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Act 12.古都に舞う鳥
幸せの定義は人それぞれ
しおりを挟む「君はどう思う?」
「どうって……」
「生まれ変わりって信じる?」
ここで信じないという選択肢があるんだろうか。
「信じたいです。非科学的だと言われても、そう思うことで救われることもあると思うから....」
「そうだね。ずっとモヤモヤしてたんだけど、君のおかげでなんかわかりそうな気がしてきたよ。雅人さんは、寛人の生まれ変わりと会ってるんだろうね」
心臓がドクドクと大きくなっていた。
自分だと気づいて欲しい。
でも見つけて欲しくない。
相反する想いが、ぐちゃぐちゃに絡み合って、混乱する。
「会いたくないって言ったのに、矛盾してるよね。会いたくはないんだ。でも、彼が今度は幸せに生きてるってことだけ確認したくて。彼は今幸せなのかな?」
隆二がまっすぐにこっちを見ていた。
「......それは.......分かりません。でも、前も寛人さんは幸せだったと思います。あと、寛人さんも同じように、理事長に幸せであって欲しいと思ってると思います。……理事長は今幸せですか?」
泣きそうな顔で隆二が笑った。
鼻の奥がツンとして、つられて自分も泣きそうになった。
日下に呼ばれた。
泣きそうな顔を隠して、「呼ばれてるので戻ります」と声をかけてその場から逃げるように駆け出した。
この場所で初めて告白された。
死ぬ前の最後の記憶。
もし自分が死ぬ運命じゃなかったら、と、何度も考えて、そして告白された時はすごく悔しかった。
生きていられなかった自分が、隆二を置いていってしまう自分が、なにより悔しくて。
何度も足枷を付けて、隆二が前に進めないように、自分のことだけを考えてくれるように、ずっと好きでいてくれ、忘れないでと懇願したかった。
でも、そんなエゴに蓋をして、別れをした。
全ては隆二に幸せになってほしかった。
前に進めない辛さは誰よりもわかっているつもりだった。
でも、自分はひとつ間違えを犯していたんだ。
隆二に幸せになってほしいと望みながら、俺を忘れないでほしいと心の中で渇望してた。
そう考えていた俺の心を、隆二が分からないはずはなかったんだ。
幸せの定義は人それぞれだ。
でも、あの表情をみて、今の隆二が幸せだとは到底思えなかった。
振り返れば、今にも舞台から飛び降りるんじゃないかと心配になるほどの、哀愁を背負った隆二の背中があった。
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