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第一章・夢はゲームで叶えよう花梨と芽衣と小百合の冒険譚
*十五・VSシルフ・二回戦目
しおりを挟む萌衣は実感が湧かない。
「もしかして、ボクも風属性の魔法が使えるようになったの?」
小百合は説明する。
「ですね。ファイナルドラゴンクエストのゲーム内限定ですけど」
「なんかボクちょっと嬉しいかも、小百合ありがとう」
小百合は内心、柄じゃないと思いつつもちょっと照れていた。今まで必要な時しかパーティーを組まず、ほとんどソロでやっていた小百合にとってこういうやり取りはちょっと嬉しかった。
花梨も似たようにソロが多かったから素直に嬉しかった。
「良かったね萌衣ちゃん。次はわたしが戦うね。わたしは基本的に属性は、“月属性”のみで充分だから。勝ったら風属性を萌衣ちゃんにプレゼントするね。萌衣ちゃんならすぐに風属性の感覚も掴めると思うし。スピアさんもそれで問題ない?」
「わたしもそれで問題ないですわ……ランクはいくつですか?」
「ランクは500だよ。もしわたしに勝ったら、わたしの能力の秘密を教えてあげる」
「ランクMAXとは結構やり込んでますね。勝てる気がしません。けどその能力も気になりますね」
花梨はニヤリと笑う。
「んじゃわたしから」
花梨は蒼い陣を描いて、
「高めるは炎。集え、我の魔力のもとへ」
言霊をのせて、小さな火球を50個浮かび上がらせた。
いくつもの火球が複雑な螺旋を描きながら、スピアを狙う。
スピアは余裕をもって必要最低限の動きで、時には突風を放って相殺しながら避ける。
「なるほど……火属性を感じませんね」
「どんどんいくよ!」
花梨は蒼い陣を描いて、
「高めるは風の渦。集え、我の魔力のもとへ」
言霊をのせて、蒼い小さな風の渦を50個浮かび上がらせた。
「次は風属性を感じない、風の魔法ですか……確かに面白いですわね」
花梨は思った。
「スピアさんって強くない?」
「気のせいですわ。んじゃ今度はこちらから」
スピアは魔法陣を描いて、
「魔法陣にとおすは、風属性。風よ鳴け」
詠唱し、自身の頭上に170個の緑色の風の渦を作り上げた。
花梨は月属性・闘気・異世界の魔力を合成したドームを作り上げ、自身を包もうとーー
気配の変化を察知したスピアは、85個・半分の風の渦を花梨へ放つ。
花梨は大きく飛び退いた。
だが残り半分の風の渦が花梨を狙う。
花梨は宙へ避けながら月属性・闘気・異世界の魔力を練り上げその球状の膜で自身を包み、170個の風の渦を完全に弾いて消滅させ。
ーー瞬間。
スピアの魔力を超圧縮された短剣に切り裂かれた。右の手に魔力を超圧縮した短剣、左の手に闘気を超圧した短剣を形成していた。
花梨は思わず後方へ。
「器用だね。んじゃ、わたしも」
闘気・月属性・異世界の魔力を合成した短剣を形成。
闘気と月属性の強さは、スピアの魔力を超圧縮した短剣には遠く及ばない。それより劣る闘気の短剣よりも弱いーーだが異世界の魔力も合成した短剣の総合的な強さは、スピアの闘気や魔力の短剣よりはるかに強い。
スピアは花梨へせまる。
左の闘気の短剣を、花梨の腹から右肩から斜めへ振り上げ。
花梨は右の短剣で受け止めそのまま闘気を切り裂き。スピアはそれを魔力の短剣で受け流した。
花梨の予想の範囲内。だけど、
「油断しないんだね。ちょっとぐらいは油断すると思ったのに」
「当たり前です。あなたが普通に、魔力と闘気を合成した短剣を作り上げるとは思えません」
「やっぱりそう思うか……んじゃ、さらにどんどんいくよ!」
花梨は蒼い陣を描いて、
「高めるは水の渦。集え、我の魔力のもとへ」
言霊をのせて自身の頭上に約1メートル、150個の水の渦を作り上げ。
花梨はその水の渦で自身を囲み。
さらに蒼い陣を描いて、
「高めるは地の力。集え、我の魔力のもとへ」
言霊をのせて自身の頭上に、約一メートルの150個のダイヤモンド状の塊を作り上げた。
その間にスピアが作り上げた風の渦は、約半分の五十センチを200。
スピアは自身の限界を悟った。
「降参!」
萌衣は自身の物差しで、ボクと違うけど、“何かしらの血の力”だろうと推測する。
小百合は、花梨が発した 『基本的に月属性だけで充分だから』という言葉が信じられない。
「……花梨お姉様、さっきの月属性だけで充分って言葉は嘘だったんですか? 少なくとも失われた、聖と闇属性を花梨お姉様は使えますよね?」
花梨は平然と即答する。
「使えないよ。だけどこれは、リアルの、元もとのわたしの能力なの。この能力があるからこそ、無課金でもそれなりにこのゲームを楽しめたの。この能力を使えるようになったばかりの頃は、わたしを『月属性のみの落ちこぼれ』って馬鹿にした連中を見返してやろうとも思っていたんだけど、ゲームやっているうちにそんな事どうでも良くなっちゃった。だから萌衣ちゃんも楽しめると思うよ」
「そ、そうかな?」
「今まで、自身のせいで世界中のあらゆる所へ散った闇属性の回収は終わったんでしょう」
萌衣の瞳が驚きに染まる。
「ど、どこでその情報を?」
「わたしはこう見えてもギルド巡礼の早苗さんと知り合いだから、色んな情報が入ってくるんだよ。何故、闇属性が散ったのかまでは教えて貰えなかったけど」
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