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第三章

入学式

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真っ白なブラウスと裾の一本の黒ラインがよく映える赤いフレアスカートを身に纏い、特進科の特徴である赤いリボンをつけ、私は今日、入学式に挑みます


学園で割り当てられた寮の一人部屋を出て、講堂へと向かう


本当はクロスと一緒に行きたかったが、男子寮の前でノワール家の令嬢が突っ立ってたらそれだけで何を言われるか
だから作戦を変えることにしたのだ

ゆっくり、ゆ~~っくり、けどそれでも優雅に亀のように歩く
ふふふ、これこそ私の作戦!
名づけて"クロスが来るまで死ぬほど遅く歩いていればいつか会えるんじゃね!?"作戦!!

私と同じ制服を身に纏った子はもちろん、普通科の特徴である紺色のスカートとリボンを身につけた女生徒も赤や紺のネクタイをつけた男子生徒、クロスと同じ執事科だと思われる執事服を纏った男子生徒もどんどん私を追い越していく
だけど一向にクロスの姿は見えない

そして、結局私はクロスと会うことなく講堂に辿りついてしまった

クロスに会えなかったこととわざと超遅く歩いたせいで無駄に体力を使ったことで脱力感やら疲労感やらが一気に襲い掛かってくる

そして講堂に入ってとっくに自分のクラスの列の中にいるクロスを見かけて漸く気づいた

クロスが私よりも先に来ていたことに

そらぁ会わないわけだわな!
まず大前提を私は間違えていたのだから!!

間抜けすぎる自分にため息をつきつつ、自分も特進科の列に近づいていく

皆私を見てさまざまな顔をするがそんなのはもう慣れたこと
それらに一切目を向けずに堂々と前を見据えた

ざわざわと騒がしい講堂も壇上に現れたある一人の人物によって静められた

その人はこの聖パトリツィオ学園の学園長であった

精悍な顔つきをしたダンディーなおじいさま?…いやあれはおじさまと言っても通じるわね

「まずは皆様、入学おめでとう」

マイクを通して聞こえてきた声も落ち着いたテノールボイスで少し話しただけで私は学園長のイケボに魅了された

実は私、昔からかなりの声フェチなのだ
学園長のような落ち着いた深みのある声は特に好きで、正直めっちゃ癒される

今まで出会ってきた人の中でエドさんの声が一番タイプだったけど、なるほど
学園長もなかなかかなりいいものを持っていらっしゃる

心の中でニマニマしながら学園長の挨拶聞いていれば時間はあっという間に過ぎ、気づけば入学式は終わり、皆自分のクラスに向かおうとしていたところだった

イケボを堪能していた私もその時にハッ!と我に返り、移動しなきゃと思い足を踏み出した時だった

前に今朝会いたくても会えなかった人の背中が目に入った


クーロス!!と言いながら背後から目を塞いでやりたい衝動に駆られながら今度は優雅に早歩きで前の人物に追いついた


「おはよう、クロス」

「あぁ、おはよう」

「今朝は随分と早くに来てたのね」

「まあ、早くに目が覚めたからな、その辺適当に見て回りながら来たけど、どうかしたか?」

「…別に?クロスにお友達が出来たかどうか心配になって声を掛けただけよ」

「俺のことよりまずお前だろ。猫被ってたら本当の友達は出来ねえぞ」

「分かってるわよ!…でも、そう簡単に素を出せる相手が見つけられるとは思えないんだもん…」

「…大丈夫だっつの。お前は滅茶苦茶でバカでアホで少しどころかかなり変わってる」

「え、すごい貶してくるじゃん」

「けど、友達になれて良かったって思わせてくれるような奴だから、あんま心配すんなよ」

クロスが少し笑いながら私の頭を撫でてくれる
二人きりの空間じゃないし、周りにはその他大勢な人もいる
あのセツィーリア・ノワールがこんな扱いをされているところを、甘えているようなところを簡単に人に見せてはいけないのに、私の心の中では焦りよりも嬉しさの方が広がっていた

はあー…クロスもクロスだけど、私もとことんこのお兄ちゃんには適わないな



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