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第二章・ギルドで最低ランクまで落ちてしまったので、リアルを頑張ります。

*六十七・とある試練へ・盗まれた財布

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 ギルド巡礼から目指すは北、紗耶香の古郷だ。

 花梨は久びさにファイナルドラゴンクエストにログイン。ひょんなことから小春を仲間に加わえた。
 花梨は、ギルド巡礼で小春と相部屋でありながらもランクは小春の方が高かったから、リアルでの接点はうすかった。
 だが、小春はとある試練へというのに興味をしめしていた。

 途中で魔黒曜石の町へ。そこへ立ち寄ったのは、ブタのシッポでの食事が美味しかったからだ。

 ちなみに、今の小春のリアル装備は白いワンピースだ。

 様ざまな人達が行き交う幅広い道で、花梨は見知った人を見かけた。
 ツボミとその友人だ。
 ツボミは会った時と変わらない緋色のマントを纏って、友人は桜色の服とスカートを身に付けている。

 花梨はつい声をかけた。

「久しぶり。けど、まだこの町にいたんだね。わたしは、てっきり」

 ツボミの友人は声を荒くして、花梨の台詞をさえぎった。

「それが聞いてくださいよ。始めはきちんとこの町から北へ進んでいたんですよ。それで、途中疲れて休憩をしたんです。そうしたら、眠たくなって起きたらツボミが迷子になっていたんです」

 花梨は思ったことを口にする。

「それぐらい、一度や二度じゃなさそうだけど?」

 ツボミの友人は続ける。

「ええ、そのとおりです。だから、そこまでは予想範囲内です。だからマホデンでツボミに動かないように言って魔力の匂いをたどりながら、時にはツボミに質問しながら探したんですよ。その道のりは困難を極めました」

「つい、お腹が減ってふらふらと」

「ツボミ、言い訳はいいです。そうしたら、この町が目と鼻の先だったんでとりあえずまたそこに戻ったんです。まあそういう訳です」

 そこまで話したところで小春のお腹が、グウゥ~と大きな音をたてた。
 小春はちょっとだけ顔を赤く染めて誤魔化すように言う。

「ところでさ、お腹すかない?」

 すぐさま食いつくツボミ。

「ですね。よかったら、以前助けてもらったお礼におごりますよ」

 ツボミの友人も続く。

「もちろん。わたしを含めて全員全額ツボミのおごりですよね」

「それは、ちょっとないんじゃないんです? エリさん」

「迷子になったのは、誰?」

「わたしです」

 ーーそして今。

 エリを含めて全員の食事代は、ツボミの財布からと決まり。逆に開きなおったのか、ツボミはやけ食いぎみに、食堂・ブタのシッポで料理を頼んでどんどん胃におさめている。
 その量は半端なく普通の人なら二皿も注文すれば、たいていの人が食べきれない料理を十皿ペロリとたいらげた。
 しかも、ツボミはちょっとだけお金に余裕があったから、いつもよりちょっとだけ豪華な料理を。

 それがいけなかった。

 皆が料理を満喫して、ツボミが財布を出そうとしたが見当たらない。
 それを察したエリも財布を出そうとするが、見当たらない。
 ツボミとエリが財布をなくしたことが明るみに出ると、花梨や咲希、紗耶香がお金を払おうとしたが三人合わせても足りない。

「お客さん?」

 お店の人が催促さいそくしている。
 それからツボミとエリが交渉したが、結果はつけがきく程に甘くなく。状況はヤバイ。

 そんな状況の中。

 小春がとった行動は、

「仕方ないから身体で払います」

 というもの。
 ツボミとエリもその案にのって。
 ツボミ、エリ、小春の三人はブタのシッポで働くことになった。

 はじめは皿洗いをしようとしたが、それは人数が足りているらしく、三人は薪割りをすることになった。
「今の時代、薪割り?」って小春は声をあららげたが薪の微妙な火加減はブタのシッポの売りだ。

 ツボミとエリは魔力そのものを放ち薪を割るが、小春は斧の手作業だ。
 自身のスピードに負けないほどの勢いで薪割りをする小春を見て、咲希はつい声をもらす。

「小春ちゃんって、意外と凄いんですね」

「こんなの当たり前だよ。こう見えても、体力だけは人一倍多いんだから」

 汗も流さずに薪割りを続ける小春に、ツボミはつい感心する。
「魔力ゼロと聞いたときはちょっと不安でしたが、これなら安心ですね」
 ちょっと照れる小春。
「うん。後もうちょっとで、わたしのノルマは終わるよ」
 エリも続く。
「わたしも、後もうちょっとかな」
 えっ? と、ツボミは思わずにはいられない。
「え。なんで二人して、そんなちょっとしかないんです?」

 ツボミに衝撃的な事実を突き付ける小春。
「そんなこと言われても、わたしそんなに食べてないし」
 エリも続いて。
「わたしもそんなに食べていませんから」
 そして、小春は「お先に」と一抜け。
 それにすぐ続いて、エリも「私も、んじゃ」と抜けて。

 ツボミが一人だけ残ってしまって。
「そ、そんなのってないよ~~!」
 ツボミはそう叫ばずにはいられなかった。ノルマは果てしなく遠い。

 *

 食べた分は身体で払うとして、財布は探すことになったが、皆で出した結論は盗まれた可能性が高いというものだった。

 小春も盗んだ人の目星はついていたが、“異世界転移者で魔力ゼロ”という立場で魔力に敏感というのは不自然な流れなので、それなりに対応する。 

「というか、ツボミさんとエリさんの財布を盗んだ人の目星はついているんでしょうエリさん?」

「どうして、それを」

「だって、視線がある人物を追っていたもん。そして今の状況。さすがに誰とは特定できないけど、さすがにわたしでも、もしかしてと思うよ」

「はい、そのとおりです。わたしは一人のある少年が怪しいとにらんでいます。わたしとツボミの魔力の移り香がほのかにしましたから」

「もしかして、財布からの移り香」

「可能性は高いと思います。そして恐らくその少年は、小春ちゃんと同じように魔力がありません」

「えっ、そうなの?」
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