魔力ゼロの異世界転移者からちょっとだけ譲り受けた魔力は、意外と最強でした

淑女

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第一章・夢はゲームで叶えよう花梨と芽衣と小百合の冒険譚

*六・血の力と異質な魔力

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 花梨はまだ目的をたしてない。 

「わたし、まだマナの薬草摘んでない」

「ボクの薬草を二つあげるから」

「それは悪いよ」

 再びゴブリン二匹を姿を現す。
 けど今までと様子が違う。
 二匹とも、手に黒い何かを持っている。

 萌衣が青ざめる。

「花梨。早く逃げろ!」

 萌衣はゴブリンへ駆け出す。
 ゴブリン二匹は黒い何かを握りしめたまま逃げ出す。

 花梨の頭の中は? だらけだったが追いかける。理由はなんとなくだ。

 萌衣が立ち止まった。
 パクリと、二匹のゴブリンは黒い何かを食らう。

 二匹のゴブリンは高さは8メートルを超える程に巨大化。

 オスはゴブリンキング。
 メスはゴブリンクイーン。
 と進化する。
 
 巨大化した二匹のゴブリンを見上げる途中で、萌衣は花梨に気付いた。

「逃げろと言ったはずだ。死ぬぞ」

「何か必死そうだったから、ほっとけないよ」

「気持ちは分かるが無理だ。Dランク……しかも魔力が月属性のみだったら絶対に勝てない」

「そんなのやってみないと分からないじゃん。それに萌衣さんだって、月属性しか感じないけど?」

「ボクには、血のちからがあるから。そして二つの指輪がある」

 右の小指には、風翼ふうよくの指輪を。
 左の小指には、土翼どよくの指輪を。
 左右の土翼指輪と風翼の指輪へ、自身の月属性の魔力を注ぎ込みーー背中へ自身を包み隠せそうな程に大きな、微かに赤みを帯びた白い翼を作り上げた。
 
 萌衣は反発する土属性と風属性を合成した。
 普通なら絶対に不可能だ。
 あるとしても、今は失われた属性となるひじり・闇属性・月属性が必要不可欠。

 本来ならだ。

 ーー聖属性は元もと天界人てんかいびとの独自の属性。
 闇属性は元もと魔族の独自の属性。
 月属性は、魔族と天界人以外の普通の人が宿し始めた人独自の属性といわれている。

 三つの属性は反発する属性同士のクッションとなり、そこから爆発的なちからを得る事が可能になる。

 人と天界人と魔族の混ざりあった血の力は、月属性のみでの、反発する属性同士の合成を可能とする。
 萌衣はとある事情でとある相手からその力を得た。
 相手は自身の寿命を削って。
 その相手は芽衣の師だった。

 萌衣は泣いた。
 自身の弱さや自身のせいで、師の寿命を削ってしまった事実に。
 師いわく寿命は腐る程長いから気にするなだ。

 原因は先祖帰りで萌衣の中で巨大な闇属性が暴走して制御不可能になって、芽衣自身の命をおびやかしたからだ。
 闇属性は暴走して萌衣は死にかけ。
 暴走した闇属性は竜へと姿を変えて師により撃破された。 
 そのあと師は自身の心臓へ刃を突き立て、したたる血を萌衣へ飲ませて。 天界人の血で芽衣の魔族の血を緩和させたのだ。 

 萌衣は一命を取りとめたが、闇属性は世界中に散った。 
 自身を許せなかった萌衣は散った闇属性を回収する旅に出たーー

 散った闇属性は、大気中に漂う様ざまな属性や生命力を食らい静かに成長する厄介やっかいな性質。
 魔物に更なる凶悪性を与え進化させる。
 二匹のゴブリンが食らった黒い何かは、萌衣の闇属性だったもの。
 巨大化したゴブリンキングとゴブリンクィーンは一匹だけでSランク初級でも苦戦する相手だ。
 自身のまいた種で、他の人達が酷い目に合うのはもう嫌だった。

 会ったばかりでこう思うのも変かもしれないけど。花梨は、ボクが死なせない!

 ゴブリンキングとゴブリンクイーン目掛けて空を駆けた。

 だがその姿は花梨の萌えを刺激した。
 あっ。なんか、かっこいい。たかがゴブリンキングやゴブリンクイーンごときに、わたしも負けていられない。

 花梨は月属性の魔力と異質な魔力を合成。
 右の小指は炎翼の指輪へ。
 左の小指は氷翼の指輪へ。
 左右の氷翼指輪と炎翼の指輪へ、自身の異質な魔力と月属性の魔力を合成して注ぎ込みーー背中へ自身を包み隠せそうな程に大きな蒼白い翼を作り上げた。  

 花梨は地を蹴り空へ。

「加勢するよ」

 萌衣は自身と似たような翼と花梨へと視線を流す。

 アレは?

 萌衣は驚かずにはいられない。
 自身とそっくりなあの翼からは、確かに火と水、両方の属性を感じられる。放出されている魔力の威圧感からして、合成としか考えられない。闇と聖属性も血の力もなしにだ。 
 放出された魔力は大気中に漂う魔力を巻き込み花梨の左右の指輪へ。循環させている。大気の魔力が加算される分、より強い循環へ。   

 何故。ボクと同じ事が出来る?

 花梨は不可思議な力で合成された魔力で左右の手にナイフを形成して、ゴブリンクイーンへ。
 ゴブリンクイーンは右の手の爪を振り下ろすが、花梨は左右のナイフでしっかりと受け止めた。

「萌衣さん。ゴブリンキングの方は任せたよ」

「……分かった。キングの方はボクに任せて」

 萌衣は現状を呑み込めないまま。

 花梨は右の手の爪を押し返してゴブリンクイーンは予想外の力に体制を崩す。よろめき一歩踏み出した右足へ花梨は追撃して、その中の一つの爪を切り落とした。

 萌衣も空を舞うようにゴブリンキングの左右の手の爪の攻撃をかわして、その両の爪を一つずつ切り落とした。
 
 花梨と萌衣は自在に空を舞いゴブリンキングとゴブリンクイーンの攻撃をかわして、次つぎと爪を切り落としていく。
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