9 / 173
Act 1. 飛べなくなった鳥
初雪と初恋
しおりを挟む清水寺の舞台に着くと、兄貴が下ろしてくれた。やはり、兄弟だ。俺の事をちゃんと分かってる。
ありがとう、と俺がお礼を言うと、照れた様に笑い返してくれた。
俺がずっと舞台を見ていると、両親と梨絵さんと隆文さんは地主神社に行ってくると別れた。ラブラブな両親達で少し面白かった。
兄貴は兄貴で、ヤニが切れた、と言って喫煙所に向かって行った。
残された隆二と2人で、舞台の上から京を眺める。
「清水の舞台から飛び降りるって良く覚悟を表す言葉があるけど、結構高かったんだな」
「そうだね。たまに、本当に飛び降りて死んでしまう人もいるらしい」
「それはただの阿呆か」
「違うよ、きっと覚悟を示したかったんだ」
「示しても死んだら何も意味が無いだろ?」
「それでも。それ位、譲れない覚悟なんだよ」
「ふーん」
「僕の決意は、ここから飛び降りたら寛に伝わるのかな?」
ボソリと言った隆二の言葉に、「え?」と聞き返す。
「寛人、愛してる。君にこの気持ちが伝わるなら、何回でもこの舞台から飛び降りるよ。それこそ君の病気が治るなら、何回だって神に身を捧げるのに」
「何冗談言っているんだよ」と笑い飛ばそうとして、失敗した。
隆二の顔があまりに真剣で、とても嘘を言っているように思えなかったから。
「でも、お前……好きな人居るって」
昔から好きな人が居るって言ってたじゃないか。そう続けようとして、ハッとする。
「もしかして、」
「ずっと寛が好きだった。初めて会った時から、ずっと。寛以外いらない」
俺が二の句を紡げずにいると、隆二が更に言葉を重ねる。
「寛と体が入れ替われたら良いのに。俺がその苦しさを全部引き受けるのに」
「隆二……」
お前にはいくらでも未来があるじゃないか。
未来のない俺なんか好きで居たら駄目なのに。
拒否の言葉は出てこなかった。
ずっと一緒だった幼馴染からの告白は、同性同士であるはずなのに、気持ち悪さも何も感じなかった。
心臓が締め付けられるくらい切ない気持ち。
「今は何も言わないで」
隆二が泣きそうにそういうと、不意に唇が重なった。優しくて、触れるだけのキス。
この日初めて京都の街に雪が降った。
0
お気に入りに追加
697
あなたにおすすめの小説
大親友に監禁される話
だいたい石田
BL
孝之が大親友の正人の家にお泊りにいくことになった。
目覚めるとそこは大型犬用の檻だった。
R描写はありません。
トイレでないところで小用をするシーンがあります。
※この作品はピクシブにて別名義にて投稿した小説を手直ししたものです。
変態村♂〜俺、やられます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。
そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。
暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。
必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。
その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。
果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?
特殊な学園でペット扱いされてる男子高校生の話
みき
BL
BL R-18 特殊な学園でペット扱いされてる男子高校生が、無理矢理エロいことされちゃう話。
愛なし鬼畜→微甘 貞操帯 射精管理 無理矢理 SM 口淫 媚薬
※受けが可哀想でも平気な方向け。
高校生×高校生
※表紙は「キミの世界メーカー」よりお借りしました。
凪に顎クイされてる奏多イメージ
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる