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第一章・夢はゲームで叶えよう花梨と芽衣と小百合の冒険譚
*三十・夕維の苦悩
しおりを挟む戦斧はリアルとゲームと迷ったが、後者を選択した。
決めた俺は、花梨の得意なゲーム世界で花梨を叩きつぶす! 泣いて謝るまで許さねぇ! それが出来ねぇなら、花梨の大切な指輪をぶち壊す。俺を馬鹿にしやがって花梨……覚悟しとけよ!
*
落風の洞窟の扉の前へ、芽衣はほとんど無傷で戻ってきた。
彰と、
「まさか、こんなに早く試練をクリアすると……」
小夜は、
「もしかしたら勝てるかもしれない」
テンプレの台詞を口にした。
ゲームである以上、ある程度は盛り上げる必要があるのだ。
だが、いまいちに盛り上がりに欠けていた。
花梨と小百合も、萌衣の実力は把握している。
小春も「一番の強敵は萌衣ちゃんだったよ」と、断言。
モニターで見ていた彰と小夜も、萌衣の実力を把握している。それが分かっている以上、彰と小夜の台詞もどことなく棒読みになってしまった。
萌衣は思う。
「もうちょっと感情込めて言って欲しいよ、ボクは。これじゃあ盛り上がるのも、盛り上がらないよ!」
萌衣の台詞に彰は乾いた笑みを浮かべた。
「めちゃめちゃ感情は込めていたさ。勘違いだよ勘違い」
小夜はいつも通りほぼ無表情。
「とりあえずは、風鈴の村へ戻る。これで、ヤツとも対等に戦えるはず」
彰と小夜は、萌衣の実力ならもしかしたらフェアリーフィールドなしでも対等に戦える気はしたが、盛り下がるのは言わないのがゲームの基本だ。フェアリーシールドを自身のスキルにした意味がなくなるからだ。
ーー風鈴の村から、ちょっとだけ離れた隠れ家にダークシルフ・身長2メートルを越える漆黒の身体で、自身を包み込めそうな巨大な翼を生やした姿のエミリはいた。
数分前ーー萌衣達が風鈴の村へ着くと、萌衣そのものからフェアリーフィールドの気配を感じたエミリはやっと出番だなと、おやつのプリンをさっさとたいらげた。
仕事だるいなぁ……だけど給料いいから頑張るか。馬ヤロウの為に。
馬ヤロウとは、基本的に画面の操作だけで遊べお手軽で擬人化した馬を育て競争させる人気スマホゲームだ。
エミリは月の鈴にマホスマホをしまって、風鈴の村へ行きの転移魔法陣の上へ。
萌衣達の目の前に現れ。
夕維を一目見た瞬間、エミリの全身を衝撃が駆け抜けた!
エミリの性別は女性。だけどロリ属性の百合っ娘だ。
夕維にドキッとしてしまった。
エミリは風を操り夕維のスカートをめくってみた。
夕維はちょっと赤くなってスカートを押さえて、中身は微妙な違和感はあったが白。
エミリの趣味にドストライク。
とりあえず仕事だからエミリは、彰へ視線を移す。
「ほう……フェアリーフィールドを自身のスキルにしている者を連れて来て、もしかして我を倒すつもりか?」
彰は肯定する。
「ああそうだ」
萌衣もノリノリで肯定する。
「そうだボクが退治をする。ボクにとって彰と小夜は、大切な仲間だ。友が困っているのならボクは手を貸す!」
エミリは一瞬だけ視線を夕維へとずらす。
「そう……わたしとしては手荒な真似はしたくないんだけど。言っとくけどわたしめちゃめちゃ強いから。負けても簡単には許さないけど、白いゴロスリ服を着た彼女をわたしの妹に差し出すなら許しても良いわよ」
萌衣は拒絶する。
「夕維は、ボクの大切な妹だ。お前には渡さない」
夕維はちんぷんかんぷんだった。
俺は、いつからの萌衣の妹になった? というか、
「夕維とか意味の分からない名前で呼ばれたりしているけど、俺は、ドド‥‥‥男だ!」
ドドは男。それは真実だ。
だが芽衣にとってある意味、ドドは夕維であり、妹というのも真実だった。ある意味がなかったら嘘になるが。血のつながりがまったくないとか、現実的な事実はどうであっても芽衣には関係ない。
芽衣にとって夕維は妹。それも真実なのだから。
エミリは笑う。
「まさか男の娘とは、それもわたし好みよ。生意気な小娘を倒したあとたっぷりと可愛がってあげるわよ」
基本ロリ属性だが夕維は、エミリの守備範囲内。いや、ドストライクだった。
夕維は思う。
萌衣さんはまともだと思ってたけど、なんか違う。あのダークシルフも、あれはエロフィと変わらない変態だ。というかゲームだよね? なんで二人とも本気なの? けど俺、女の子好きなんだよね……エロフィのような変態はごめんだけど……逃げたい。
「ボクの妹は渡さない!」
勝手な事を言うな。俺は妹違うしそもそも男だ。
「なら力ずくで奪うまで!」
コイツも好き勝手言いやがって! 逃げたい。だけど今は魔力使えないし、変態だらけだけど、とりあえずこのパーティーが安全そうだし逃げられないんだよな。泣きたい。こんな事ならミミ姉ちゃんの計画に乗らなければ良かったな。
ミミ姉ちゃんとは、夕維の姉。つまり、ドドの実姉だ。ファイナルドラゴンクエストにめちゃめちゃはまった廃人であり廃課金者でもある。
ある日、ミミに事件は起きた。
どうしても欲しいガチャアイテムがあって百万円課金したのだ。
だが出なかった。
ーー出る訳がなかった。アップデートがきていたのにーーアップデートをしなかったのだから。
ミミは思わずマホスマホを地面に投げ付けた。
マホスマホは自動防御魔法陣が働いて無事だったが、ミミの心はズタズタだ。
ミミは決意する。運営に復讐してやろうと。
そしてミミはファイナルドラゴンクエストのバグを見つけた。その魔法式を研究しゲームシステムを無効化さたり、現実世界にすら干渉させたりすることが可能になった。
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