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第一章・夢はゲームで叶えよう花梨と芽衣と小百合の冒険譚
*四十六・戦斧の闘いと花梨の全力と萌衣の過去
しおりを挟む戦斧は緑のデカブツへ駆けて斧を振るう。せっかく掴みかけた、“何か”を手放さない為に。今まで感じたことがなかったような、あったような不思議な感情の元。そして何かに蝕まれていく感覚もあった。
緑のデカブツの竜。リヴァイは爪で戦斧の斧を受け止めた。
戦斧は爪へ斧を押し込む。
ーーとりあえず敵意はこっちへ向いたな。
戦斧はさらに敵意を向ける為に、自身の火と風の属性で攻撃しようとするが何故か火も風も操れない。
だが問題はなさそうなだ。
全身から沸き上がる力が尋常ではないからだ。
新調した斧も属性は水で相手は風、相性が良い訳ではないが悪い訳でもない。だが値段が高い為に、強度と攻撃力は以前の斧よりはるかに上だった。
リヴァイは身体を回転させ尻尾を振るうが、戦斧がカウンターで斧を叩き付けた。
リヴァイは戦斧は爪を振るったり尻尾を叩き付けたり風属性のブレスを吐いたり。
戦斧は斧でリヴァイの攻撃を受け止めながら、敵意が完全に自身に移ったのを実感する。
後は逃げるか。
戦斧は攻撃を交えながら花梨達から徐じょに距離をとる。
*
戦斧がリヴァイを引き付けてくれたおかげで、花梨は赤く巨大な火竜のリゼと一対一の状況が出来上がっていた。
ゲーム内のシステムを無効化するシステムも運営が対策済みで、戦局はミナギガバーサクで苦しい。
そんな状況の中、花梨はなんとなく戦斧がかっこ良く見えてしまった。
けど恐らく、戦斧はこのままだと魔力を失いそうなことも予想がついていた。
異世界の魔力の核もなしに無理矢理異世界の魔力を呑み込み、それを使うなんて無茶がすぎる。
確かに、戦斧の助けがなければ既に負けていた可能性もあっただろう。
この流れは下手をしたら昔の戦斧と同じだ。自身の力を過信するあまり、誰かを傷付ける。いや自身からの提案の結果でも誰のせいでもなく成り行きだけどーーこれが最善の方法なのかもしれないけど。
もし戦斧が魔力を失ったら、馬鹿でお人好しすぎる西尾お兄ちゃんは自身の魔力を分け与える可能性がある。自身の寿命を削って。
小春は最悪自身の寿命を削るつもりだが。
魔力を失う意味は自身の手足を失うことに近い。落ちこぼれの月属性のみでも、世間の風当たりは厳し過ぎるのに、魔力ゼロだとその上を行くことは間違いないだろう。ましてや戦斧は戦いぐらいしか知らないのだから。
何不自由なく暮らせるお金はあるのかもしれないが。
異世界の魔力は異質すぎるがそれでもーー異世界の魔力もこの世界の魔力もないまま生きるのなら、この世界は残酷すぎる。
花梨はリゼとソフィアがただ漏れ状態で撒き散らす火属性と水属性をーー循環を加速させ、ロリ真夢剛竜剣にも巡らせる。とその刀身が破壊され火と水と月と異世界の合成された魔力がむき出しに、背中の翼は自身より遥かに巨大化させた。
花梨は地を蹴り宙を飛び、リゼへむき出しの刀身を巨大化させ振り下ろす。
リゼは爪で受け止め、大きく息を吸い込み灼熱のブレスを吐いた。
既に花梨の竜の水晶のHPはゼロだ。
身を焦がすブレスとリゼの爪が花梨を襲う。
花梨はそんなブレス関係なしに爪を魔力の剣で強引に押し込み弾いて、リゼを追撃する。
西尾お兄ちゃんは、絶対に皆とわたしで守るんだから。
今度は今までよりさらに力が込めた爪が振り落とされ、宙から固い地面へ強く叩き付けられた。
すぐに立ち上がりさらに周囲の魔力を取り込み循環を強化させ、魔力の剣をさらに巨大化させる。破壊力が足りない為に、圧縮可能な量をはるかに越えた魔力の剣を。
限界を越えた量の魔力を扱うのは、花梨の命を削るような行為だ。
花梨は命をーー戦斧は魔力の核そのものをーー自身の守りたいものを守る為にそれぞれ削る。
戦斧は、呑み込んだアレが自身の魔力の核を削っていることに気付き始めた。
まさかアレは、俺の魔力の核そのものを削っているのか。まいったなこりゃ勝負は勝てるが、俺は魔力ゼロになっちまうな。コレじゃ花梨以下だ。いや元から花梨以下か……
ーー芽衣の竜の水晶も既にHPはゼロだ。
芽衣も戦斧や花梨同様に守りたいものがある。
正直、夕維という妹の存在は大きい。心も身体も男だがそんなのは関係ない。
萌衣の師は、萌衣本人の実の妹だった。
萌衣は両親から魔族の血を色濃く、実の妹は天界人の血を色濃く受け継いだ。
妹は天界人独自の聖属性と月と火と土属性を扱え優秀だったが、萌衣は落ちこぼれといわれる月属性のみ。
多少情けなくはあったけど萌衣は気にしなかった。周りは妹以下だと月属性のみだと馬鹿にしていたが、妹本人は萌衣をいつも励まして気にかけていたからだ。
萌衣はそんな妹が大好きだ。
自身のせいで寿命を削らせてしまった痛い過去がある。魔力もだいぶ弱まってしまった。
だからこそかな?
実の妹にまともに顔向け出来ない状況だからこそ、夕維という妹の存在は大きいのかもしれない。
夕維はボクが守る! いや夕維だけじゃない、花梨や皆だってボクの大切な仲間だ。こんなところでボクは、地に這いつくばって場合じゃあないんだよ!
夕維は、萌衣の実の妹と似ていた。人に感じ方はよっては違うかもしれないが、雰囲気が似ていた。もちろん夕維ーードド本人からしてみたら無茶苦茶な理屈だ。
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