42 / 99
第一章・夢はゲームで叶えよう花梨と芽衣と小百合の冒険譚
*四十二・萌衣と夕維は再びログインする
しおりを挟む「わたし初めて聞きましたよ、そこまで可能だったなんて。レレ……この際だからはっきり言いますけど、アナタはアホすぎます」
「瑠璃には言われたくないのです」
「そりゃそうだ」
危機的な状況の中で、戦斧はちょっとだけ笑みをもらした。
*
トイレから戻ったドドはマホスマホを手に取っていた。
「もしもし、レレどうしたの?」
『今わたし、ファイナルドラゴンクエスト中なのですが、ピンチなのです。助けに来て欲しいのですドド』
「えっ? ヤダ」
『どうしてよ! ドド!』
「今の俺は怪獣らに変な服を着されてて、とてもじゃないが知り合いの前に出られる姿じゃないんだよ」
『お願いドド聞いて。本当にわたし達ピンチなの意味の分からないことを言わないで助けて』
「そもそもログアウト出来る場所まで逃げられないの?」
『お馬鹿! それが無理だから助けを求めているのです! わたしの能力でこの場所の近くまでログインさせてあげるからなのです』
「良く分からないけど、分かったよ。んじゃログインーー」
『待ってドド一人だと駄目! 誰でも何人でも良いから強力な助っ人も一緒にお願い!』
萌衣は夕維を見かけた。
「ん? 何やっているの夕維?」
マホスマホからの声を聞き取れる距離まで、萌衣が近付いた。
『助けてなのです!』
萌衣はまったく分かってなかったが助けを求められているなら、それ以上の理由はいらない。
夕維のマホスマホを取り上げた。
「もしもし、夕維の保護者に代わりました。とりあえずそっちに向かいます」
『ちょっと待ってなのです! アナタ誰なのです! いや助けるなら大歓迎なのですけど、夕維って誰なのです?』
レレは話の流れでドド=夕維という意味の分からない構図が浮かび上がって、頭の中がちんぷんかんぷんになった。
ログアウト出来ない場所ということは、ログインしても来るのは不可能な場所だがレレ譲りのミミの能力はチートだった。瑠璃のマホスマホから干渉して、近くまでなら転移させられるのだから。
萌衣は驚いたが、花梨の影響で多少のことには動じない。
とりあえず萌衣と夕維はログイン。
ドドは妖精獣の気配を察知して、レレを探し当てた。
ドドの白いゴロスリ姿に、レレは驚くしかなかった。
「ドドアナタのその姿は、なんなのです?」
ドドーー夕維は喋れなかった。
「……」
「可愛いでしょう、ボクの妹だからね」
萌衣はめちゃ自慢げで夕維ーードドは恥ずかしすぎて、レレと戦斧はちんぷんかんぷんだ。
萌衣は笑っていたがそれはそれ。
ログアウト後。彰と小夜と早苗から、花梨と西尾と戦斧との最悪な関連性と聞き出していた。
戦斧の顔をゆっくりと確実に思いだして、それが確定した時、胸の中には静かな怒りがわきだしていた。
過去の自分自身にも重ねているところがあり、その怒りは許されるものではない。
さっきまで能天気だった萌衣が闇に染まる。
「んじゃボク、帰る。帰るよ夕維」
「ちょっと待ってなのです。なんで帰るのです? アナタは誰なのです? それに夕維って誰なのです?」
「ボクは萌衣。帰るのは、そこの男が嫌いだからだよ。そこの男がいたから花梨が泣いた。一人の男の寿命が削られた。あと夕維は、ボクの大切な妹だ」
「だから夕維って誰なのです?」
「花梨が泣いたは分かるが、寿命のことはーーさっぱりちんぷんかんだぞ」
戦斧は悪寒を感じて状況を確認すると、巨大な火竜が岩影へ視線を移していた。
火竜は様子を見ている。
ミミは焦る。
「見付かったのです。騒ぎすぎなのです!」
萌衣はことの重大さに気付いてない。
「その男以外はボクが連れて、ログアウト範囲の安全圏まで行くから問題ないよ。ゲームだけど後味悪いから」
萌衣の案を瑠璃は受け入れない。
「戦斧さんは仲間です。仲間を見捨てるなんてわたしには出来ません」
「わたしもなのです。というか、もうゲームじゃ済まされない段階まできているのです」
巨大な火竜はまったく動き見せない相手にイライラして、火炎のブレスを吐いた。
この場にいる萌衣以外の者がまともに直撃すれば、命はない威力だ。
萌衣とドド以外は必死に飛び退いた。
萌衣は自身と夕維に魔力の鎧を纏わせると、火炎のブレスが直撃して炎と土ぼこりが宙を舞う。
戦斧は叫ぶ。
「オイっ、ゲームじゃないと言っただろう!」
炎と土ぼこりが晴れると無傷の萌衣と夕維がいた。
「いや、ボクはゲームはゲームだと思うよ」
巨大な火竜は面食らい。
その一瞬の隙を萌衣は見逃さず火竜のどてっ腹へ回し蹴りを放った。
火竜は100メートルぐらい吹き飛ばされダメージそのものなかったが、驚き困惑。
ミミは思わず確認する。
「萌衣さんはランクいくつなのです!」
「ん? ボクはランク5だけど」
戦斧は感心する。
「ということはほとんど素の実力であの猛攻を防いだというのか、ちょっと驚きだな。俺はともかく他の二人は守ってやってくれ」
萌衣は考える。
もしかしたら戦斧はそこまで悪いヤツじゃない? もしかしたら変わった? もしくはゲームだからか?
「まあアレぐらいならね。けど思ったより、慕われてそうな雰囲気だね。まあゲームだし軽い気持ちかもしれないけど、ちょっと意地を見せてもいいんじゃないかな? ボクはそう思うよ」
萌衣のこの台詞は、あくまでゲームを前提としたものだ。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【完結】百年に一人の落ちこぼれなのに学院一の秀才をうっかり消去しちゃいました
平田加津実
ファンタジー
国立魔術学院の選抜試験ですばらしい成績をおさめ、百年に一人の逸材だと賞賛されていたティルアは、落第を繰り返す永遠の1年生。今では百年に一人の落ちこぼれと呼ばれていた。
ティルアは消去呪文の練習中に起きた誤作動に、学院一の秀才であるユーリウスを巻き込んでしまい、彼自身を消去してしまう。ティルア以外の人の目には見えず、すぐそばにいるのに触れることもできない彼を、元の世界に戻せるのはティルアの出現呪文だけなのに、彼女は相変わらずポンコツで……。

【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる