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第一章

笑う門に福来る?

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どのくらい走ったのだろう
とにかく二人共息が上がるくらい走って止まった後

顔を見合わせて


「…ぷっ」

「ふっ」

「ふははははははは!!!」

「あははははははは!!!」


二人して大笑いを始めた


こんなに大声を上げて笑ったことなんて今までなかった
クロスと過ごしてるときだってなかったんだ、だってそこは家だったから
いくらクロスしかいないからって公爵家のお嬢様にこんな笑い方は許されない

でもここだと違う
いくら笑ってもいいし、お嬢様言葉だって使わなくてもいい
決して家が嫌いなわけでも今の生活が嫌というわけではない、ただたまにはこうして普通の女の子に戻りたいって思っただけ


おなかを抱えて笑う私と笑いを必死にこらえようと口を押さえてはいるが身体がぷるぷる震えているその子

「もー!何こらえてるの!ここは思いっきり笑っていいんだよ、さっきみたいにね!」

バシッと軽くその子の背中を叩いてから数秒して


「ふはっ…ははははは」

「ニッシシシシシ!!そうそう、子供はそうやって笑ってるのが一番いいんだよ!」


それからしばらく、私達はずっと笑っていた
何かの箍が外れたかのように、今まで笑えなかった分まで笑うように




少しして二人共落ち着き始めた頃

さて、次はどこ行こうかと再びその子の手を引いて歩き出そうとしたその時


「ん?あれ?どうしたの?」


その子は私と手をつないだままその場から動こうとしなかった
もしかしてさっき走ったときにどこか痛めたとか?!そう思って慌ててその子の身体を触るけどどうやら怪我はしていないみたいだった
でも、怪我じゃないならなんだろう?

さっきまでずっと黙って私について来てくれていたから少なからず私はびっくりしていたのだ


そしてさらにびっくりすることとなった





「少し、僕の話を聞いてくれないかな?」


フードの下から天使みたいな美少女が表れたからだ




目を見張る私を今度はその子が先導して引っ張っていく
そしてたどり着いたのは市場内にある小さな噴水で、そこは私とミリアーナさんが決めていた合流場所にとても近いところだった

噴水の淵に二人で腰掛ける
さっきまでびっくりして何も考えられなかったけど改めて隣に座っている美少女を見る

声はどちらかというと低く、男の子寄りだったけど女の子にも普通にいるレベルで、私がその子を女の子と判断した理由は首につかないくらいに伸ばされた髪だった

光が当たることによって淡くきらきらと光る金色の髪、エメラルドのような輝きを放つ瞳
ただでさえかわいらしく整っている顔なのに、目下の泣きボクロはさらにその子のかわいさを引き立て、そして色気をも与えていた



そう言えば、最初に喋った時確か僕って言ってたけど、この世界にも僕っ子っているんだね



私が見ているということには気づいているだろう
でも、その子はずっと地面を見つめていた
そして、何かを決心したかのように前を向いてポツリと呟いた



「僕は迷子なんかじゃない、ただの弱虫だよ」




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