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第一章・夢はゲームで叶えよう花梨と芽衣と小百合の冒険譚
*三十八・魔法感謝祭の射撃ゲーム
しおりを挟む二人までなら同時に遊べる屋台で、用意されたコルク玉は三個ずつだ。
順番がくると花梨はライフルにコルク玉と異質な魔力と月属性を込め、西尾はコルク玉と闘気と異質な魔力を込めた。
花梨は蒼いリスのヌイグルミへ、西尾は火の鳥のヌイグルミへそれぞれ狙いを定め引き金をゆっくり引いて、勢い良く発射される二つの弾丸。
花梨が放ったコルク玉はアホみたいに派手な音を響かせて、蒼いリスをこっぱ微塵にした。
西尾も火の鳥のヌイグルミをこっぱ微塵にした。
周りに被害を出さないレベルで。
花梨は思わず笑みがこぼれた。
「西尾お兄ちゃん、意外とコレすっきりするね」
「だな花梨」
花梨が次にこっぱ微塵にしたのは黄色のリスのヌイグルミ、その次は赤のリスのヌイグルミだった。
西尾が次にこっぱ微塵にしたのは蒼い竜のヌイグルミ、その次は虎のヌイグルミだった。
花梨はだいぶすっきりとした笑顔になった。
「西尾お兄ちゃんもう一回並ぼうか」
西尾はすっきりとした笑顔で同意する。
「並ぶか」
後ろに並んでいた早苗はこめかみに血管をピクピクと浮き上がらせ魔法で氷のハリセンを形成、花梨と西尾の頭を思いきり叩いた。
「ヤメ~ィ! アナタ達は遊び方を間違えてる!」
精巧に出来ているから威力は紙のハリセンとほぼ同じだが、早苗の振りは鋭く西尾は涙目で頭を押さえた。
「イテェ~! 何が間違ってるんだ。早苗?」
花梨も涙目で頭を押さえた。
「痛っ! 早苗さん、わたしも何が間違っているかさっぱりだよ!」
「とりあえずアナタ達は二度目は禁止! わたしアレ狙ってたのよ。普通にゲットしてたら、譲って貰おうって考えてたのに。これはね景品をこっぱ微塵にしてスカッとするゲームじゃないのよ! わたしがお手本を見せるから良く見てなさいっ!」
早苗はライフルとコルク玉に風属性の魔力を込め亀のヌイグルミへ狙いを定めた。
狙いは完璧だったが倒れなかった。
二発目も三発目も。
そして。
小春は途中で気が変わって景品を普通にゲット。
萌衣は亀のヌイグルミを狙って失敗。
ほかの人達は普通に景品をゲットしたり。
早苗は再び亀のヌイグルミに狙いを定めた。
四発目も失敗。
五発目も失敗。
早苗はゲット出来ない景品を混ぜていると悟る。
わたし相手にイカサマをするなんていい度胸じゃない……
早苗は風属性の魔力でライフルを補強して、超圧縮した魔力を無理矢理詰め込みゆっくりと狙いを定めて引き金を引き。
勢い良く発射された弾丸は亀のヌイグルミをこっぱ微塵にした。
「うん……すっきり!」
花梨はジト目だ。
「早苗さん!」
西尾もジト目だ。
「早苗……これがお手本なのよっ? しかも超すっきりした顔で?」
早苗は言い訳をする。
「それは、ね。相手がイカサマをしたから。イカサマ相手には、ああしないとイライラするでしょう? すっきりしないでしょう?」
西尾は納得出来ない。
「だったら俺達のも認められていいだろう……」
花梨は分からない。
「イカサマ? ……タコサマ?」
早苗は檄を飛ばす。
「アナタ達は最初からのイカサマぽいヤツじゃない。それは認められないわね。だけどこのゲームは許可するわ。それどころかこの屋台で遊ぶんなら、逆にお小遣いをあげるから」
花梨は即答する。
「やったー! わたし遊ぶ遊ぶよっ!」
西尾も同意する。
「花梨また一瞬にすっきり出来るな」
「うん!」
小春は仲間に入りたそうな瞳で花梨達を見ている。
「わたしも、すっきりしていいかな?」
早苗は即答する。
「もちろん。あの屋台に限り射撃代もわたしが出すから!」
小春は両手を挙げて喜んだ。
「やったー!」
一時間後。
屋台のおっちゃんは膝を付いて、固い地面を拳で思い切り殴り付けた。
「ちっちくしょう!」
絶対に倒れないはずの景品。亀のヌイグルミとか一部シリーズ物には、通常なら絶対にコンプ出来ないようにかなりのお金を使っていたのだ。
それらが跡形もなくこっぱ微塵。
しかも通常なら絶対に倒れない景品に気付いた客が、ノリノリで早苗や花梨達に順番を譲ってローテーションが早くなり、屋台に残っている景品はすべてこっぱ微塵となった。
悪い事は出来ないということだ。
イカサマで稼げたから、利益はプラスマイナス合わせてゼロだったのが不幸中の幸いといったところか。
次に花梨と西尾が向かった先はパンチングマホマシン屋だ。
的を殴り付けるとその威力が数値化されそれを競うシンプルな内容で、特殊な材料を使った床や的でゲーム参加者は魔力そのもの無効化される。
闘気術を使える人が有利だが魔法が普及している世界で使う人は少ない。基本的には、たまには魔法や付与効果なしでゲームを楽しもうというものだ。
ーーだが。
萌衣は元から血自体に魔力が付与されているようなものだから、魔力無効化を無効化することが可能で。
西尾と花梨と小春の異世界の魔力も無効化されない。
花梨なら異世界の魔力を利用したら、月属性の付与まで可能だ。
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