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第二章・ギルドで最低ランクまで落ちてしまったので、リアルを頑張ります。
*七十五・鈴魔法学園・模擬戦?
しおりを挟むロベルト教師は説明を続ける。
「そうだぞ。なんと、ギルド巡礼から氷と風の狩人と、ギルド狐の眼から火の風術士がくるんだぞ。SSSランク同士の試合だ。盛り上がるぞ」
ーー場所は移り変わって、鈴魔法学園の外。地面にいくつもの巨大な魔法陣が描かれている闘技場だ。
一つの魔法陣に、花梨達を含めた観客達がいる中、ゲストの二人が魔法陣へ足を踏み入れると、赤く透明な結界が空高く伸びた。
ゲストは花梨が見知っている二人で、観客の中には何故か西尾お兄ちゃんも混じっていた。
見知った一人は背の低い女性。背丈レベルだけなら幼女でとおるだろう。だが花梨よりは微妙な差で高い。黒のショートスリーブのワンピースを纏い、黒く短めの髪を風になびかせていた。
もう一人は短い髪を黒く染めているが、魔力と顔はロイそのもの。赤紫色のマントを纏っている。
あれって、早苗さんとロイさんだよね? っていうかあの変装だと、ロイさんはロイさんだとバレバレなんじゃ?
花梨は気付けなかった。認識阻害の魔道具の効果を、異世界の魔力が無効化しているだけのことに。
西尾は何故か嫌な予感がして、冷や汗を増量させたが。
千五百人近くいる全校生徒や教師達へ、ロイと早苗二人が軽く挨拶をすませた後。
早くも生徒達は盛り上がり。
早苗とロイは互いに頭を下げ、SSSランク同士による模擬戦が始まった。
いきなり早苗は魔法陣を描かず詠唱もせず、小さな氷柱を無数に上空へ発生させ放つ。
ロイも瞬時に、小さな炎を無数に発生させ相殺する。
威力はそこまで感じなかったが、花梨はそのスピードにちょっと感心する。
もしかして、やっぱりロイさんって結構強い?
そしてまばたきをする一瞬の間。
早苗が魔法陣を描いて詠唱をして放った巨大な氷の固まりが結界を突き破り西尾へとせまり。
なんとなく直感で選んだ場所に誰もいなかった為、西尾は大きな動作で飛び退いた。
西尾は堪らずは声をかける。
「どういうつもりだ?」
早苗は、西尾へ手を合わせてから頭を下げた。
「ごめんなさい西尾君。ちょっと魔法陣がすべってしまって。けど、実力者の西尾君なら許してくれるでしょう。それに昔からの仲だし」
西尾は納得が出来ない。
「いや手がすべったとかならまだともかく、魔法陣がすべったなんてどう考えてもおかしいだろう」
早苗は、もっともらしい言い訳をする。
「それは相手が強かったから、余裕がなかったの。それに西尾君なら対処できるでしょう。だから、ちょっとぐらいの流れ弾は見逃して」
「なんでそうなるんだよ。一応、俺魔力ゼロなんだぞ」
「一応。ということでしょう。それにこちら側の魔法陣は、西尾君はあまり詳しく知らないでしょう。意外とそういうミスはよくあるものなのよ」
早苗の狙いを察して、その狙いに乗らないロイではない。花梨の師匠みたいな立ち位置で、実力も上と早苗から聞かされ、その強さに興味がわいていた。
西尾は、なんとなく二人の考えが読めたが、早苗とロイは陣を描いて詠唱をし封印を解いて変身する。
さすがに、ほかの人のいるところでは安全だろうと思い西尾はその場を離れようするが。ロイと早苗は、見事に息のあったコンビネーションでそれを阻止する。
ロイが頭を下げて、
「あ。すまない。相手が強すぎるから、つい俺も魔法陣がすべってしまった」
早苗も頭を下げた。
「ごめんなさい、ね。相手が強すぎるから、またついわたしも魔法陣が……」
西尾はたまらず叫ぶ。
「だから魔法陣がすべるって! どういうことなんだよ!」
早苗は、はっきりと言いきる。
「いや。本当に相手が強すぎるから、魔法がミスってそれちゃうの」
ロイも、はっきりと言いきる。
「そんなことを言われてもな。そういうミスは結構あることだからな」
西尾も異世界の魔法を使えば相殺しその場を離れることは出来るが、そんなことをしたらいやでも目立ってしまう。下手をしたら花梨と結婚という流れになりかねない。
けれども相手は二人とも封印をといて、阿吽の呼吸で戦うふりをしながら逃げるのを阻止する。
たまに魔法陣がすべり流れ弾という言い訳で、炎と氷で西尾を狙って。
西尾は全力で避ける。
西尾としてはこんな試合もどきは文句を言って中止にさせたかったが、周りが異様に盛り上がっている。
周りの空気が試合の中止を許さない。
模擬戦をよそおっているから西尾はなんとか避けることは出来るが、それでもキツイ。
それでも西尾は避けるしか術がない。
もうこうなったら異世界の魔法を普通に使おうと思いかけたが、やっぱり出来なかった。
西尾は地道に避け続け、SSSランク同士の模擬戦はなんとかことなきを得た。
この後は普通に歓迎会をやって、花梨や咲希、小春やクオンは当たり障りのない受け答えをして。
鈴魔法学園の試験と歓迎会は幕を閉じた。
次の日。
花梨達のクラスの魔道具・魔武器科・一の五へ、また新入生が来ていた。
姿を一目見て、花梨は思った。
あれってどう見ても、どう見ても早苗さんだよね?
赤い髪は背中の半分まで伸びていて、服装も水色のTシャツと、紺色の膝まであるズボン。
感じられる魔力量も少なく、SSSランクの早苗の雰囲気はみじんも感じられない。
だが、一点だけ隠せていないのがあった。
幼児なみの身長だ。
これだけならば、偶然はあり得るかもしれない。
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