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Act 1. 飛べなくなった鳥

初雪と初恋

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 清水寺の舞台に着くと、兄貴が下ろしてくれた。やはり、兄弟だ。俺の事をちゃんと分かってる。
 ありがとう、と俺がお礼を言うと、照れた様に笑い返してくれた。

 俺がずっと舞台を見ていると、両親と梨絵さんと隆文さんは地主神社に行ってくると別れた。ラブラブな両親達で少し面白かった。

 兄貴は兄貴で、ヤニが切れた、と言って喫煙所に向かって行った。

 残された隆二と2人で、舞台の上から京を眺める。

「清水の舞台から飛び降りるって良く覚悟を表す言葉があるけど、結構高かったんだな」

「そうだね。たまに、本当に飛び降りて死んでしまう人もいるらしい」

「それはただの阿呆か」

「違うよ、きっと覚悟を示したかったんだ」

「示しても死んだら何も意味が無いだろ?」

「それでも。それ位、譲れない覚悟なんだよ」

「ふーん」

「僕の決意は、ここから飛び降りたら寛に伝わるのかな?」

 ボソリと言った隆二の言葉に、「え?」と聞き返す。

「寛人、愛してる。君にこの気持ちが伝わるなら、何回でもこの舞台から飛び降りるよ。それこそ君の病気が治るなら、何回だって神に身を捧げるのに」

 「何冗談言っているんだよ」と笑い飛ばそうとして、失敗した。

 隆二の顔があまりに真剣で、とても嘘を言っているように思えなかったから。

「でも、お前……好きな人居るって」

 昔から好きな人が居るって言ってたじゃないか。そう続けようとして、ハッとする。

「もしかして、」

「ずっと寛が好きだった。初めて会った時から、ずっと。寛以外いらない」

 俺が二の句を紡げずにいると、隆二が更に言葉を重ねる。

「寛と体が入れ替われたら良いのに。俺がその苦しさを全部引き受けるのに」

「隆二……」

 お前にはいくらでも未来があるじゃないか。
 未来のない俺なんか好きで居たら駄目なのに。

 拒否の言葉は出てこなかった。
 ずっと一緒だった幼馴染からの告白は、同性同士であるはずなのに、気持ち悪さも何も感じなかった。

 心臓が締め付けられるくらい切ない気持ち。

「今は何も言わないで」

 隆二が泣きそうにそういうと、不意に唇が重なった。優しくて、触れるだけのキス。



 この日初めて京都の街に雪が降った。


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