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第一章・夢はゲームで叶えよう花梨と芽衣と小百合の冒険譚
*二十九・落風の試練のクリアと戦斧の黒い笑み
しおりを挟む昨日のように夕維はパンチラやパンモロに釘付けで、小百合は扉の横のモニター越しだが初めて萌衣のパンモロの撮影に成功した。
小百合はすぐに編集したいが萌衣にバレるのは恐い。
裏垢で編集するにしても、一度は自宅に戻った方が無難かもしれませんね。絶対に人気出ますよコレ。
萌衣は小百合の企みは知らないが試練の初戦が楽勝だったこともあり、二回戦目の魔法陣を目の前にルンルンだ。
足を踏み入れると、地中から巨大な大剣を右に握り締めたジャアイントコボルトが現れた。
コボルトは、ゴブリンよりちょっと強い程度の二足歩行の狼で。
ジャアイントコボルトは通常より大きく、身長は2メートル50センチを越える巨体だ。
巨体の魔力が、足の裏へと移る。
属性は風。
ジャアイントコボルトは地の中に宿る生命力の中にある土属性と、反発する風属性を利用して滑った。
下手したら暴発する恐れがあるが使った魔力量に対して、地を滑って得られるスピードは速い。
この魔力の使い方は面白いな。
センスが良い萌衣はあっさり真似をして、勢いそのままに百均スコップでジャアイントコボルトを吹っ飛ばした。
三回戦目は炎を纏った巨大な3メートルを越す巨鳥が地中から現れた。
炎の巨鳥の再生能力に萌衣は苦戦したが、最終的には血の力を付与した月属性で二刀流の百均スコップを強化。
炎の巨鳥をあっさり二刀両断。
萌衣は、風の指輪のフェアリーフィールドを自身のスキルとした。
ーーその頃。
戦斧はイライラしていた。
イライラしながら胸クソ悪い早苗のいるギルド巡礼から遠く離れた酒場で、酒を浴びるように飲んでいた。
あの時はついびびちっまったが、花梨があんなに強いなんて、所詮「ファイナルドラゴンクエスト」のゲーム中の話じゃあねぇか。仕返ししてやらねぇと気が済まねぇぞ!
戦斧に一人の女性が近寄った。
「荒れているようだけど、アナタ……ファイナルドラゴンクエストに興味があるの?」
「あっ、つい声に出ていたか……俺はゲームには興味ねぇよ。只、レストラン・ランランランデブーの飯が上手いからたまに行くが……というか俺にいきなり話し掛けてなんか用があるのか?」
「……ファイナルドラゴンクエストのアプリはダウンロードしているんでしょう。そのゲームはしているんでしょう?」
「話題だからそのファイナルドラゴンクエストをしたが、そこまで面白くなかったな。現実のお金を稼げる訳でもないし俺には合わねぇ。俺はレストランの飯が上手いから行くそれだけだ」
「もしそのゲームシステムの能力が現実世界でも、使えるになると言ったら興味ある?」
「それが本当ならな。だけどゲームを現実に? 無理に決まっているだろう」
「……それが出来るのよ。この魔石をポケットに入れて、その腰に結び付けている月の鈴を使ってみて」
「俺は月属性は持ってねぇ。これは仕事用に、月属性のヤツらに貸し出す為の物だ」
「だから言ったじゃあない。この魔石があればゲーム内の能力が使えるって……一時期、アナタは月属性を募集していたから、月属性を持ってないのは知ってるわ……ファイナルドラゴンクエストをするなら自身の属性以外の属性も身に付けられるから、難度の低い月属性は得ているんじゃないかと思ったからこの話を持ち出したの」
「馬鹿……信じるかそんな話」
「とりあえず、ちょっと試してみるだけでも」
「わかった。そこまで言うのなら試してやるよ」
戦斧は女性から魔石を受け取り、月の鈴へ魔力を流すと巨大化した。
戦斧の表情が変わる。
「……嘘だろ?」
「とりあえずそれを三日間貸すからお試し期間が終わって気に入ったら、再びここに来てそれを買って欲しいのよ。値段はその時に決めるけど。風竜の指輪が高額で売れて、お金なら沢山あるでしょう。それにコレ、ゲーム内の取得経験値を5倍にもするチートアイテムだから」
「それなりにお金は、あるにはあるが……もし気に入っても俺が再びここにくるとは限らねぇぞ?」
「その魔石は半分に割った残りだから効果が半分しかないのよ。もしお試し期間が終わってその時に気に入ってくれたなら、残りの半分の魔石を売ってあげるわ。そうなったらゲーム内の取得経験値は10倍だし、ゲーム内で強化された能力を現実でもそのまま使えるから」
「分かったよ三日後だな」
「そうよ」
「まあ試すだけなら只だし、もしかしたら……本物の可能性もあるかも知れないからな」
ーー三日後。
戦斧は女性から魔石を買った。
五千万という上級クラスの家を買える値段だったが戦斧の貯金にはまだ余裕があり、それ以上の価値があると判断したからだ。
これで俺はリアルでもゲームでも月の鈴を使える訳だ。花梨は確か、炎翼の指輪と氷翼の指輪を大切にしていたな。現実世界で、月の鈴に保管していた炎翼と氷翼の指輪をぶち壊すのも良さそうだし、花梨得意のゲーム世界でもその指輪をぶち壊すのも良さそうだな。まあ徹底的に泣いて謝るなら、本当に壊しはしないけどな。
戦斧は黒い笑みを浮かべた。
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