60 / 99
第二章・ギルドで最低ランクまで落ちてしまったので、リアルを頑張ります。
*六十・強さを求めて・咲希と紗耶香の戦い
しおりを挟む「ロイさん、わたしが後ろのヤツを足止めしとくから先に行って、いざとなった助けてあげて。きっと咲希ちゃんと紗耶香さんの二人は勝てるだろうけど」
「いや。それはーー」むちゃだ。と、ロイが言い終わる前に花梨は駆け出す。
急いで後を追いかけようとしたが、薄く蒼い何かにはばまれた。
魔力を感じない壁も気になるが、それよりーー花梨には何かしらの隠し玉があると思っているロイだが、相手はSSSランクの魔物。そう簡単にはいくはずがないと思い、魔法陣を描いて詠唱し突風を放つがびくともしない。
それと気になるのは、今さっき見せた花梨の妙な自信だ。それに興味がわいたロイは、戦いで余裕がないせいかこちらへまだ気付いてない咲希と紗耶香を見守ることにした。
咲希は宙を縦横無尽に舞って、炎翼の指輪の翼を一瞬だけ伸ばして攻撃を仕掛け。
紗耶香は水属性の弓と氷と闘気の矢でそのすきを狙い。時にはその矢でブラックドラゴンの体勢をくずして、すきをつくる。
明らかに魔力量は多くないはずなのに、ブラックドラゴンはおのれの皮膚を切り裂く翼にいらだちを覚え始めた。
紗耶香は、より狂暴さを増し荒れ狂うブラックドラゴンへ矢を射り続ける。
ーー紗耶香は、元もと魔力を上手く扱えなかった。兄は、いつも丁寧に魔力の扱い方を教えてくれていた。魔力の総量が多くないからと、魔法とは違う闘気術も教えてくれた大好きな兄。
そんな兄がいなくなったその日。いや、失踪と言いかえた方がいいだろう。
兄が失踪したその日。
その前の夜。紗耶香と一緒に寝た時を最後に、兄は姿を消していた。
当然ながら、いつも大好きな兄の背中を追いかけていた紗耶香は納得が出来なかった。
だからこそ、兄と、その強さを求めて努力をし続けた。自分に限界を感じても、闘気術と魔力と合成する術を編み出した。
兄への執念がそうさせたのだ。
兄を探し求め。再び兄を目にするまでは、絶対に生き延びると。
ーーブラックドラゴンへ矢を射り続ける。
咲希は炎の翼で宙を自在に舞うが、ブラックドラゴンは一挙一動自体が速い。両の鋭い鍵爪で傷をふやされていく。
流れる血は治癒力を高めた魔力が止めてくれるが、ダメージと疲れは蓄積される。
咲希がモロにくらいそうになる攻撃は、さすがに矢だけでは対処できずに、紗耶香も前に出て攻撃を水属性の弓で受け止めたりそらしたり。
ダメージと疲れは、咲希と紗耶香をちょっとずつ蝕んでいく。
それでも二人は逃げない。
魔力と気配で分かる。ロイや花梨の方にも魔物が近くにいたのだ。下手に逃げると、最悪な事態になりかねない。
咲希もある一つの信念を胸に秘めていた。
ーーどうしてあの時、アナタは逃げなかったのかしら。逃げることだって出来たはずよ咲希。そんなあなたを、誰がおくびょう者って馬鹿にできるの?
けれども咲希は反論する。
それは成りゆきです。
だが、相手はそうは思っていなかった。
逃げなかったことは、それだけで勇気なのよ。時と場面を選ぶとしても。
その時は意味が良く分からなかった咲希だが、眠っていた魔族の血を呼び覚ますには充分なきっかけだった。
後から早苗によって封印されたが。
ただし、生命の危機におちいればその限りではない。そして、そのことを咲希自身知っている。
大切なものは、失いたくない。という思いに、人との交流は大切にしなさい。それが強くなる為の一歩でもあるんだから、その言葉が重くのし掛かる。
だからこそ咲希は、色んなことを口にしても花梨とコンビを組んだ。
眠っていた魔族の血を呼び覚まされたその経験で、ものごとには色んな理由があると思い知らされたのも理由の一つだろう。
早苗は、咲希の魔族の血が暴走しても、きっと上手く対処してくれると花梨を信頼していた。
咲希は、自分を成長させる為だけだと思い込んでいるが。
ーーそして、今。
咲希は花梨とロイを守るという信念の元、ブラックドラゴンと真正面から向き合っている。
魔族の血が目覚めたその経験は、弱いことのつらさを、必要以上に思い知らされていたのだから。
咲希は指輪の炎の翼で宙を舞い。翼を伸縮させながら、攻撃を繰り返すが決定打にいまいち欠けていた。
ブラックドラゴンにだって、魔力の心臓部。核となる部分があるはずです。そこを狙えばーー
咲希は激しく宙を飛び回りながらも、ゆっくりと神経を今まで以上に研ぎ澄ませていく。
ーーDランクや、魔力を失った能天気な花梨だって出来たんです。わたしがやって、やれないはずはないです。
咲希は心の中でそうゆっくりつぶやきながらも、ブラックドラゴンをしっかり見据えて宙を舞い続け。
やがて、ほんのちょっとしか違わない魔力の心臓部・核を見つけ出す。
咲希はブラックドラゴンへの脳天のへ視線を移し、そこへ炎の翼を伸ばした。
瞬間。
紗耶香は炎の翼を追い掛けさせるように矢を放ち、ブラックドラゴンの目と鼻の先。矢がその位置までせまったところで腹の底から叫んだ。
「咲希さん! 思いきり目をつぶってください!」
いきなりの叫び声に、咲希は驚きながも言われたとおりに目をつぶった。
瞬間。
矢がはじけ青い閃光が走った。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【完結】百年に一人の落ちこぼれなのに学院一の秀才をうっかり消去しちゃいました
平田加津実
ファンタジー
国立魔術学院の選抜試験ですばらしい成績をおさめ、百年に一人の逸材だと賞賛されていたティルアは、落第を繰り返す永遠の1年生。今では百年に一人の落ちこぼれと呼ばれていた。
ティルアは消去呪文の練習中に起きた誤作動に、学院一の秀才であるユーリウスを巻き込んでしまい、彼自身を消去してしまう。ティルア以外の人の目には見えず、すぐそばにいるのに触れることもできない彼を、元の世界に戻せるのはティルアの出現呪文だけなのに、彼女は相変わらずポンコツで……。

【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
【完結】世界一無知のリュールジスは秘密が多い
三ツ三
ファンタジー
突如地底深くより出現した結晶異物体。
無差別に人々を襲い続ける存在。
「アンダーズ」
人類はアンダーズの圧倒的な戦力により大陸の半分以上を受け渡すことを余儀なくされた。
物言わぬ結晶体に人類が今もなお抵抗出来ているのは人間の体内にある「魔力」を利用することで稼働する。
対アンダーズ砕鋼器具「ブレイカー」
腰部に装着することで内に秘められている「魔力」を具現化する事が可能となった人類の切り札。
「魔力」を持ち「ブレイカー」を扱う事が出来る限られた者達。
「リベリィ」
彼等がアンダーズを倒す事が出来る唯一の希望であった。
そんな世界で「リュールジス」は一人旅を続けていた。
「探し物・・・」
混沌とした各地を身一つで歩き続けたが、一通の手紙が足を止めさせ彼の旅を終わらせたのだった。


(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【宮廷魔法士のやり直し!】~王宮を追放された天才魔法士は山奥の村の変な野菜娘に拾われたので新たな人生を『なんでも屋』で謳歌したい!~
夕姫
ファンタジー
【私。この『なんでも屋』で高級ラディッシュになります(?)】
「今日であなたはクビです。今までフローレンス王宮の宮廷魔法士としてお勤めご苦労様でした。」
アイリーン=アドネスは宮廷魔法士を束ねている筆頭魔法士のシャーロット=マリーゴールド女史にそう言われる。
理由は国の禁書庫の古代文献を持ち出したという。そんな嘘をエレイナとアストンという2人の貴族出身の宮廷魔法士に告げ口される。この2人は平民出身で王立学院を首席で卒業、そしてフローレンス王国の第一王女クリスティーナの親友という存在のアイリーンのことをよく思っていなかった。
もちろん周りの同僚の魔法士たちも平民出身の魔法士などいても邪魔にしかならない、誰もアイリーンを助けてくれない。
自分は何もしてない、しかも突然辞めろと言われ、挙句の果てにはエレイナに平手で殴られる始末。
王国を追放され、すべてを失ったアイリーンは途方に暮れあてもなく歩いていると森の中へ。そこで悔しさから下を向き泣いていると
「どうしたのお姉さん?そんな収穫3日後のラディッシュみたいな顔しちゃって?」
オレンジ色の髪のおさげの少女エイミーと出会う。彼女は自分の仕事にアイリーンを雇ってあげるといい、山奥の農村ピースフルに連れていく。そのエイミーの仕事とは「なんでも屋」だと言うのだが……
アイリーンは新規一転、自分の魔法能力を使い、エイミーや仲間と共にこの山奥の農村ピースフルの「なんでも屋」で働くことになる。
そして今日も大きなあの声が聞こえる。
「いらっしゃいませ!なんでも屋へようこそ!」
と
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる