儚き願い

I&Rin

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第5話 キス

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 伊藤君と付き合う事となり、仮ではあるが友達以上恋人未満での条件付きの交際が始まった

 お互いまだ慣れない関係性であるため、どことなく遠慮がしがちの初々しい感じが見て取れる

 
 最初の1週間、お互いの呼び方はまだ伊藤君、吉井さんでの呼び名で呼びあっていた

 部活が終わると私は伊藤君と一緒に帰る約束をして、2人が決めた待ち合わせの場所で待つようにしていた

 どうしても伊藤君が私を駅迄送りたいと言うもんだから・・・・・私はちゃんとお断りしたんだよ!


 間違っても私がお願いした訳ではない!

 逆に私は伊藤君が遠回りになるから無理しないでと言ったくらいだ!

 それでも俺が送りたいから送らせてと言われてしまえば、そりゃあ、もう伊藤君の意見を尊重して好きなようにさせるしかなかった

 そんな流れで部活が終わってから一緒に帰るようになってしまったのだ


 私と伊藤君が合流すると、そこから一緒に帰るため、私が歩く隣りで伊藤君がチャリを押しながら駅まで送ってくれる

 駅に向かう途中で必ず神社に寄り道してるんだが、その場所は伊藤君が私に告った場所でもあり、お互い想いがある御神木の前にある石の上に座ってからその日の出来事であったり、部活の事やお互いの事を話していた

 30分位はお喋りをしただろうか、私と伊藤君の会話が一旦途切れると、伊藤君があたりを気にしだしキョロキョロしている


 そんな伊藤君を見て何があったのかなと真横で見ていたら、急に私の方を向き、目が合う

 そのまま伊藤君は私を見つめながらゆっくりと顔が近づく


 流石に疎い私でもそりゃあ気付きましたよ

 伊藤君が私に何をしようとしたか

 別に悪い気もしなかったので、このまま身を委ねましたよ


 近づく伊藤君の目を見続けたまま、私はゆっくりと目を閉じました

 当然、私にしたらこれが初めてのキスでした

 なかなか目を開ける事もできず、唇と唇が触れ合う柔らかい感触と温もりだけはしっかりと感じ取ることができた

 誰かが言っていた事を思い出す

 ファーストキスの味はレモンだのイチゴの味だったと

 そんな味の事などわかるか!!

 時間にして数秒位しか経ってないんだろうが、私が感じた時間で言えばそれこそ1分位の体感だった

 しかも御神木の前

 伊藤君が「そろそろ駅に向かおうか」と言ったので

 それから私達は駅に向かうが、しどろもどろとした時間で伊藤君が話してる内容が全然頭に入ってこなかった

 それは多分、伊藤君も一緒だったと思う


 神社から駅まで移動してる途中急に思い出したかのように2人で顔を合わせて

 チャリ!!

 慌てた伊藤君は全力でチャリを取りに行き、すぐに戻って来ると再び私と駅に向かった

 この日は伊藤君とまだまだ一緒にいたかったが、電車がホームに着き扉が開いたので、私が乗り込もうとした瞬間に伊藤君に呼び止められ不意にキスをされてしまった! 


 「じゃあまた明日ね!吉井さん」

 最後の別れ際に伊藤君が私にキスをした後、電車の扉が閉まりそのまま笑顔で私を見送ってくれた
 

 

 









 
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