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第二章・ギルドで最低ランクまで落ちてしまったので、リアルを頑張ります。
*五十二・ギガントグリズリー退治・洞窟へ
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咲希に案内されるまま奥の方へ進むと、ひときわ大きな建物があった。
咲希は扉をノックして、出迎えた初老の男性から依頼の内容を確認する。
そして咲希と花梨はお茶をごちそうになってから、ギガントグリズリーの住み着いた洞窟へと向かって行った。
咲希はけわしい視線を向ける。
「悪いけど、ここまでです。早苗さんがどんな理由でパーティーを組ませたか分かりませんが、これ以上は無理です。と言いたいところですが、力を必要としているんですよね。誰かを助けられるような」
「ちょっと待って、なんでいきなりそんな話になるの?」
「そんなの決まっているじゃないですか。早苗さんは強い理由がないと、危険な依頼に魔力ゼロの人を同行させる訳がないからです。わたしの実力は中途半端ですから、守りきれるとは限りません。それでも先へ進みますか」
まるで何かしらの物語の熱血主人公なみに使命感に燃えている咲希を見て、花梨は思いきり勘違いしているなぁと密かに悟った。
それは、早苗を信頼しているからこそ出来る勘違いということも。
花梨としては断る理由もなく勘弁して欲しい心境だ。
「大丈夫だよ。そのまま進むよ」
咲希は戸惑う。
「……即答すぎて逆に不安になります」
花梨はローブの内ポケットから小さな水晶を五つだけ取り出す。
「大丈夫。わたしそれなりに強いし……コレも早苗さんから渡されたダメージ吸収の水晶ね。五つあるダメージを吸収する水晶の内、三つ壊れたら即撤退ということで。五つとも受け取って」
「アナタは持っているんですか?」
「わたしは持ってないよ。そんなのなくても大丈夫だから」
咲希の顔色が変わる。眉間には血管が浮かんでいるが静かな笑みだ。
「……今なんと?」
「……えっ?」
咲希はしばらく静かな笑みを保っていたが、突如にして大きく崩れた。
「今なんと言ったんですか? 普通は誰でも保険として持っていく物を、持って行かない? 今のアナタの実力は、只の農民以下ということを理解してます?」
花梨は冷や汗をかく。正直、ちょっと怖かった。
「いやいや、冗談だよ。冗談。本当は全部で十個あるから、五個と五個で半分個にしようか……」
「まあ、それなら良しとしましょう」
咲希は洞窟の中へ足を踏み入れて、花梨も続く。
咲希は中へ入るとすぐさま魔法陣を宙に描いて、
「魔法陣にとおすは、火属性。駆け巡りとどまれ」
詠唱する。
「強化系の魔法?」
「です。もしもの時に、少しでも対処しやすくする為です。ギガントグリズリー以外の魔物がいないとは限りませんから」
いざという時は、わたしが守らないと……良く考えてみたら、魔力ゼロで怖くない訳がないです。もしかしたらアホぽい言動はーー
咲希は誤った深読みをしてーーしばらく進んだところで、花梨の右人差し指にはめている指輪が一般的でないことに気付く。
「もしかして今アナタが身に付けているそれ、炎翼の指輪ですか?」
「そうだよ、咲希さん。西尾お兄ちゃんからのプレゼントだよ。これ装備しているだけである程度は防御力も強化出来るからね」
「でしたら、わたしの魔力も送り込みますから。それと咲希さんと、敬語はいりません。わたしもまだ未熟ですから、なんかそう呼ばれるとむず痒いんです」
西尾からプレゼントされて右人差し指にはめらている炎翼の指輪は、反発する水属性以外を火属性に変換・蓄積させてそれを翼として具現化させることができるらしく、使用者次第で色いろな応用が利くかなり優れた魔道具だ。
使い慣れないと魔力を無駄に消費させてしまうところが玉にきずだが、特殊な宝玉が大気中の水属性以外の魔力を吸収し扱うことが可能で。
花梨はその事実を知らずにより高度な使い方をしていて、魔力を失ってから気付いたアホだった。
その事実を知った花梨は、異質となる自身の魔力を蓄積させることができないか試した。
結果は赤い月が浮かぶ異世界の魔力となる水属性以外の火・風・土・月属性に自身の魔力を付加する形でしか蓄積させることができなかった。
大気中の魔力を吸収するから、今の花梨としてもかなり都合が良いアイテムだ。
咲希の気遣いは、本来なら必要ないが素直に受け取ることにする。
火属性を得意とする咲希は魔法陣を描いて、
「魔法陣にとおすは、火属性。属性の欠片達よ、我の前に姿をあらわせ」
詠唱すると両手から現れた赤い輝きは炎翼の指輪に吸い込まれて行く。
花梨の中へ温かいとも冷たいとも形容しづらい感覚が駆け巡り、その身体にさらなる火属性の魔力を移す。
「上手く扱ってくださいよ。その魔道具めちゃくちゃ優れたヤツですから、上手く扱えることが出来るようになったら、もしかしたら月属性があった頃より強くなれるかもしれませんよ」
咲希はそう宣言してさらに奥へ。
途中、花梨は立ち止まる。
「奥深くまで進んだのに、まだけっこう明るいね」
「それはそうですよ。上を向いてください」
無数にひび割れがありそこから陽光と赤い月明かりはマホプラネタリウムように差し込み、ところどころ開いているちょっと大きな隙間からは空と流れる雲が見えている。
それに気付いてない訳ではなかったが、花梨は固い雰囲気が苦手でついそう言ってしまったのだ。
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