妖精の君を愛してやまない

髙橋 ななし

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二人と三人

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 中庭の真ん中に大樹があり、その周りにベンチがいくつか無造作に置いてあった。

 そのベンチも大きく余裕で四人が座れる程だが、男子生徒二人で持てば移動できる重さなので、毎回使われる際に動かされているのだろう。

 外に出ると、千冬が前を歩き校舎側のベンチへ向かった。だが座ることはせず、校舎を囲うように作られている高い花壇に腰掛けた。

 私は千冬に近付いてその横にお弁当箱を置いてから、ベンチを移動しようと数歩戻る。

 片方の肘置きを持つと慌ててアリアがもう片方を持った。

「ははは、アリアには重たいんじゃないかな?」

「大丈夫です!アリアこう見えて力持ちなんですよ~」

 そうは言っても全然持ち上げられていない。自分の持ってる方を少し花壇へ近付けておろす。

「まぁ、こんなもんで良いよね」

 千冬が座っている横に腰を掛けると「お疲れ」と小さく労ってくれた。

 すると私の真横にアリアが座って礼を言った。

「颯人くん、ありがとうございます!」

「いいよ気にしないで、それよりアリアはこっちで良いの?制服汚れちゃうよ」

「良いんですよ、あの二人はあの二人でそっとしておきたいんです」

 言われてから顔をあげると、高広も萌も何かを話しながら随分とゆっくり歩いていた。

 なるほど。あの二人はそういう仲か、これからそうなる仲なのだろう。

 アリアは気を遣って二人きりにさせたいが、向こうがアリアを一人にさせたくないのだと。






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