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第二章

砕け散りました

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いつもならすぐに家主と挨拶をするはずがなぜか今日に限って、パーティに来た友人や知り合いから挨拶を回るお父様たち

ますます変に思いながら私はにこやかな笑みを浮かべてセツィーリア・ノワールとしての自分の役目をしっかりとこなした

重要人物に対しての挨拶もそろそろ終わるという頃


「セツィーリア、少し休憩してくるといい。この後、ウォーレイ家の者の元へ挨拶に行く」

「それは分かったけど……お父様、凶悪面にさらに拍車がかかってますわよ?」

「…いや、すまない。条件反射だから気にするな」

「余計気にな…なりますわよ」

危うくいつものツッコミ気質でなるわ!って言いそうだったところ直前でセツィーリアに戻る

「まあまあ、セツィーリア、お父様のことは私に任せて少し外の空気を吸ってらっしゃい」

少し困ったように笑ったお母様の言葉に甘え、私はウォーレイ家の庭に出た

自分で言うのもなんだけどうちの庭はとても美しい
そりゃもうマジで美しい
庭師のトビさんとその手伝いのクロスの腕の良さが伺える庭になっているのだ

でも、自分の家だけを贔屓にしているつもりはない
現にここの庭もとても素敵だと思う

ゆっくりと周りを見渡しながら歩いていれば大きくて綺麗な噴水を見つけた
それに近づくにつれて、噴水の淵に座っている小さな人影が見えた


ふんわりとした金髪を耳の下でゆるく二つ結びをした瞳の青い女の子
雰囲気だけでも儚い印象が伺えるが噴水の水を見下ろしている姿はまさに物語の美少女ヒロインそのものだった

うわあー、めっちゃかわええ女の子居るー
なんて見惚れていたらバチッと合った視線

おおぅー!!前から顔を見てもやっぱり超絶にかわいいぞー!!

ニコッ

し、しかも微笑まれたぞー!!
こ、これはもしかしてお友達になれるんじゃ…!!

ちょっと…いや、かなりウキウキした足取りで女の子に近づけば女の子は立ち上がり私の方に身体を向けた


「な、何してるの?」

「水の上に浮かんでいる花びらを見ていたのですわ。ここ、私のお気に入りの場所ですの」

「そ、そうなんだ!」


言動もマジのかわいいお嬢様だー!!
ど、どうしよう!!久々に接する女の子だから超絶に緊張してきたんですけどー!!
な、何から喋ろう、とりあえず名前聞く?聞いちゃっていいかな??そんであわよくば友達になってもらえちゃったりなんかしちゃったりするんじゃなーい!?


「そういうあなたは何をしていたの?」

「あっ、私は少し外の空気を吸いに来たのですわ。そしたらこの素敵なお庭を見つけて、それで散歩していたらここにたどり着いたの」

「そう、私もよく散歩するわ、ここは空気が澄んでいるから」


よく散歩をするってことはよくこの家に来ているってことかな?この家の子の友達?それとも…


「ねえ、あなたのお名前を聞いても」

「でも、もう戻らなきゃ」

「あっ!そ、そうなのね!じゃ、じゃあ私もそろそろ」

「あら、ごめんなさい?伝わらなかったみたいね。私、嫌いな人と同じ空気を吸ってると思うと体調が悪化してしまうの」

名前を聞くために振り絞った勇気を途中でへし折られてもなお、めげずに一緒にパーティ会場に戻ろうとした私の言葉を、この可愛くて儚い美少女は耳を疑うようなことを言ってきた

「え。えっと、それはつまり…どういう…」

「顔と同じで頭まで間抜けなのですわね。つまり、あなたと同じ空気を吸っていたくないから私の近くに寄らないでちょうだい?という意味よ」

はっきりと言われた蔑みの衝撃が強すぎて固まる私を見て、フッと鼻で笑ってから女の子はその場から離れて行った



セツィーリア・ノワール

人生初めての女の子からの拒絶に

心が砕け散りました










だ、だいたい何が悪かったの!?何が悪かったの!?至って普通の会話だったよね!?どこもおかしいとこなかったと思うんだけど!!てか、何かしらの失言があったとしてもあそこまで言われることある!?いや、ねえよ!!

一人でぶつぶつ言いながら会場へと戻る

うう、さっきまで友達が出来るかもしれないって浮かれてた自分が恥ずかしい…!
…ていうか傷ついた…マジで本当に心が痛い…女の子に、しかも美少女に同じ空気を吸っていたくないって言われるなんて思いもしなかった……辛い…!

ていうかこれ美少女じゃなくても初対面の人からこんなこと言われたら心抉られるっつの!
ああー、もし何か誤解があったらちゃんと解きたいー!もう一度あの女の子とちゃんと話してお友達になりたいー!!

心の中で頭を抱えてのた打ち回る私だが、今はもう会場の中にいるから外面は完璧な公爵令嬢だ
広い会場の中からお父様とお母様を探す

そして思いのほか二人は早くに見つかった

なぜって?それはお父様の背が高いから






って、言いたかったけど違う


そこだけ空気が禍々しかったからだ




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