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第二章

仁義なき戦い

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三日後

キュアラちゃんは熱も下がりすっかり元気になった


療養してる間、別の部屋を用意すると言ってもシェリーはそれを断り、それこそつきっきりでキュアラちゃんの看病をしていた

いやあ兄妹愛って素晴らしい!!

ユーリに

「ユーリが熱出したら私がつきっきりで看病してあげるね!」

って言ったら


「余計に熱上がりそうだから絶対に部屋に近づいて来ないで」

と真顔のガチトーンで言われた


何がなんでもその時は毎日安眠妨害してやろうと心に誓った
お姉ちゃんを怒らせたら怖いんだからな!!


そして、元気になったキュアラちゃんとシェリーはすぐにでも今の家でもある教会に戻ろうとしたが私が「もう少しゆっくりして行ったら?ていうか居てくれないかしら?私もっとキュアラちゃんとお話ししたいわ」とワガママを言ったことでキュアラちゃんとシェリーはもう数日滞在することになった


とまあ、そんなわけでキュアラちゃんと遊ぶ時間を手に入れた私だけど

………もうやっばいよね

何がやばいかって、そりゃキュアラちゃんのかわいさに決まってんでしょーが!!
まるで鈴を転がしたようなかわいらしい声に、寝ていた時には見られなかった兄と同じハチミツ色の瞳。シェリーのフワフワ銀髪に比べてキュアラちゃんの灰色に近い銀髪はサラサラでまるで絹の糸のようだった
そしてそんなかわいらしい外見とは裏腹にキュアラちゃんは意外にも結構サバサバとした性格で見た目に反しとても活発な女の子だった
だけど言葉遣いも丁寧だし所作も綺麗で、ユーリもそうだけどこの世界の7歳児はどんだけ優秀なんだよ!と本気で神様に訴えかけたことがある


最近は専らシェリーをからかうよりキュアラちゃんと遊ぶのに時間を割いてる私
だってキュアラちゃんはあと数日で帰ってしまうのよ?!今遊ばないでいつ遊ぶんだ!!


「セツ様、もうお勉強はいいのですか?」

「えぇ、キュアラちゃんと遊ぶ為に秒で終わらせてきたわ」

「嬉しいです!キュアラもっとセツ様と一緒にいたかったの!」

「あら、ありがとう!私も同じ気持ちよ(神様!私に最大の癒しを与えてくれてありがとう…!)」


レッスンや授業を完璧にこなし残った時間で全力でキュアラちゃんとの時間を堪能する
なんと満ち足りた日々…!やっぱり女の子って最高!妹って最高!!

そんなこんなでずっとキュアラちゃんと遊んでいたら



「…………」

「…………」

「……やだ、何この空気」


我が弟が拗ねたようです



私の前で睨み合うユーリとキュアラちゃん

やばいわ、天使と天使が揃って目の前に!
どうして私の手元にカメラがないの!!


「ねえ、もう元気なんだからいい加減家に帰れば?」

「こらユーリ!女の子になんて」

「セツ姉は黙ってて」


ピシャリ!と言われてつい言われた通り黙ってしまう
あれ?なんで大人しく言うこと聞いてんの?私のがお姉ちゃんよね?


「ユーリ様、お邪魔なのは重々承知です。ですが、今帰ってしまったらセツ様との数日の約束を破る事になってしまいます。それは嫌です」

キュアラちゃん…!なんていい子!

「でも君だって住み慣れてるとこの方が落ち着けるでしょ?」

「ご心配ありがとうございます。けどキュアラは兄とセツ様が側にいれば落ち着けます」

きゃー!!なにこのかわいい生物可愛すぎるでしょ!!萌え殺す気か!!

「…シェイルスさんがいれば充分でしょ?」

「セツ様も一緒に居てくれたらもっと満足します」

「……僕の姉なんだけど」

「だからと言ってキュアラが一緒に居てはいけないということはないと思いますが?」


え、ねえ、これってもしかしてあれ?憧れのあれ的な?
私の為に争わないで的な?
大丈夫、お姉さん2人とも包み込んじゃんから!包み込んで離さないから!!


「だから2人とも私の胸に飛び込んで」

「ちょっとセツ姉は入ってこないで」

「セツ様、これはユーリ様とキュアラの戦いです」

「あっ、す、すんませんっした」


同時に怒られてしまった
ねえ、お前ら実は仲良いでしょ、実は似たもの同士でしょ!!


「なぁ、お前ら何やってんの?」

「クロス!」


後ろから声をかけてくるクロスの方に駆け寄る
あの二人はクロスに気づかずまだ喧嘩を継続中だ


「なんかねー、2人とも私のことが好きすぎるみたいでー、いやあこうもモテると困っちゃうねー!あははははは!!」

「寝言は寝て言えば?」

「寝言じゃないし、今度は本当だし、本当にあの二人私のことで喧嘩してるし、てかお前本当に酷いよね泣くよ?」

「それより旦那様が後で書斎に来いって言ってたぞ」

「無視したなまた無視したな!クロスのバカ!むっつり!マザコン!女子力高男が!」

「最後三つ意味分かんないんだけど?」

「いっ!いひゃいいひゃい!」


ちょっ!意味分かんないんなら頰っぺ引っ張るなよー!!明らかに怒ってんじゃん!!
ていうか最後の不本意だけど一応褒めたのに!!


クロスの腕をタップして降参を示す


引っ張られた頬を撫でながらクロスを睨む
こいつ最近デコピンだけじゃなく頬にも攻撃し始めたんだよね、本当に侮りがたし!


「それより早く行けば?旦那様の様子ちょっと変だったから」

「変?お父様が?」

「うん、本人はその自覚がなさそうだったけど、何かを隠してる時のお前と同じでちょっとソワソワしてるような感じがしたから」

「ねえ、そこで私を例に出す必要なくない?」

「その方が分かりやすいだろ?」

だろ?じゃねえよ
お前それ安易に私が隠し事下手って言ってるようなもんだよね?い、言っとくけど!私だって本気になれば嘘の100個や200個くらい!………いや、そんな嘘のレパートリー多くねえなうん、せいぜい30個くらいかな?あっ、やっぱ嘘、もっと…


「セツ?」

「はい!」

「また何考えてたのさ」


呆れたようなクロスの視線から逃れるように目を逸らす

「あはは、いや大したことじゃないよ!うん!それじゃあ私はお父様のとこに行くからクロスは2人のことよろしくね!止められたら喧嘩も止めて!」

「まあ…善処する」

ちょっと!何その頼りない声!!
あんたあの二人からどんだけ懐かれてるか気づいてないわけ!?相変わらず鈍いなおい!!

「とにかく!頼んだからね!」


そう釘を刺してから私はお父様の書斎へと向かった


コンコンッ


いつも通りにノックしていつも通りにエドさんが扉を開けてくれた

デスクの向こうに座ってるお父様を見ても普段と特段変わってる様子はない
顔も相変わらず厳ついままだ、相変わらず美しいのは変わりないけど



「どうしました?お父様」

「セツィーリア、アーレス兄妹が帰るのはいつだ?」

「?二日後でごさいますが」

それがどうかしたのだろうか?

「見送りをしたいか?」

「それはもちろん!シェイルスさんとならともかくキュアラちゃんとはもうなかなか会えないかもしれないですし」

何を当たり前なことを聞くんだ、と思ったけど、お父様がこういう聞き方をしてくる時って何か考えがある時なんだよね~


「なら、彼らを送り届ける際、ついでに街に寄る許可も与えよう」


何考えてんのかな~?と思っていたらお父様の口から信じられないような言葉が聞こえた

い、今なんと?
ま、街に寄る許可って……それって……!!


「また街に行っていいってこと!?」

「あぁ、前回行った時とても楽しんでいたと聞いたからな。それにキュアラ・アーレスともっと話したいのだろう?なら最後に一緒に楽しんできなさい」

あ……あ……

「どうした?嬉しくないのか?」


嬉しくない?はは………んなわけないでしょーがー!!


「お父様ああああああああ!!!!愛してます!!世界で一番愛してますわ!!お父様最高!!」


全力疾走で座ってるお父様に飛びついた
はしたない?ノンノン!今は感謝の愛を表す方が重要です!

父の首に腕を回して甘えるようにして頭をすり寄せる
「こらこら」と言いながらも父は私の背中を優しく撫でる
それが嬉しくってまたさらにギューッと抱きついた

父よ、あなたは本当に私の最高の父ですよ!


暫くお父様との抱擁を堪能した後、私を地面に降ろしたお父様は私の目線に合わせるようにしゃがんだ


「セツィーリア、二日後、街から帰ってきた後に話したいことがあるから、心の準備をしておいてくれ」

「何のお話なんですか?今じゃダメなんです?」

「いや、今はまだ…」


あー、クロスの言ってことはこれか
なるほど、確かに少々様子が変だな
いつもよりなんか歯切れが悪いし


まっいっか!今の私は絶賛孝行娘モードだからお父様を困らせるようなことはしないわ!


「分かりましたわ。じゃあ二日後にちゃんとお話を聞きますね」


笑顔でそう言った私に安心したような表情を浮かべるお父様
良かった良かった、とりあえず安心はしてくれたね

……にしても、本当に話ってなんだろ…
それが分かんなきゃ心の準備も何もないってのにね~
ていうか心の準備をするほどの話ってなんだし、お父様の様子だと結構重要案件っぽいけど……うーん…


「それじゃあ、私はこれで失礼しますね」


疑問に思っていることを面に出さないように私は完璧なお嬢様笑顔を浮かべて退室した


二日後の話の内容は確かに気になるけど


とりあえず今は



「この嬉しい知らせをキュアラちゃんに伝えなきゃ!」


そう呟きながら私は早足でキュアラちゃん達の元へ戻った










「なんなの?あんた、セツ姉のこと独り占めしすぎ」

「それでは兄と2人でセツ様と過ごします」

「もっとダメに決まってるでしょ!?…あんたの魂胆は見え見えだから」

「何のことでしょう?」

「とぼけないでよ。シェイルスさんとセツ姉をくっつけようとしてるんでしょ?」

「そこまで分かっているのなら話は早い。それならこちらの方からも、セツ様はユーリ様の姉君なのだから、もう少し抑えたらいかがです?何かは…言わなくてもユーリ様なら分かりますよね?」

「……へえ、やっぱり気付いてたんだ。ていうか、そんなことあんたに言われる筋合いないから。これは僕とセツ姉のことだ。他人に口出しされたくないね」

「それなら兄とセツ様のことにも口出しをしないでくださいね?」

「そもそもシェイルスさんがセツ姉を好きかも分かんないのになんであんたがそんな張り切ってるわけ?」

「あなたも薄々うちの兄がセツ様に少なからず好意を持っていると感じたからこんなに焦っているのでは?」

「あんたこそ、自分のやってることが全部ただの余計なお世話だってまだ気づかないわけ?」

「…………」

「…………」




傍観者Kは語る


「あいつらセツが居なくなってからもずっとあの調子とか…実は仲良いだろ…めっちゃ睨み合ってるけど。…一体何の話してんだ?」



結局セツが嬉々として戻ってくるまで、2人の仁義なき戦いは続いた





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