妖精の君を愛してやまない

髙橋 ななし

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女と男

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 教室から出て行った千冬を足早に追いかける。

 他人から「俺がお前を女にする」なんて言われたら誰だって嫌だろう。

 やっと追い付くと、あえて関係のない話をふる。

「お腹空いたから肉マン食べて帰ろう?」

 すると千冬は止まって私を見る「ん?」と首をかしげると、はちみつ色の瞳が少し和らいだ。

「あぁ、お前の奢りな」

 口角を上げた千冬が私の背中をバンと叩いて言う。「いいよ」と答える。君が笑ってくれるなら何個でも買ってあげたいと思った。

 コンビニの前で二人して肉マンを頬張る。

 出会った時、千冬は異様に自分の性を気にしていた。自分のことをうちと言ったりボクと言ったり、暫くの間それは定まらなかった。

 小学校に上がり、周りの男子が『俺』を使い始めると、千冬も焦りを見せながらたどたどしく自分を『俺』と呼び始めた。

 一人称なんて一つの『呼び名』に過ぎない、何を使っても良いという思いを伝えたくて、あえて私は『私』を使うことにした。

 それ以降千冬も自然に『俺』と言えるようになった。

 今まで気にしたことは無かった。君が女になろうが男になろうが、例えどちらにならなくても変わらず仲良く友達で居続けたいと思う。

 ふと頭を過った、君は無性別で有ることを理由に告白を断った。本当は恋愛に興味が無いんじゃなくて我慢しているのでは?

 もしかしたら好きな人が居たのに、自分の性ゆえその気持ちを押さえ込んだのではないか?

「千冬はいつ、女か男になるんだろうね」

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