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第一章・夢はゲームで叶えよう花梨と芽衣と小百合の冒険譚
*二十四・落風の試練への道チキチキトーナメント戦・一回戦目へ
しおりを挟む「では案内をしますので、後をついて行ってください」
丸い穴が空いている四角い箱を乗せた台座の前まで、ドロシーは移動する。
「クジを引いてください」
萌衣は箱の中に手を入れて、玉を取り出した。書かれていた数字は5だった。
「結果は十時からです。あと十五分程お待ちください」
ドロシーは頭を下げて説明を終えてその場を離れた。
十五分後。
対戦相手が決まりトーナメント戦まではまだ時間があった。
5と書かれた玉に気付いて、初戦の対戦相手が挨拶をする。番号は6だ。
「初めまして。わたしは最近、ファイナドラゴンクエストを始めた瑠璃って言いますね。ランクは67です」
瑠璃は黒いローブの上から上半身を覆い隠す鎧と、腰には鞘に収めれた大剣を装備していた。
竜の大剣使いだ。
萌衣は竜の魔法使いだ。
「初めましてボクは、萌衣。ボクも最近、始めたんだよ。結構ランク上がってるね」
「ええ。今は初心者応援期間でレベルもランクも上がりやすいからですよ。萌衣さんのランクはいくつですか?」
「ボクは1だよ」
瑠璃はポカンとなった。
「はっ? すみません。もう一度聞いていいでしょうか?」
「ボクは1だよ。なんか、超激レア・百合真夢剛竜剣とかも引いているし」
瑠璃はつい声を荒らげた。
「めちゃいいの引いてるじゃないですか! ここの推奨ランクは65からですよ! 初心者すぎるのにも程があります!」
「そうなんだ。でも、皆が大丈夫だろうって?」
「何を言ってるんですか? ランク1なんて無理に決まってます。アナタは馬鹿にされてるんですよ」
「ボクはそうは思わないけど」
瑠璃はさっきより声を荒らげた。
「アナタは、わたしが相手で良かったですね。酷い人になると平気で負けた相手の初回ガチャのアイテムを奪ってすぐにリアルマネートレードで売りさばきますから。百合真夢剛竜剣なんて超超激レアアイテムを持っていたら、真っ先に狙われます!」
瑠璃は何故かちょっとだけ得意げだ。
ーーアナウンスが流れる。
『これより、落風の試練への道チキチキトーナメント戦を始めます』
萌衣は思った。
チキチキってなんだろうって?
だけど意味はほとんどない。チキチキを抜いたら言葉的に寂しいからだ。
『トーナメント参加者は上限の16人まで集まりました。ですから三回勝ち進めれば落風の試練の挑戦券をゲット出来ます。それぞれのバトルフィールドに移動してください』
アナウンスが終わって数秒後。
ドロシーが現れて、五番と六番用のバトルフィールドへ萌衣と瑠璃を案内した。
萌衣と瑠璃がバトルフィールドに足を踏み入れ、バトル開始のアナウンスが流れた。
『それでは、バトル開始です!』
瑠璃は素早く大剣を抜き構えた。
萌衣は月の鈴から百均スコップを抜き構えた。
瑠璃の思考が一瞬止まる。
「……もしやそれは、百均スコップなのでは?」
「そうだよ。今ボクはとある事情で、百合真夢剛竜剣は使えないんだ」
「何故、百合真夢剛竜剣が使えないのか分かりませんが、百均スコップはちょっと馬鹿にしすぎじゃありません?」
「仕方ないよ。とある約束だから」
萌衣の台詞はある意味事実だが、ある意味100%妄想だ。
「良く分からないですが、その妄想をわたしが切り裂いて上げますよ!」
瑠璃は駆け出して大剣を振るう。
萌衣は体を左足を軸に身体を回転させ、そのまま瑠璃の背後へ。百均スコップで左右で一刀ずつ振るった。
こちらへ迫ってくる瞬発力だけはあったが、いきなりの大振り。大剣を振るうスピード。振ったその後。どう判断しても素人だった。
そもそも大剣は巨大なモンスター相手なら相性はいいかもしれない。
だがーー
魔法とか弓とかの遠隔攻撃に対応しづらい。振りは通常の剣が明らかに速い。その大きさのせいで、通常の剣より明らかに小回りが利きづらい。
ゲームのシステムの能力補正を考えても、ファイナルドラゴンクエストというゲーム内。いや現実でも、魔力や闘気で強化した通常の剣や短剣の方が対人戦では使い勝手が良い。
普通に対人戦で大剣は不利だった。
その上、素人丸出しの動き。
萌衣は反射的に手加減をしてしまった。
瑠璃はゲーム内のシステムで防御力が強化されていた為、ダメージは浅い。
瑠璃は竜の水晶に215ダメージを受けた。
瑠璃の竜の水晶残り2385HP。
「背後からとは卑怯ですね」
「いや……まだ、背後から不意打ちだったら分かるんだけど。普通に回り込んでの一撃だから卑怯もクソもないんじゃない? モンスターは待ってくれないよ?」
芽衣の正論は通じなかった、それどろか相手の怒りを刺激した。
「背後から“不意打ち”した上に言い訳ですか? 見苦しい……ですねっ!」
……萌衣は思った。
もしかしてヤバい人。良く分からないけど、この人はヤバい……んで変な人だ。ボクの周りって変な人ばかり集まるな。
「今度は言い訳もなしですか……ちょっと大人げないですが、百合真夢柔竜剣を使わせてもらいます。アナタがロリ真夢剛竜剣を使わないから、使うつもりではなかったのですが……アナタが悪いんですよ」
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