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第35話 願いの果て
しおりを挟む私もH病院で緊急処置を終えたが、危ない状態には変わりなかったので、そのままT総合病院に救急搬送で運ばれる
ひろちゃんは先に運ばれ緊急手術は成功してなんとか一命を取り止めてたが、意識は回復しないままずっとICUで寝たきりになっていた
事故での損傷が酷かった為、私もひろちゃんも、その後に何度も手術が繰り返されていた
しかし、時間だけが経過して行くが、私達は寝たきりで意識もなくお互いとなり通し、植物状態で眼覚める事はない
私達は同じ病室の中で仲良くベッドを並べていた
そんな状態の私はずっと、ずっと、ずっと……
夢を観ている
でも本当にそれが夢なのかどうかが、分からない
夢だと思ってる方が夢なのか
それもまた夢なのか
ひろちゃんと過ごした事も夢なのか
事故に遭ったのも夢なのか
夢がまた夢なのか
でも、はっきりしているのは私達2人は互いに愛し合っている
それは紛れもない事実!!
ああぁぁーーー
ひろちゃん、ひろちゃん、ひろちゃん、ひろちゃん、ひろちゃん、ひろちゃん、ひろちゃん、ひろちゃん、ひろちゃん、ひろちゃん、ひろちゃん、ひろちゃん、ひろちゃん、ひろちゃん、ひろちゃん……
会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたい……
看護師が異変に気付きすぐに駆け付ける!
「血圧、心拍ともに上昇しています!」
「脳波に異常あり!!」
周りにあるモニターと、計器から警告音が煩く鳴り響く!
「すぐに先生を呼んで!!やっぱり今年もこの日に計器が異常を起こしたわね」
「不思議ですね?何で毎年毎年この日になるとこの患者さんの計器に異常をきたすのでしょうか」
すると隣のベッドの計器にも異常が起こる
「えっ!!師長!隣の伊藤さんの脳波と心拍の計器の数値に異常反応があります!!」
「えっ⁉︎何故⁉︎・・・なんで今年に限って2人一緒に反応するの?」
病室のベッドの上に寝ていた私は眼を覚ます
「師長!!吉井さんの意識が戻りました!!」
「えっ?嘘!すぐに先生を呼んできて!!」
「はいっ、分かりました!」
今、私がいる場所が何処なのか、分からない!
夢か現実かも分からない
ただひたすら愛している、ひろちゃんと一緒にいたい想いだけが胸の奥から溢れてくる
会いたい、抱きしめられたい
私の眼から、大粒の涙が溢れてくる
涙を拭おうとして、左手の薬指につけてある指輪に視線がいき、涙が止まらな状態でそのまま左手を伸ばし天井を眺めて何かを掴もうとする
その時
「えっ⁉︎伊藤さんも意識が戻った?」
あぁ、隣にひろちゃんがいる
私の愛する人!!
「み…ぃさ…ぁとぉ」
気管挿入されてあってもその声は決して忘れない
弱々しい声だったが間違いなくひろちゃんの声、そのものだった
『ひぃ…ろ…ちゃん』
私は伸ばしていた手をひろちゃんがいる方へと差しのべる
それに気づいたひろちゃんも私の手を掴もうと必死に手を伸ばす
お互いの目が合い、どのくらいの年月が経過したのか分からないが、私達はおじいちゃんおばあちゃんになっていた
近くにいる看護師さんが、気づかってくれて互いのベッドを近づけ、ようやく私はひろちゃんの手を握ることが出来た
「みぃ…さ…ぁと…お…あい…しぃ…て…る…ぅ」
『う…ん……わ…た……し…も……よ…ひ…ろ…ぉちゃ……ぁ…ん』
その直後、私達の身体をまばゆい光りが包むと、ずっと鳴り続けていたあらゆる計器の警告音が鳴り止み、静寂な空間が漂う……
伊藤 弘 享年89歳
吉井 美里 享年89歳
10月7日、死亡が確認されるが、この日は2人の誕生日であり、過去に結婚する日にちでもあった
吉井 美里は21歳の時の事故で植物状態となった
その年の10月7日が2人の結婚記念日になるはずだったが、不慮の事故に遭い乗っていた2人は同じ病院に運ばれ2人とも植物状態となる
その後、毎年10月7日に限り吉井美里の計器が異常をきたしていた
そして吉井美里は何度も何度も、結末が変わらない、変えられない未来を繰り返し繰り返し過ごしきていた
2人が事故に遭う現実は変えられなかったが、2人が一緒に生き延びた現実世界が初めて起こり、最後は仲良く互いが手を繋ぎ、幸せにこの世を旅立つ事が出来た
完結
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