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Act 6 .迷える小鳥

バスケ部2

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「こいつアメリカでバスケやってたらしいぜ?」

 鷲田が後から来た部員に説明し始める。

「や、やっていた訳じゃ……」

 否定しようと思ったが、周りがなるほど!と納得している為、否定出来るような空気じゃなかった。

「だからかー!」
「そりゃ、ストリートの本場ならしゃーねーか」
「しょうがなくないだろう。レギュラーなのに」
「監督のポケットマネーが消えちまったもんなー」
「おぐっちのポケットマネーいくら使ったって問題ないっしょ!」

 口々に言っては、談笑する。このノリはどこのバスケ部でも、あまり差異はないらしい。

「あ、そだ! 今、丁度休憩だし、監督もいねえしさ! 俺ともう一度ストリートしようぜ!」

 そう手を叩いたのは鷲田だった。

「あの時はあんまりにちっせーから油断しちゃってよ」

「お前それ言い訳だろー! 負け認めろって!」

「わっしーは前にやったから、俺とやろうよ!」

 鷲田の言葉に、周りも乗ってくる。タオルやスポドリを、壁際に置き、それぞれ戻ってきた。
 好奇の目。バスケが少しでも強いやつと試合をしたい。そういう目だった。

 俺はこの目を良く知っていて、試合の前や後に、強い選手について語り合うときの目と一緒だった。

 でも、2回目はまずい。
 きっとこれだけの目があったら、マグレなんて言葉通用しない。

「や、でも……薫から待ってろって」

「大丈夫大丈夫! 俺からミナっちゃんに言っておくからさ。入部テストって事で」

「ちょ、ちょっと待て!」

 手にバスケットボールを持たされ、ハーフラインまで背中を押される。周りで休憩していた部員は、じゃんけんで誰がディフェンスをするか決めているようだった。

「こんな事したら、監督に怒られませんか?」

「大丈夫だって!」

 そう言いくるめられ、周りを見渡せば、鷲田を含めて3人。
 ハーフコート上にスタンバイし終わっていた所だった。

 ボールをパスされる。
 鷲田を含めた3人は文化祭の時よりも真剣に、こっちを見つめていた。

 どうしたら良いんだ。

 鬩ぎあう心は、立たされた状況に緩くなってしまいそうだった。

「おーい、始めていいぜ?」

 鷲田がにやりと笑った。

 やりたい。
 バスケを、もう一度。
 この気持ちを止められる術なんか、結局ない。

 ボールを抱えて、手のひらで上履きの裏のホコリを取った。バッシュじゃないが、体育館履きっぽい上履きなら問題ない。

 ゲームの構想を素早く練る。
 自分の背を考えると、ゴール下のショートレンジよりは、ミドルレンジ。ミドルレンジよりは、ロングレンジにあたる3ポイントの方がいい。

 しかし、3ポイントシュートは、練習もしてない素人が打ち込むにはマズいし、前回3ポイントで決めたからか、3人の立ち位置は割と手前。となると、一番素人が入れてもおかしくないシュート、レイアップで攻めるのが無難だ。

 前を見据えて、唾を飲み込んだ。
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