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第一章・夢はゲームで叶えよう花梨と芽衣と小百合の冒険譚
*三十三・魔法感謝祭へ
しおりを挟むーー魔法感謝祭前日。
小春はアルバイトをしていた。お祭の日に備えてお小遣いを稼ぎたいからだ。
小春は、花梨も紹介してアルバイトを始めた。
花梨と小春は色んな場所の飾り付けや屋台の準備を手伝ったり、必要に応じてテントの準備をしていたりした。
小春は始め魔力ゼロで馬鹿にされていたが、二人で掛かりで運んだ巨大テントの材料を一人で運んだり、巨大杭を一人で打ち込んだりすると見直された。それでも馬鹿にする人がゼロになった訳ではない。小春をゴリラと言った人は大変な目にあったりもした。
だけど小春も花梨も楽しかった。
小春はウキウキして。
花梨もウキウキして戦斧に対する鬱憤がかなり薄れてきた。お祭りの準備を手伝うだけで不思議と、お兄ちゃんとお祭りに対する期待感が更に高まってなんともいえない充実感もあった。
やがて小春に気を使った人達も現れ軽い材料を運ばさせたり、飲み物を用意させたりして比較的楽な仕事も手伝わされた。
休憩中。
「見てろ。Bランクになった俺の実力見せてやるぜ」
そう胸をはっているのは小春や花梨以外にも、重い材料を一人で運んだ青年。
黒いシャツを着ている青年は皆が座っているシートから立ち上がり、高さは3メートルぐらいのそこそこ大きな木へ歩み寄って人差し指を向けて突風を放つ。幹に七割ぐらいの切れ目が走って木がゆっくりと倒れた。
「「ショボッ!」」
花梨と小春はつい本音がもれてしまった。
青年はムッとする。
「AランクやSランクと比べたらそうかもしれないけど、いくら俺でも魔力ゼロのヤツに言われたくねぇぞ!」
小春はピョンと立ち上がり倒れた木の真正面へ動き、突き出した人差し指から異質な魔力を付与した闘気を薄い刃として放出。
倒れていた木は縦から一直線に両断された。
小春はドヤ顔だ。
「魔力がゼロがなんだって?」
「凄い! 破壊力だけなら戦斧さん以上かも?」
花梨が? となる。
「戦斧さんって斧を背負って、一時期月属性を募集していた?」
「ああそうだよ」
花梨は微妙な気持ちになる。
「あまりいい噂は聞かないけど?」
「他人の評価なんて俺にはどうでもいいんだよ! 俺にとって戦斧さんは、ヒーローなんだから!」
花梨は更に微妙な気持ちになった。
確かに昔は優しかったり、それなりいいなと思ったりした頃もあったが過去の話だ。
心の中で苦笑いする花梨だった。
*
花梨にとって待ちに待った、西尾お兄ちゃんとのお祭り日。魔法感謝祭の日がやってきた。
小春もいた。
小春もお祭り事は大好きだしその準備をアルバイトという形で手伝ってテンションも上がっていたし、花梨ちゃんの恋の応援もしたいし西尾先輩はおちょくりたいからだ。
アルバイト代も良く働いたということで、ちょっとしたボーナスも加算され準備も万端。
お祭りの雰囲気に合わせて花梨と小春は、着物姿で西尾を待っていた。
「花梨お姉さま、お久しぶりです」
挨拶をして姿を現したのは着物を着た小百合だ。
続いて萌衣が姿を現した。
「花梨久しぶり」
「萌衣ちゃんも着物にしたんだ」
「うん。ボクに着物が似合うか不安なんだけど」
「とっても可愛いよ萌衣ちゃん!」
小百合は、わたしの言う通りだったでしょうと言わないばかりの表情だ。
萌衣は自身でも可愛いとは思っていたが不安と恥ずかしさがあった。
「ありがとうボク嬉しいよ。ほら、夕維ちゃんも挨拶して」
萌衣と小百合の後ろから夕維が姿を現す。
「お久しぶりです」
夕維の姿は白いゴロスリ服だ。本当は振袖や着物を着せたかったが、異世界製の奴隷の指輪の効果で無理だった。
小百合はつい風属性の魔法で夕維のスカートをめくった。
白。
花梨は戦斧のことでモヤモヤしていたがそれはそれ。
いやそのモヤモヤを打ち払う為に文句を言う夕維を無視して、そのぱんつを堪能した。
夕維は抵抗したが先に乙女のスカートをめくったのは夕維だから。
乙女の皆からーーそれがどんなにいけないことか教える為にやっているんだよ。と、夕維の意見は通るはずがなかった。
夕維は檄を飛ばす。
「……自分らの欲望の為にやってないだろうな?」
花梨は即答。
「ち、違うよ夕維ちゃん」
萌衣もすぐに続いた。
「ボクは、先に手を出したのは夕維だから皆からの罰は受け入れるべきだと思う」
小百合も続いた。
「そうですよ。わたし達は夕維ちゃんの為を思ってやっているんです」
萌衣はちょっとだけ同情する。
悪いのは夕維だけど、いつまでもこのままだとちょっと可哀想かな? もう充分に反省もしただろうし。
「……ボクはそろそろ夕維を許してあげても良いと思うけど、どうかな? さすがにもう女の子のスカートを悪戯でめくることはないと思うんだけど」
花梨は賛成する。
「それじゃ、お祭りが終わったら夕維ちゃんのその指輪外してあげる」
小百合も反対しなかった。
「わたしは花梨お姉さまがそう言うなら、問題ありません、わ」
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