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第一章・夢はゲームで叶えよう花梨と芽衣と小百合の冒険譚

*四十二・萌衣と夕維は再びログインする

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「わたし初めて聞きましたよ、そこまで可能だったなんて。レレ……このさいだからはっきり言いますけど、アナタはアホすぎます」

「瑠璃には言われたくないのです」

「そりゃそうだ」

 危機的な状況の中で、戦斧はちょっとだけ笑みをもらした。

 *

 トイレから戻ったドドはマホスマホを手に取っていた。

「もしもし、レレどうしたの?」

『今わたし、ファイナルドラゴンクエスト中なのですが、ピンチなのです。助けに来て欲しいのですドド』

「えっ? ヤダ」

『どうしてよ! ドド!』

「今の俺は怪獣らに変な服を着されてて、とてもじゃないが知り合いの前に出られる姿じゃないんだよ」

『お願いドド聞いて。本当にわたし達ピンチなの意味の分からないことを言わないで助けて』

「そもそもログアウト出来る場所まで逃げられないの?」

『お馬鹿! それが無理だから助けを求めているのです! わたしの能力でこの場所の近くまでログインさせてあげるからなのです』

「良く分からないけど、分かったよ。んじゃログインーー」

『待ってドド一人だと駄目! 誰でも何人でも良いから強力な助っ人も一緒にお願い!』

 萌衣は夕維を見かけた。

「ん? 何やっているの夕維?」

 マホスマホからの声を聞き取れる距離まで、萌衣が近付いた。

『助けてなのです!』

 萌衣はまったく分かってなかったが助けを求められているなら、それ以上の理由はいらない。
 夕維のマホスマホを取り上げた。

「もしもし、夕維の保護者に代わりました。とりあえずそっちに向かいます」

『ちょっと待ってなのです! アナタ誰なのです! いや助けるなら大歓迎なのですけど、夕維って誰なのです?』

 レレは話の流れでドド=夕維という意味の分からない構図が浮かび上がって、頭の中がちんぷんかんぷんになった。      

 ログアウト出来ない場所ということは、ログインしても来るのは不可能な場所だがレレゆずりのミミの能力はチートだった。瑠璃のマホスマホから干渉かんしょうして、近くまでなら転移させられるのだから。

 萌衣は驚いたが、花梨の影響で多少のことには動じない。
 とりあえず萌衣と夕維はログイン。
 ドドは妖精獣の気配を察知して、レレを探し当てた。
 ドドの白いゴロスリ姿に、レレは驚くしかなかった。
 
「ドドアナタのその姿は、なんなのです?」

 ドドーー夕維は喋れなかった。

「……」

「可愛いでしょう、ボクの妹だからね」

 萌衣はめちゃ自慢げで夕維ーードドは恥ずかしすぎて、レレと戦斧はちんぷんかんぷんだ。

 萌衣は笑っていたがそれはそれ。
 ログアウト後。彰と小夜と早苗から、花梨と西尾と戦斧との最悪な関連性と聞き出していた。
 戦斧の顔をゆっくりと確実に思いだして、それが確定した時、胸の中には静かな怒りがわきだしていた。
 過去の自分自身にも重ねているところがあり、その怒りは許されるものではない。

 さっきまで能天気だった萌衣が闇に染まる。
 
「んじゃボク、帰る。帰るよ夕維」

「ちょっと待ってなのです。なんで帰るのです? アナタは誰なのです? それに夕維って誰なのです?」

「ボクは萌衣。帰るのは、そこの男が嫌いだからだよ。そこの男がいたから花梨が泣いた。一人の男の寿命が削られた。あと夕維は、ボクの大切な妹だ」

「だから夕維って誰なのです?」

「花梨が泣いたは分かるが、寿命のことはーーさっぱりちんぷんかんだぞ」

 戦斧は悪寒を感じて状況を確認すると、巨大な火竜が岩影へ視線を移していた。
 火竜は様子を見ている。
 ミミは焦る。

「見付かったのです。騒ぎすぎなのです!」

 萌衣はことの重大さに気付いてない。

「その男以外はボクが連れて、ログアウト範囲の安全圏まで行くから問題ないよ。ゲームだけど後味悪いから」

 萌衣の案を瑠璃は受け入れない。
 
「戦斧さんは仲間です。仲間を見捨てるなんてわたしには出来ません」

「わたしもなのです。というか、もうゲームじゃ済まされない段階まできているのです」

 巨大な火竜はまったく動き見せない相手にイライラして、火炎のブレスを吐いた。
 この場にいる萌衣以外の者がまともに直撃すれば、命はない威力だ。

 萌衣とドド以外は必死に飛び退いた。 
 萌衣は自身と夕維に魔力の鎧を纏わせると、火炎のブレスが直撃して炎と土ぼこりが宙を舞う。

 戦斧は叫ぶ。

「オイっ、ゲームじゃないと言っただろう!」

 炎と土ぼこりが晴れると無傷の萌衣と夕維がいた。 

「いや、ボクはゲームはゲームだと思うよ」

 巨大な火竜は面食らい。
 その一瞬のすきを萌衣は見逃さず火竜のどてっ腹へ回し蹴りを放った。

 火竜は100メートルぐらい吹き飛ばされダメージそのものなかったが、驚き困惑。

 ミミは思わず確認する。
 
「萌衣さんはランクいくつなのです!」

「ん? ボクはランク5だけど」

 戦斧は感心する。

「ということはほとんど素の実力であの猛攻をふせいだというのか、ちょっと驚きだな。俺はともかく他の二人は守ってやってくれ」

 萌衣は考える。
 もしかしたら戦斧はそこまで悪いヤツじゃない? もしかしたら変わった? もしくはゲームだからか?

「まあアレぐらいならね。けど思ったより、したわれてそうな雰囲気だね。まあゲームだし軽い気持ちかもしれないけど、ちょっと意地を見せてもいいんじゃないかな? ボクはそう思うよ」

 萌衣のこの台詞は、あくまでゲームを前提としたものだ。
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