魔力ゼロの異世界転移者からちょっとだけ譲り受けた魔力は、意外と最強でした

淑女

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第二章・ギルドで最低ランクまで落ちてしまったので、リアルを頑張ります。

*六十九・とある試練へ・紗耶香の故郷~試練へ

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 *

「ここが、わたしの故郷です」

「ここが紗耶香さんの故郷なんだね」

 花梨が感嘆な声でそう返した紗耶香の故郷は、賑やかだったり活気があったりそんな声があちらこちらから聞こえてくる。

 立ち並ぶ、マホレンガや石造りの三階建てや四階建ての建物。その家十軒分ぐらいの大きなお店。井戸端会議のおばさん達。近くの広場で騒ぎまくる子供達。

 それらは魔黒曜石の町よりちょっとだけ、賑やかで都会だという印象を与えた。

 咲希はそんな感想を胸に秘めた。

「ちょっとうるさいぐらいに賑やかですが、ここもそんなに悪くないところですね」

 小春の感想もだいたい同じだ。
「そんなことよりさ、ごはん。ごはんにしよう。わたし、またお腹すいちゃった」
 恐らく台詞からは読み取れないかもしれないが。

 同意する咲希、
「ですね。わたしもです」
 同意する花梨
「わたしもわたしも」
 同意する紗耶香、
「わたしもお腹すいちゃいました。ごはんにしましょう」

 クオンはある感想を抱かずにはいられない。
「途中で屋台にも寄ってお前ら食べてばっかりだけど、本当に大丈夫なのかよ」

 その突っ込みに紗耶香は、あっ確かにと思って、にっこりと微笑ほほえむ。

「ふところが寂しくなっていたことを忘れていました。まずはアルバイトで稼いでからごはんにしましょう」

 再び突っ込みを入れるクオン。

「俺が言ってるのは、そういう問題じゃねぇ~~」

 小春はさとった笑みで言う。

「は、は~~。わたし分かっちゃったよ。早くとある試練の中身が知りたいんでしょう。クーちゃん」

 間違っているけど。あながちすべて間違いとは限らないけど。

「それは確かに知りたいけど、お前らには不安しか感じないよ」

 そう吐き出したクオンの不安は本物だった。

 *

 今の場所は、紗耶香の故郷の町の外れ。小さな神社が近くにあり、しめ縄のようなもので結界がはられ閉ざされた洞窟の前。
 状況は魔道具・魔武器・ダメージ吸収の水晶なしで、これより先に一人で進みますかというものだ。
 試練をクリアすると、魔力がないもの者でも月属性の魔力が得られる。ファイルドラゴンクエストでも使われている技術だ。

“花梨は月属性を戦斧にゆずる前から、その試練のことを知っていた”。
 それでも月属性を渡したのは、試練は確実性に欠けるし時間もかかる為。いや、そもそも魔力を主体として戦っていた戦斧の実力だと無理な可能性が高い。
 いやそれより、西尾お兄ちゃんと似た存在になりたかったからだ。そうなったら、きっと西尾お兄ちゃんも今より振り向いてくれるはず。
 しかも戦斧に恩も売れて一石二鳥だ。

 ーー結果的に花梨は、西尾とほぼ同じ存在になった。西尾は「いたずらに寿命を伸ばして悪かった」とあやまったが、花梨は意味を呑み込めかった。

 ーーこの試練をクリアしなくっても花梨自身の実力を示すのは充分に可能なはずだ。そうしないと不都合なことが多すぎるが、間違ってもーー間違っても試練をクリアしてはならない。

 だけど小春は単純に月属性が欲しかった。花梨が自身の魔力だけで反発する属性を合成が出来るのも理由の一つだろう。
 小春も西尾も月属性の魔道具を使えば出来るがその練度は低い。異世界の魔力で先輩だったとしても、月属性そのものが自身にないからだ。
 故に小春と西尾はそれをしない。

 紗耶香が問う。

「まずは、誰から行きます?」

 真っ先に右手を上げたのが小春だ。

「はい! はい! わたし最初にやりたい!」

 それに誰も反対しない。

「ーーどうやら、最初の挑戦者が決まったようだな」

 そう後ろから唐突とうとつに声がかけられた。

 声がした方を向くとそこには、背が高く、黒いぼろ服に身を包んだ男が立っていた。無精髭を生やし、黒く長いぼさぼさの髪を後ろで無造作に束ねている。

 その本人と紗耶香以外の全員が誰? と、清潔な印象は受けない彼にそんな思いを向けた。

 小春はついそんな思いを吐き出す。

「このおっさん誰?」

「おっさんは、あんまりだろう。仮にも俺は二十後半だし、そんな歳でもないからな」

 見た目はあれだが年上には違いないので、小春は素直に謝罪する。

「ごめんなさい。そんな格好だからつい」

「確かに、こんな格好だとそう思われても仕方ないか。とりあえず俺と一緒に試練の洞窟へ入ろうか」

 小春は疑問を投げかける。

「試練は、一人だと聞いたんだけど?」

 見知らぬ彼は一息置いて、ゆっくりと答える。

「試練は一人でも、審判が必要なんだよ」

 彼はそう言って近寄りしめ縄のようなものに触れると、それは辺りを真っ白に染める光を放って消えた。

「小春さん」

 紗耶香はそう言って右手を差し出す。
 小春はすぐに察しってダメージ吸収の水晶と魔道具を渡した。
 咲希は意外そうな表情をする。

「あっさり渡すんですね」

「まあね。今さら後には引けないし。まあ、不安がないと言ったら嘘になるかな」 
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