魔力ゼロの異世界転移者からちょっとだけ譲り受けた魔力は、意外と最強でした

淑女

文字の大きさ
上 下
29 / 99
第一章・夢はゲームで叶えよう花梨と芽衣と小百合の冒険譚

*二十九・落風の試練のクリアと戦斧の黒い笑み

しおりを挟む
  
 昨日のように夕維はパンチラやパンモロに釘付けで、小百合は扉の横のモニター越しだが初めて萌衣のパンモロの撮影に成功した。

 小百合はすぐに編集したいが萌衣にバレるのは恐い。
 裏垢で編集するにしても、一度は自宅に戻った方が無難かもしれませんね。絶対に人気出ますよコレ。

 萌衣は小百合のたくらみは知らないが試練の初戦が楽勝だったこともあり、二回戦目の魔法陣を目の前にルンルンだ。

 足を踏み入れると、地中から巨大な大剣を右に握り締めたジャアイントコボルトが現れた。
 コボルトは、ゴブリンよりちょっと強い程度の二足歩行の狼で。
 ジャアイントコボルトは通常より大きく、身長は2メートル50センチを越える巨体だ。

 巨体の魔力が、足の裏へと移る。
 属性は風。

 ジャアイントコボルトは地の中に宿る生命力の中にある土属性と、反発する風属性を利用してすべった。
 下手したら暴発する恐れがあるが使った魔力量に対して、地を滑って得られるスピードは速い。

 この魔力の使い方は面白いな。

 センスが良い萌衣はあっさり真似をして、勢いそのままに百均スコップでジャアイントコボルトを吹っ飛ばした。

 三回戦目は炎を纏った巨大な3メートルを越す巨鳥が地中から現れた。

 炎の巨鳥の再生能力に萌衣は苦戦したが、最終的には血の力を付与した月属性で二刀流の百均スコップを強化。
 炎の巨鳥をあっさり二刀両断。
 萌衣は、風の指輪のフェアリーフィールドを自身のスキルとした。

 ーーその頃。

 戦斧はイライラしていた。
 イライラしながら胸クソ悪い早苗のいるギルド巡礼から遠く離れた酒場で、酒を浴びるように飲んでいた。
 あの時はついびびちっまったが、花梨があんなに強いなんて、所詮しょせん「ファイナルドラゴンクエスト」のゲーム中の話じゃあねぇか。仕返ししてやらねぇと気が済まねぇぞ!

 戦斧に一人の女性が近寄った。

「荒れているようだけど、アナタ……ファイナルドラゴンクエストに興味があるの?」

「あっ、つい声に出ていたか……俺はゲームには興味ねぇよ。只、レストラン・ランランランデブーの飯が上手いからたまに行くが……というか俺にいきなり話し掛けてなんか用があるのか?」

「……ファイナルドラゴンクエストのアプリはダウンロードしているんでしょう。そのゲームはしているんでしょう?」

「話題だからそのファイナルドラゴンクエストをしたが、そこまで面白くなかったな。現実のお金を稼げる訳でもないし俺には合わねぇ。俺はレストランの飯が上手いから行くそれだけだ」

「もしそのゲームシステムの能力が現実世界でも、使えるになると言ったら興味ある?」

「それが本当ならな。だけどゲームを現実に? 無理に決まっているだろう」

「……それが出来るのよ。この魔石をポケットに入れて、その腰に結び付けている月の鈴を使ってみて」

「俺は月属性は持ってねぇ。これは仕事用に、月属性のヤツらに貸し出す為の物だ」

「だから言ったじゃあない。この魔石があればゲーム内の能力が使えるって……一時期、アナタは月属性を募集していたから、月属性を持ってないのは知ってるわ……ファイナルドラゴンクエストをするなら自身の属性以外の属性も身に付けられるから、難度の低い月属性は得ているんじゃないかと思ったからこの話を持ち出したの」

「馬鹿……信じるかそんな話」

「とりあえず、ちょっと試してみるだけでも」

「わかった。そこまで言うのなら試してやるよ」

 戦斧は女性から魔石を受け取り、月の鈴へ魔力を流すと巨大化した。
 戦斧の表情が変わる。

「……嘘だろ?」

「とりあえずそれを三日間貸すからお試し期間が終わって気に入ったら、再びここに来てそれを買って欲しいのよ。値段はその時に決めるけど。風竜の指輪が高額で売れて、お金なら沢山あるでしょう。それにコレ、ゲーム内の取得経験値を5倍にもするチートアイテムだから」

「それなりにお金は、あるにはあるが……もし気に入っても俺が再びここにくるとは限らねぇぞ?」

「その魔石は半分に割った残りだから効果が半分しかないのよ。もしお試し期間が終わってその時に気に入ってくれたなら、残りの半分の魔石を売ってあげるわ。そうなったらゲーム内の取得経験値は10倍だし、ゲーム内で強化された能力を現実でもそのまま使えるから」

「分かったよ三日後だな」

「そうよ」

「まあ試すだけなら只だし、もしかしたら……本物の可能性もあるかも知れないからな」 

 ーー三日後。
 戦斧は女性から魔石を買った。
 五千万という上級クラスの家を買える値段だったが戦斧の貯金にはまだ余裕があり、それ以上の価値があると判断したからだ。

 これで俺はリアルでもゲームでも月の鈴を使える訳だ。花梨は確か、炎翼えんよくの指輪と氷翼の指輪を大切にしていたな。現実世界で、月の鈴に保管していた炎翼と氷翼の指輪をぶち壊すのも良さそうだし、花梨得意のゲーム世界でもその指輪をぶち壊すのも良さそうだな。まあ徹底的に泣いて謝るなら、本当に壊しはしないけどな。

 戦斧は黒い笑みを浮かべた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

【完結】百年に一人の落ちこぼれなのに学院一の秀才をうっかり消去しちゃいました

平田加津実
ファンタジー
国立魔術学院の選抜試験ですばらしい成績をおさめ、百年に一人の逸材だと賞賛されていたティルアは、落第を繰り返す永遠の1年生。今では百年に一人の落ちこぼれと呼ばれていた。 ティルアは消去呪文の練習中に起きた誤作動に、学院一の秀才であるユーリウスを巻き込んでしまい、彼自身を消去してしまう。ティルア以外の人の目には見えず、すぐそばにいるのに触れることもできない彼を、元の世界に戻せるのはティルアの出現呪文だけなのに、彼女は相変わらずポンコツで……。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【宮廷魔法士のやり直し!】~王宮を追放された天才魔法士は山奥の村の変な野菜娘に拾われたので新たな人生を『なんでも屋』で謳歌したい!~

夕姫
ファンタジー
【私。この『なんでも屋』で高級ラディッシュになります(?)】 「今日であなたはクビです。今までフローレンス王宮の宮廷魔法士としてお勤めご苦労様でした。」 アイリーン=アドネスは宮廷魔法士を束ねている筆頭魔法士のシャーロット=マリーゴールド女史にそう言われる。 理由は国の禁書庫の古代文献を持ち出したという。そんな嘘をエレイナとアストンという2人の貴族出身の宮廷魔法士に告げ口される。この2人は平民出身で王立学院を首席で卒業、そしてフローレンス王国の第一王女クリスティーナの親友という存在のアイリーンのことをよく思っていなかった。 もちろん周りの同僚の魔法士たちも平民出身の魔法士などいても邪魔にしかならない、誰もアイリーンを助けてくれない。 自分は何もしてない、しかも突然辞めろと言われ、挙句の果てにはエレイナに平手で殴られる始末。 王国を追放され、すべてを失ったアイリーンは途方に暮れあてもなく歩いていると森の中へ。そこで悔しさから下を向き泣いていると 「どうしたのお姉さん?そんな収穫3日後のラディッシュみたいな顔しちゃって?」 オレンジ色の髪のおさげの少女エイミーと出会う。彼女は自分の仕事にアイリーンを雇ってあげるといい、山奥の農村ピースフルに連れていく。そのエイミーの仕事とは「なんでも屋」だと言うのだが…… アイリーンは新規一転、自分の魔法能力を使い、エイミーや仲間と共にこの山奥の農村ピースフルの「なんでも屋」で働くことになる。 そして今日も大きなあの声が聞こえる。 「いらっしゃいませ!なんでも屋へようこそ!」 と

処理中です...