魔力ゼロの異世界転移者からちょっとだけ譲り受けた魔力は、意外と最強でした

淑女

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第一章・夢はゲームで叶えよう花梨と芽衣と小百合の冒険譚

*十一・ジャイアントボアー退治

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「スパッツのアバター装備とかないの?」

 小百合は即答する。

「嫌です教えたくありません」

「どうして?」

「パンツを見れる可能性をゼロにして、楽しいですか?」

「いいから教えろ! ボクは、あの偉大なる竜の魔法使いのアレが気に入ったんだ!」

「あれも裾が短くって、スカートがめくれやすいワンピタイプの装備ですよ」

「だからスパッツが必要なんじゃあないか。アレはカッコいい着たい。だけどパンチラは恥ずかしいじゃあないか」

「意味が分かりません」

 花梨はこのままだとストーリーが進まないと思った。だからとりあえず、まとめに入る。

「そのクエストは難しいから簡単な依頼からこなそうよ。萌衣ちゃんの初期職業は、竜の魔法使いでいいんだよね?」

「もちろんだよ」

 萌衣は受付嬢へ歩み寄り、

「職業は竜の魔法使いです」

 そう宣言するとーー白い光に包まれた。萌衣の黒い衣服が、パフスリーブの白いワンピースに変化する。 
 さっそく小百合は萌衣のスカートをめくろうとする。
 だけど激しく拒否された。
 萌衣は力の血を付与・つまり手加減なしで固く握りしめたグーパンチを放った。

「触るなぁ~っ!」

 小百合は吹っ飛び竜の水晶へ千のダメージを与えた。残り49000HP。スッ転び小百合のローブが大きくめくれたが、スパッツはきちんと装備し直されていた。
 萌衣は堪忍袋へ100のダメージを受けて残り4900HP。 

 花梨はストーリーを進めたい。お友達募集ボーナスが気になるからだ。
 とりあえず、ギルド・ルイーダの受付嬢へ花梨は歩み寄る。

「ジャイアントボアー退治の依頼をお願いします」

 *

 森の中を通ってたどり着いた薬草畑。
 ゲーム為に作られた薬草畑だがその雄大さに、萌衣はちょっと感心した。笑みもちょっとだけこぼれる。
 
「薬草畑を荒らす巨大いのしし・ジャイアントボアー退治か……」

 花梨が? となる。

「ん? どうしたの?」

「テンプレ的な内容だと思って」

「萌衣ちゃんは、ゲームはしないタイプなんだよね」

「だけどマホアルファ小説は読むからね」

 ーー小百合はいつの間にか萌衣のマホスマホを操作していた。

「どれどれ? 十八禁ーー」

 萌衣はめちゃめちゃあせりグーパンチを放つ。

「人のマホスマホの中身を勝手に見るなっ! まったく油断もすきもない」

 危ない危ないもう少しでボクの人生終わるところだった。

 小百合は吹っ飛んで、竜の水晶はダメージを受け残り48000HP。
 萌衣の堪忍袋へダメージを受けて残り4300HP。

 花梨の心境は複雑だ。

 早くストーリーを進めないと、お友達募集ボーナスが……めちゃめちゃ気になる。萌衣ちゃんと小百合ちゃんのコントはもういいんだよ。めちゃめちゃ似合う竜の魔法使いのアバター装備の萌衣ちゃんの、生パンが気にならないって言ったら嘘になるけど。

 あと……萌衣ちゃんの読む十八禁小説もめちゃめちゃ気になるけど。

 花梨の狙うお友達ボーナス報酬はランダム。
 狙うは白竜の欠片。つまり風竜の指輪狙いだ。

 実は風竜の指輪は、西尾が戦斧へ渡した時に異世界の魔力が付与されたままだった。
 面白半分で西尾がこれも付与出来るかなと試しただけなのだが、すっかり忘れてそのまま戦斧の手へ。
 それを知らないまま戦斧が使うと腰が抜けそうな威力。
 結果。
 風竜の指輪は隠された能力があると誤認された噂が流れ、値段が爆発的に上がった。

 だから風竜の指輪が景品になった噂が入った時に、花梨はゲームに手を出した。すべては愛する西尾お兄ちゃんの為だ。

 遠くの平野から獲物が姿を現す。
 コントをしている萌衣と小百合より、花梨は早く気付いた。 

「あっ出てきたよ。ジャイアントボアー」

 萌衣が意外そうな声を上げる。

「なんか可愛くない?」 

 姿が太って丸まるとした猫に近い、猪だったからだ。

 それが一瞬の隙を生むはずと、小百合がりずに萌衣のパンチラを狙いつつ答える。

「ファイナルドラゴンクエストは、敵キャラが可愛い事でも有名ですよ。それでも人気を集めているゲームでもありますから」

 小百合のパンチラ狙いに警戒しつつ、萌衣は短剣バージョン・百合新夢剛竜剣を軽く振るう。血の力を付与して。

「あっ弱い」

 ジャイアントボアーは小百合同様簡単に吹っ飛んで倒れた。
 萌衣のマホスマホへ、
『ジャイアントボアの牙をゲットしました。
竜の魔法使いのLV2になりました。竜の魔法使いの能力が上昇しました。
ランク経験値30が入りました。
初心者ボーナスです。
ランク経験値20。
竜の魔法使いの経験値20。
が、それぞれ入りました。』
 マホメールが入る。

 花梨のマホスマホにも、
『お友達ボーナスの報酬・白竜の欠片をゲットしました。』
 マホメールが入る。
 花梨は小さくガッツポーズをした。
 西尾お兄ちゃん、これで風竜の指輪へまた一歩前進だよ。

「やったね萌衣ちゃん、わたしも白竜の欠片ゲットしちゃった」

「良く分からないけど。なんか、いっぱい入ったね」
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