妖精の君を愛してやまない

髙橋 ななし

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不安と信用

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 今日はアラームより先に目が覚めた。

 すぐに着替えてコートとマフラーを手にする。

 結果発表の日、バスの中であんパンを噛りながら自己採点した問題用紙を睨む。

 受かってるはず、点数は足りてる。というより結構良い点を取ってる。面接も噛まずにハキハキと言えた、大丈夫。自分に言い聞かせる。

 貼り出された受験番号を探す自分を想像していたが、現実は意外と単純で、名前と番号が書かれた封筒を手渡されただけ。

 恐る恐る中を見ると無事『合格』の文字。

 胸を撫で下ろすとすぐに、合格者が体育館に集まるようアナウンスが流れた。入学までの段取りを説明するらしい。




 ____




 中学へ向かうと君は花壇に腰掛けて私を待っていた。

「千冬お待たせ!」

「おう、行こうか」

 私を見るとすぐに立ち上がって前を歩く。

「私の結果訊かないの?」

「合格でしょ? あんなに頑張ってた颯人が落ちる訳ねーし」

 嬉しくて涙が出そうになる。

「ありがとう」

「良かったな」

「先輩!」

 話してると校内から声が聞こえた。

 お互い顔を見合わせるが知らないと首をふる。

 女子二人が駆け寄って来ると、一人がもじもじとしながら言う。

「あの、少しいいですか?」

 千冬が私の背中を押して「行ってきな」と言うと、女の子が直ぐに訂正した。

「あ、えっと、く、葛葉先輩に、用があるのです」


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