魔力ゼロの異世界転移者からちょっとだけ譲り受けた魔力は、意外と最強でした

淑女

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第一章・夢はゲームで叶えよう花梨と芽衣と小百合の冒険譚

*三十二・一度ログアウトへ

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「……お前もしかして頭悪いのか?」

「失礼ですね。頭は良い方ですよ」

 瑠璃の根拠のない自信に、戦斧はちょっとだけ戦慄せんりつを覚える。

「……とりあえずそれなら背後はとらねぇよ」

 戦斧は地を蹴り瑠璃を袈裟懸けさがけ。
 瑠璃はバックステップでかわし魔法陣を描いて、
「魔法陣にとおすは、火属性。炎よ燃え」
 詠唱。
 だが戦斧の斧による追撃。
 瑠璃は詠唱を中断してさらにバックステップで避ける。

「今度は背後をとらないと言いつつ詠唱中を狙うんですか、ある意味騙し打ちじゃあないですか! 卑怯者!」

 戦斧は意味が分からず、なんだかちょっと疲れてしまった。

「……次で決める。いくぞ!」

 戦斧は腰を落として斧を構える。 
 瑠璃も腰を落としてギガ百合スラッシュの構え。

 斧と百合真夢柔竜剣が交差する。が、やすやすと斧は両断される。
 瞬間、戦斧は斧を手放して瑠璃の真横へ回し蹴りを放った。
 クリティカルヒット!
 瑠璃の竜の水晶残り0HP。

 戦斧は勝負ありと思った。

「卑怯者! 真っ向勝負を途中で投げ出して横から攻撃ですか?」

 戦斧は唖然あぜんとする。

「意味が分からねぇ……」

「決めました。わたしのパーティーに入れてあげます」

「なんでそんな話になるんだ!」

「アナタは卑怯者ですがそこそこ強いかもしれません。それなりの努力はしてきたんでしょう。もしかしたらまだ、間に合うかもしれません。わたしが卑怯なアナタを鍛え直してさしあげます!」

「意味がさっぱりすぎるんだが? 何故に鍛え直す必要があるんだ? 俺の方が強かっただろう」

「わたしは試合には負けましたが勝負には勝ちました。実力はわたしの方が上です」

 戦斧は超ちんかんぷんだ。

「意味が分からねぇ。俺はお前とは組まねぇぞ! とりあえず俺は勝ったから次の準備をするぞ」 

「……わたしは待ってますよ」 

 その後ーー戦斧は月の指輪のスキルを自身のものにした。
 意気揚々いきようようと出口への扉を開けると瑠璃が仁王立におうだちしていた。

「さぁ、次の街を目指しましょう」

「何故に次の街を目指す必要がある?」

「わたしがそこに用があるからです」

「俺は用事があるからログアウトするぞ」

 戦斧はマホスマホを操作してログアウトして、ログインした場所の自宅の自室へ戻った。
 
「もしかしてここはアナタの自宅ですか?」

「ああそうだが?」

 戦斧は、ん? となった。
 瑠璃がいたのだから。 

「思ったより、キレイにしていますね」

「って何故、お前がここに?」 

「わたしにはレレというパートナーがいるからです。そのちょっとした特殊能力のおかげです。レレもちょっとまだ卑怯なところが抜けきれてない所があるので、丁度良いです。三日……アナタとレレの卑怯な性根を、三日で直してさしあげます!」

 戦斧にとって瑠璃は邪魔だった。
 ゲーム世界のスキルを現実世界でも発動させる魔石を試すには……

 *

 ーールイーダのギルドに花梨達はいた。
 成り行きで彰と小夜もいる。
 受付嬢は丁寧に頭を下げた。

「萌衣さんクエストクリアおめでとうございます。萌衣さんのランク5になりました。報酬の5000ギルになります」 

 萌衣は素直に受け取った。

「ジャイアントボアー退治から比べたらかなりのがくだね」

 小百合が説明する。

「それは普通ならランク65くらいのクエストだからですよ」

「でもランクたった5しか上がらなかったよ」

 小百合の更に説明する。

「そりゃそうですよ。普通ランクは、1つずつしか上がりませんから。しかも一度に上がる上限は5ですから」

「そうなんだ」

「これから萌衣さんはどうします? わたしは一度ログアウトしようと思うのですが? 流石にログインしてばっかりだと……」

たくわえもあるし、ボクはもうちょっとログインしてようと思う。シルフィとの約束もあるしね。花梨はどうする?」

「わたしも一度ログアウトしようかな。小春ちゃんは?」

「わたしもログアウトしようかな。久しぶりに西尾先輩と早苗先輩に会えたのに話もゆっくり出来なかったし、訊きたいこともあるし……せっかく友達になったんだし皆のマホデン教えて、わたしのも教えるから。後お友達登録も」

 小春から言われて小百合は気付いた。
「そう言えばお友達登録していませんでしたね」
 花梨も気付いた。
「そう言えば、してなかったね。んじゃ皆でしようか」

 彰もこういう雰囲気は悪くないと感じていた。
 それに小夜がお友達登録やマホデンを交換するなら、自身も仲間に加わった方が後あといいような気がした。

「俺も仲間に入れてくれ」

「ボクはOKだし、皆も反対する理由はないと思うよ……あと夕維の面倒はボクが見ることに問題ない? シルフィとの約束を果たすのに、その仲間だった夕維がいた方が何かといいと思うし」

 花梨は即答する。
「わたしはそれで問題ないと思うよ」
 小百合も続いた。
「わたしもそれで大丈夫だと思います」

 小夜もこういう雰囲気が好きだった。

「わたしもマホデン教えるから皆のマホデン教えて、お友達登録も」
 
 ーー萌衣と夕維だけ一日遅れてログアウトした。
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