか色いろと」
 半分は冗談の意味も含んでいたが、苗にその理屈は通用しそうにない。
「私の名前は、苗であって、早苗じゃありませんが?」

 ロイは、素敵な笑みの眼光に危険を感じとり必死に言い訳をする。
「ま、まて。お、落ち着け、落ち着け早苗。恐らくは、成長期がほかの人より遅いだけ何だよ。きっと、あと三百年もすれば」
 三百年? とロイ自身、意味が分からなくなったがもうその時は遅い。

「ロイ君。わたしの成長期は、どれだけ遅いのかしら!」

 苗は拳程度の小さな氷の固まりを瞬時に形成して。
 ロイは避けることの出来るスピードのはずなのに殺気で動けず、それを顔面にもろにくらった。

 苗は瞳を輝かせた。

「きっと明日には、竹のように伸びているはず」

 逆に早すぎるだろう。
 という考えが浮かんだが、皆は声にしなかった。
「それって逆に早すぎる気が……」
 只一人、ロイを除いて。

「だから、わたしの名前は苗です。早苗さんという美人さんじゃありません」

 ロイは拳程度の小さな氷の固まりをモロにくらい、今度は頭にたんこぶを作っていた。

 苗はギルド・巡礼SSSクラスの早苗本人であることは間違いない。
 花梨も咲希とロイもそう確信しているのだが、早苗からしてみれば些細ささいな問題だ。
 早苗は面白ければそれでいいのだから。

 食事を終えた一行は、魔黒曜石の洞窟へ。

 咲希は花梨から渡された氷翼の指輪を、花梨は炎翼の指輪を、小春は氷柱の指輪を、クオンは闘気術をそれぞれ駆使して。
 ロイと苗は、封印している少ない魔力量でもSSSランクのセンスで。
 どんどん奥へと進んで行く。

 ロイは、難なく玄武竜を倒した花梨や早苗に魔力を隠す必要はないと判断する。恐らく何かしら特殊な魔力を隠しているのは間違いないはずだ。

 ロイは立ち止まる。

「そろそろ封印とかないと、厳しいかな」
 続いて苗。
「わたしも、厳しいかな」

 そう言うと、二人とも宙に魔法陣を描いて詠唱。
 両者の耳は尖り、目測1メートル猫のような白い尻尾が生えてきた。
 ロイと苗の眼は、赤く変色。
 両者の姿は、ほとんど同じといってもよい程にそっくりだ。

 咲希はその魔力量と姿に驚いた。

「もしかしてロイさんって、早苗さんと同じSSSランクで、あの種族の血をひいているんですか!」
 ロイは肯定する。
「まあ、そうだな」

 咲希は、考えてみればわたしや花梨の異質な魔力の方が、よっぽどイレギュラーかもしれないです。内心そうつぶやいて、咲希は冷静さを取り戻した。

「ちょっとびっくりですが、それなら心強いですね。早苗さん」

「咲希さん。わたしは、苗ですよ」

 顔は笑っているが瞳の奥に宿るは、咲希のよく知る妖しさを秘めた輝きだ。

 本能的にヤバイと思ったが咲希は、

「苗さんですね。つい早苗さんと間違ってしまって。すみません早苗さん」

 咲希は、変身した苗によるチョップを脳天に受けてかなりのダメージを受けてしまった。
 ロイと苗は、敵を蹴散らしながら順調に進んで行く。
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