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第一章
夜
しおりを挟む夜、なんだか寝苦しくて目が覚めた
いつもは絶対朝まで起きないのに珍しいこともあるもんだと思いながら、起きたついでにトイレにでも行こうと部屋を出た
用を済まして半分寝ぼけながら部屋に戻ろうとすれば、行きの時には気づかなかった何かの声が聞こえた
辺りを見渡しても長い長い廊下には私一人しかいない
なんだ?とさらにキョロキョロすれば、私がいたそこがユーリの部屋の前だと気づいた
そして良く見れば僅かにユーリの部屋の扉が開いている
そうっと近づけばやっぱりさっき聞こえた声はユーリの部屋から聞こえたものみたいだ
誰かと話してるのかな?でも、こんな夜に?
ちょっと罪悪感に苛まれたけど私はついつい隙間に耳を当ててユーリが何を言っているのか聞き取ろうとした
「……な…い……め……さ……な……」
んー、よく聞こえないー!あ、あともうちょい!!
集中できるように目を閉じてさらに気持ち前のめりになりながら聞き耳を立てた
「………なさい……めんなさ…」
「…?……!!」
この時私は珍しく夜に起きた自分を褒めてあげたいと思った
だって
「……ん……ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「ユーリ…!!」
こんな状態のユーリを一人にしなくて済んだのだから
慌ててユーリの部屋に飛び込めばベッドの上に彼の姿はなかった
ど、どこ!?と焦って周りを見渡せば案外早くに見つかった
ベッドを背にユーリは毛布に包まって床でうずくまっていたのだ
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「ユーリ、ユーリ!!」
いくら呼びかけても謝るのをやめないユーリ
ていうか、私に気づいてない…?
「ユーリ、しっかりして!!私よ!セツィーリアよ!!」
とりあえずユーリの上半身だけを起こしてから肩を掴む
されるがままのユーリだけど謝罪の言葉は止まらないし、どんなにユーリの手を取ろうとしてもその手はユーリの耳から離れようとしない
どうしようどうしようどうしよう!!何か、私に何か出来ることは!?
ユーリは今何も目に入っていないし何も聞こえていない
一人で闇に怯えている
私がそんなユーリを助けてあげられる方法は!!?
頭がこんがらがってくる
怯えるユーリに私は何もしてあげられないの?どうすることも、出来ないって言うの?
私はお姉ちゃんなのに……ユーリは私の大切な弟なのに!!
「ユーリ!!」
「!!…ごめん、なさい、ごめんなさい」
そして私は気づいたらユーリを抱きしめていた
震えるユーリの身体をこれでもかってくらい強く抱きしめて少しでも震えをなくそうと
「大丈夫大丈夫、ここにユーリを責める人はいない、あなたを傷つける人もいない。ここにいるのはあなたを愛してる人しかいないわ」
「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい」
「大丈夫、大丈夫だからね」
頭を撫でて、背中を撫でて
ごめんなさいを繰り返すユーリに私はただひたすらに大丈夫と言い続けていた
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