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第一章・夢はゲームで叶えよう花梨と芽衣と小百合の冒険譚
*三十六・戦斧は火竜退治へ
しおりを挟む瑠璃はマホスマホを手に取る。
「戦斧さん受け取って下さい。半分の2500ギルです」
「いや俺が出す」
瑠璃が驚く。
「えっ? いいんですか? 卑怯者だった癖して……」
「ゲーム内の金は興味ないから使わなかった。今、確認したら50万ギルはあった」
「50万……めちゃめちゃお金持ちじゃないですか。普通装備やゲーム内の趣味的要素に消えたりしますが」
「所詮ゲーム内の金だからな。リアルには使えないし、装備なら手持ちの斧で充分だ」
「戦斧さんならそうかもですが……」
「まあ遠慮するな」
瑠璃は軽く頭を下げた。
「戦斧さんありがとうございます」
ーー火竜の付近の町へ。
建ち並ぶマホコンクリートや石造りの家やマホアスファルトの地面。行き交う人びとは多かった。
瑠璃はつい人びとを視線で追う。
「なんかマントを装備している人が多いですね」
戦斧はリアルの経験も踏まえて檄を飛ばした。
「便利だからじゃねぇか? 俺のように斧を背負っているようなヤツにはマントは邪魔だが、下の装備はかなり自由がきくし、直接身を覆うから火耐性の効果が指輪より高そうだからな」
瑠璃は苦笑いから、ハッハッっと思いきり作り笑いだ。
「……良く知ってましたね。実はそうですよ。それに外見がアバター装備にまで影響しますから、おしゃれ装備としても楽しめますし」
「さっきまでは知らなかったような感じだったが?」
「そういうふりをしただけです」
「まあ、そういうことにしてやるよ」
「そうじゃなくてですね。本当に……」
ーー瑠璃と戦斧は談笑しながら、ちょっと大きめの屋敷へ。
マホインターホンを押すと初老の男性が現れてギルドからの依頼状を確認すると、机と椅子しかないシンプルな室内へ案内した。
「最近何故か竜が異常繁殖して困っていたところだ。わたしにも原因はさっぱりで、可能ならその原因も突き止めてくれたら嬉しいんですが? もし突き止めてくれたなら報酬も上乗せします」
戦斧はあっさりOKした。
「報酬を上乗せするのなら原因も探すようにしてやるよ。んで、その火竜は主にどこで異常繁殖しているんだ?」
「火竜の山と呼ばれるところです。 この町を東門から出て、山道なりに行けば迷わないはすです」
「ああ任せとけ」
「そうです。わたし達に任せて下さい」
「ありがとうございます」
ーー話を終えた戦斧はさっさと火竜の山へ向かおうと外へ。
「まずは装備を整えましょう」
「俺は、使い慣れた武器が一番だと思うんだが?」
瑠璃はドヤ顔の笑みを浮かべた。
「ふっふーん。アナタは、このファイルドラゴンクエストの事がまだ良く分かってませんね」
「どういうことだ?」
「まあとりあえず、あそこの武器屋に行ってみましょう」
剣・斧・槍・弓矢・杖・短剣・斧と大きさも種類も様ざまで多い武器屋へ。
ゴツイ男性の店主は営業スマイルだ。
「いらしゃいませ!」
戦斧は背負っていた斧を手に取り店主へ見せた。
「これから火竜退治へ行くんだが、なるべくこれと違い感じで、火竜退治の武器のお勧めはあるか? 予算はとりあえず30万ギルだ。といってもなるべく値段と性能の釣り合いから、お勧め的なヤツがいいがな」
「かしこまりした。それでしたらすみません、その斧をちょっとだけお借りしていいでしょうか?」
戦斧は斧を「ほらよ」と店主へ手渡した。
「すみません。しばらくお時間をください」
「ああ問題ない」
「ありがとうございます」
店主は営業スマイルで奥の方へ。
ーー数分後。
営業スマイルで店主が戻ってきた。
「すみませんお待たせしました。だいだい15万ギルから30万ギルの火竜退治の斧を用意しました。借りた斧はありがとうございました。お返ししますね」
戦斧は手渡された斧を月の鈴へ。
店主へ案内されてから、戦斧が選んだ斧は30万とお勧めされた中で一番高かったが、自身の使ってた斧とほぼ同じ物を手に取った。
「試し斬りとかする場所はあるか?」
「もちろんありますよ」
店主へ案内されて試し斬りをしたがその感触には驚きしかなかった。
瑠璃はドヤ顔の笑みだ。
「どうですか? 戦斧さん?」
「凄いの一言だ。まさかとは思っていたが、普通ここまでコピー出来るもんじゃないだろう」
「それはですねファイナルドラゴンクエストの新技術なんですよ。わたしも細かい事は分かりませんが……重さだけでなくその魔力の癖というヤツでしょうか? それまでコピーすることが出来るんです。加えて戦斧が元もと使っていた斧はシンプルですから、なおさらコピーしやすかったかもしれません……といってもゲーム内専用になりますけどね」
「なるほどな。世の中は色いろと進化しているということか……」
*
ーーゴツゴツとした岩壁と固く熱気を帯びた地面が特徴的な火竜の山へ。
瑠璃は予想より明らかに多く、巨大な体長3メートル近くはある火竜に冷や汗をかいた。
「……このイベントってこんなに火竜が多かったんですね」
「んなんだ? お前も初めてか?」
「まあ初めてですね」
「んじゃ初心者同士で仲良くやろうや」
「そうですね」
戦斧はゲーム自体を馬鹿にしていたところが多かったが、こうして楽しむのも悪くない気がした。
ーー只それと花梨への復讐心はまったく別だったが。
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