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第二章 魔導士学園 編
この異世界の住人はTPOをわきまえない
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やはり俺のせいで遺跡内の冒険者たちが危機に陥っている様だった。いや、はっきりと俺が原因と決まったわけではないのだが、俺の見える範囲だけでも助けを求めている者達は救わねばならない気がした。
そして、なんとかエルナトの要請のもとその仲間たちを助ける事ができて俺はホッとしていた。
しかし、その後に問題が生じてしまったのだ。
アスカが家に帰りたいと愚図りだしたのだ。まだ、変な黒い物体以外何も遺跡での収穫物がないというのにだ………
そして早く帰りたいために、とんでもない事を言い始めた。冒険者たちに潜む暗殺者をこの場で捕まえると言い出したのだ。
いくら俺が『アバロン』で見事なアシストをして犯人を追い込んだといえども、今回は何も気づく事ができなかった。それなのにアーサーも対抗して暗殺者を探し始めた。
「やっぱり、アスカには頼ってられないにゃ。あっちには全て謎が解けているにゃ。あいつにゃ。あいつが怪しいにゃ。」
アーサーはリゲルの近くにいた男を指さした。
俺とアスカとエルナトはアーサーが指さす方を向いた。
「いや。それはないわ。彼はリゲルの側近でかなり長く仕えているのよ。彼が裏切っているなんて考えられないわ。」
エルナトは否定した。
「ちなみにその根拠はなんなんだ?」
俺はアーサーに聞いた。
「顔にゃ。あの顔は裏切り者の顔にゃ。」
「馬鹿。声がでかい。」
俺はアーサーの口を塞いだ。根拠が顔って失礼にも程がある。
「だからバカ猫は黙ってればいいのよ。私にかかればこんなもの事件でも何でもないわ。」
俺は気が済むまで見守るしかなかった。多分、傍で聞いていたエルナトも同じ心境だっただろう。
俺は半信半疑だったため気を抜いていた。その時である。
「………ッ!!! コロス、殺す、ころーす!!!!!」
集団の中から突然一人の男が奇声を上げながら飛び出て来たのだ。明らかにリゲルの方向へと向かおうとしていた。
リゲルは身構えた。そして、俺が助けに飛び出ようとしたその時、飛び出した男を水の玉が覆いつくした。水球に捕らわれた男は水の中でもがいて外に出ようとするが、水の中心から動くことはなかった。
その魔法はアスカが唱えたものだった。
「どう、私が暗殺犯を捕まえたわよ。アンタの推理はやっぱり違ったみたいね。」
アスカは片手で水球をコントロールしながら得意気な表情でそう言った。その捉えるスピードは尋常ではないほどの速さだったと言える。
飛び出してきたのを視認してから詠唱した事を考えれば、圧倒的な反射速度と詠唱速度なのだ。アスカの能力に俺は驚きを隠せなかった。
俺が呆気に取られているとアスカは続けて言った。
「まだいるかもしれないわね。警戒しておいた方がいいわ。」
その言葉に俺は我に返った。しかし、今のを見てこの場でリゲルを暗殺しよう等と考えるだろうか。そもそもこんな衆人環視の中で殺しを行うなど暗殺とは程遠い事だった。暗殺犯ではない、ただの異常者かジャンキーだ。
「何だ? 何が起きたのだ?」
リゲルは水球に捕まった男を見て誰ともなく尋ねた。
「残念ながら貴方の命を狙ったのだと思います。この少女が未然に防いでくれました。」
エルナトはそれに答えた。
「この者に話を聞かせてくれないか。誰の差し金か聞きたいんだが。」
リゲルはアスカに頼んだ。
「できるわよ。じゃあ、魔法を解くわね。」
アスカが水球の魔法を解除しようとした時、アーサーが指さした男がそれを止めた。
「いけません。皇子。このまま気絶させましょう。そして帝国に連れ帰ってから吐かせた方が安全です。」
その男は提案した。
「それもそうか………では、死なないように気絶させてもらえないだろうか。」
リゲルはアスカにお願いした。
「分かったわ。」
「皇子。敵が見えなくなったと言えど気を引き締めてください。剣はいつでも抜ける体勢を。」
エルナトはリゲルに進言した。リゲルは頷いて剣に右手を置いた。
それを見たアーサーの指摘した側近も声をかけた。
「これで安全ですな。それにしてもこんなところで殺そうとす………殺そう………こryoーす!!!!」
は? なんで?
「やっぱりにゃーーー。あっちの言った事は正しかったにゃーーー。」
アーサーは叫んだ。
側近とやらの男はいきなり剣を取り、上段からリゲルに切りかかったのだ。
それをリゲルは剣で受け止める。
「ブルータス、お前もか………」
リゲルは顔を歪めて呟いた。
俺は訳が分からなかったが乱心した側近の後ろに回り首に手刀を叩きこんだ。
その一撃を食らった男はその場に崩れ落ちた。
「す、すまない………なぜ、ブルータスが………」
リゲルは信頼していた側近に裏切られ呆然自失となっていた。エルナトを見ると同様の顔をしていた。
「やっぱりあっちの推理は正しかったにゃ。バカって言った事謝るにゃ。」
場の空気を読めないアーサーはアスカを問い詰めた。
「はぁ~? あんたのは偶然でしょ。」
「違うにゃ。これは後に語られる事になる『名探偵アーサー最初の事件』にゃ。メモにゃ。メモしておくにゃ。」
「まぁいいわ。事件はこれで終わったかは分からないわね。二度ある事は三度あるっていうわ。」
アスカは不穏な事を口にした。
今度はすぐに対処できるように身構えた。しかし、その時は一向に訪れることはなかった。
「どうやらもう大丈夫なんじゃないかしら。それで、お礼なんだけど・・・そうね。なんか美味しいものをいっぱい送って頂戴。アンタの国でしか取れない素材とかがいいわ。『浮遊石』と一緒にでいいわ。」
アスカはエルナトに謝礼を要求していた。
「そんなものでいいの? 分かったわ。」
エルナトは要求を2つ返事で了解した。
それから俺達はリゲル達と別れ、カイン達と合流した。
「どうだった? 目当てのものはあったか?」
俺はカインに聞いた。
「ああ。『賢者の石』が見つかった。それにいろいろな薬品も見つかったな。ひとまず持てるだけ持って来たんだが、アーサーに持ってもらえないか?」
「分かった。」
俺はアーサーの亜空間の中にそれらを全てしまった。
「そっちはどうだった?」
カインは俺に聞いた。
「無事救出できたよ。そう言えば『浮遊石』をもらえることになったぞ。」
「何? 本当か? この遺跡に『浮遊石』があったのか?」
カインは興奮していた。『浮遊石』は『賢者の石』よりも価値が高いのだろうか。
「いや。助けたお礼に国にある『浮遊石』を分けてくれることになった。」
「そ、そうか………」
カインは何か言いたそうにしていたが何も言わなかった。
「やるよ。俺には『浮遊石』は必要ないからな。」
「本当か? ありがとう。恩に着るぞ。この借りは必ず返す。」
カインは俺を抱いて喜んだ。
「アギラはいい奴にゃ。今なら抱かれてもいいにゃ。」
ミネットはギャグをかました………ギャグ………だよな………
「見直シマシタ。ヒトトシテの感性がアッタノデスね。」
あれっ、ゼロの俺の評価ってそんなに低かったの??
「薬品が置いてあるところにアギラも行くか。呪いに関するものがあるかもしれんぞ。」
カインは俺達を薬品が見つかった場所へと案内した。
俺はそこにある薬品を手に取りながら、瓶に書かれているラベルを読んだ。
『マグナタイト』、『エーテリア』、『パララフェナジン』、『テトラニチン』、『コカテロール』………
俺はラベルを確認した後アーサーの亜空間に入れていったのだが、ある事に気付いてしまったのだ。
その薬品がどのような効用をもたらすか全く分からないのだ。『ポーション』とか『エリクサー』とかなら回復系だと分かるのだが、そんなものは一切ないのである。
ここにあるのを持って帰ったして、一つ一つ効用を確かめる………そんな事ができるのだろうか………この膨大な量の薬品を・・・まして混ぜ合わせる事も考えれば、その組み合わせは俺の一生で調べる量を超えているのではないだろうか。
俺は薬品が見つかればその効用が分かると思っていたが、現実はそんな甘いものではなかったのだ。
あらかた置いてある薬品を全てアーサーの亜空間に収納した時、カインが俺に話しかけた。
「どうする? 俺達は目的を達したからこれで帰ろうと思うが、さらに下の階層に進むか? アギラが行くなら俺達も行くが。」
どうするか迷った。これ以上薬品を発見したところであまり意味がないように思えたのだ。アスカも異常なほどに早く帰るように急かしてくる。
さらに『 聖光魔浄陣 』という魔力を大幅に使う光魔法はもう使わないようにと俺の体の事も心配してくれているのだ。実際はまだまだ余裕だったが、あまりにも心配して何度も言うので俺はなんだか申し訳ない気がした。
「そうだな………帰るか………」
俺達は遺跡から帰還する事にした。
帰る遺跡の途中で一人の男が瀕死の重傷を負って倒れていた。俺はアーサーから師匠から貰った薬を出させ、その者を救ってあげた。
話を聞くとその男はバロワ商会に雇われた冒険者で、商会のものと一緒にこの遺跡に来ていたらしい。それがいきなり裏切られて後ろから襲われたという事だった。
「あいつらは、最初から裏切るつもりだったんだ。そして遺跡で見つかったものを自分たちのものにして、俺に報酬を払うつもりなんてなかったんだ。きっとそうに違いない。」
「それは不幸でしたね。あと少しで出口というところで裏切られるなんて。」
俺はその男に同情した。
「いや。それが………遺跡から帰ってきたところではなくて、今から遺跡に入ろうとしたところで、いきなり後ろからグサッさ。あいつら何を考えているのかさっぱりわからねぇ。あんな奴らの依頼を受けちまって後悔しかねぇぜ。」
入り口で裏切って殺すって………何のためにこの男を雇ったんだ………
俺はこの異世界の住人達の行動に覚えようのない恐怖を感じた………
そして、なんとかエルナトの要請のもとその仲間たちを助ける事ができて俺はホッとしていた。
しかし、その後に問題が生じてしまったのだ。
アスカが家に帰りたいと愚図りだしたのだ。まだ、変な黒い物体以外何も遺跡での収穫物がないというのにだ………
そして早く帰りたいために、とんでもない事を言い始めた。冒険者たちに潜む暗殺者をこの場で捕まえると言い出したのだ。
いくら俺が『アバロン』で見事なアシストをして犯人を追い込んだといえども、今回は何も気づく事ができなかった。それなのにアーサーも対抗して暗殺者を探し始めた。
「やっぱり、アスカには頼ってられないにゃ。あっちには全て謎が解けているにゃ。あいつにゃ。あいつが怪しいにゃ。」
アーサーはリゲルの近くにいた男を指さした。
俺とアスカとエルナトはアーサーが指さす方を向いた。
「いや。それはないわ。彼はリゲルの側近でかなり長く仕えているのよ。彼が裏切っているなんて考えられないわ。」
エルナトは否定した。
「ちなみにその根拠はなんなんだ?」
俺はアーサーに聞いた。
「顔にゃ。あの顔は裏切り者の顔にゃ。」
「馬鹿。声がでかい。」
俺はアーサーの口を塞いだ。根拠が顔って失礼にも程がある。
「だからバカ猫は黙ってればいいのよ。私にかかればこんなもの事件でも何でもないわ。」
俺は気が済むまで見守るしかなかった。多分、傍で聞いていたエルナトも同じ心境だっただろう。
俺は半信半疑だったため気を抜いていた。その時である。
「………ッ!!! コロス、殺す、ころーす!!!!!」
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リゲルは身構えた。そして、俺が助けに飛び出ようとしたその時、飛び出した男を水の玉が覆いつくした。水球に捕らわれた男は水の中でもがいて外に出ようとするが、水の中心から動くことはなかった。
その魔法はアスカが唱えたものだった。
「どう、私が暗殺犯を捕まえたわよ。アンタの推理はやっぱり違ったみたいね。」
アスカは片手で水球をコントロールしながら得意気な表情でそう言った。その捉えるスピードは尋常ではないほどの速さだったと言える。
飛び出してきたのを視認してから詠唱した事を考えれば、圧倒的な反射速度と詠唱速度なのだ。アスカの能力に俺は驚きを隠せなかった。
俺が呆気に取られているとアスカは続けて言った。
「まだいるかもしれないわね。警戒しておいた方がいいわ。」
その言葉に俺は我に返った。しかし、今のを見てこの場でリゲルを暗殺しよう等と考えるだろうか。そもそもこんな衆人環視の中で殺しを行うなど暗殺とは程遠い事だった。暗殺犯ではない、ただの異常者かジャンキーだ。
「何だ? 何が起きたのだ?」
リゲルは水球に捕まった男を見て誰ともなく尋ねた。
「残念ながら貴方の命を狙ったのだと思います。この少女が未然に防いでくれました。」
エルナトはそれに答えた。
「この者に話を聞かせてくれないか。誰の差し金か聞きたいんだが。」
リゲルはアスカに頼んだ。
「できるわよ。じゃあ、魔法を解くわね。」
アスカが水球の魔法を解除しようとした時、アーサーが指さした男がそれを止めた。
「いけません。皇子。このまま気絶させましょう。そして帝国に連れ帰ってから吐かせた方が安全です。」
その男は提案した。
「それもそうか………では、死なないように気絶させてもらえないだろうか。」
リゲルはアスカにお願いした。
「分かったわ。」
「皇子。敵が見えなくなったと言えど気を引き締めてください。剣はいつでも抜ける体勢を。」
エルナトはリゲルに進言した。リゲルは頷いて剣に右手を置いた。
それを見たアーサーの指摘した側近も声をかけた。
「これで安全ですな。それにしてもこんなところで殺そうとす………殺そう………こryoーす!!!!」
は? なんで?
「やっぱりにゃーーー。あっちの言った事は正しかったにゃーーー。」
アーサーは叫んだ。
側近とやらの男はいきなり剣を取り、上段からリゲルに切りかかったのだ。
それをリゲルは剣で受け止める。
「ブルータス、お前もか………」
リゲルは顔を歪めて呟いた。
俺は訳が分からなかったが乱心した側近の後ろに回り首に手刀を叩きこんだ。
その一撃を食らった男はその場に崩れ落ちた。
「す、すまない………なぜ、ブルータスが………」
リゲルは信頼していた側近に裏切られ呆然自失となっていた。エルナトを見ると同様の顔をしていた。
「やっぱりあっちの推理は正しかったにゃ。バカって言った事謝るにゃ。」
場の空気を読めないアーサーはアスカを問い詰めた。
「はぁ~? あんたのは偶然でしょ。」
「違うにゃ。これは後に語られる事になる『名探偵アーサー最初の事件』にゃ。メモにゃ。メモしておくにゃ。」
「まぁいいわ。事件はこれで終わったかは分からないわね。二度ある事は三度あるっていうわ。」
アスカは不穏な事を口にした。
今度はすぐに対処できるように身構えた。しかし、その時は一向に訪れることはなかった。
「どうやらもう大丈夫なんじゃないかしら。それで、お礼なんだけど・・・そうね。なんか美味しいものをいっぱい送って頂戴。アンタの国でしか取れない素材とかがいいわ。『浮遊石』と一緒にでいいわ。」
アスカはエルナトに謝礼を要求していた。
「そんなものでいいの? 分かったわ。」
エルナトは要求を2つ返事で了解した。
それから俺達はリゲル達と別れ、カイン達と合流した。
「どうだった? 目当てのものはあったか?」
俺はカインに聞いた。
「ああ。『賢者の石』が見つかった。それにいろいろな薬品も見つかったな。ひとまず持てるだけ持って来たんだが、アーサーに持ってもらえないか?」
「分かった。」
俺はアーサーの亜空間の中にそれらを全てしまった。
「そっちはどうだった?」
カインは俺に聞いた。
「無事救出できたよ。そう言えば『浮遊石』をもらえることになったぞ。」
「何? 本当か? この遺跡に『浮遊石』があったのか?」
カインは興奮していた。『浮遊石』は『賢者の石』よりも価値が高いのだろうか。
「いや。助けたお礼に国にある『浮遊石』を分けてくれることになった。」
「そ、そうか………」
カインは何か言いたそうにしていたが何も言わなかった。
「やるよ。俺には『浮遊石』は必要ないからな。」
「本当か? ありがとう。恩に着るぞ。この借りは必ず返す。」
カインは俺を抱いて喜んだ。
「アギラはいい奴にゃ。今なら抱かれてもいいにゃ。」
ミネットはギャグをかました………ギャグ………だよな………
「見直シマシタ。ヒトトシテの感性がアッタノデスね。」
あれっ、ゼロの俺の評価ってそんなに低かったの??
「薬品が置いてあるところにアギラも行くか。呪いに関するものがあるかもしれんぞ。」
カインは俺達を薬品が見つかった場所へと案内した。
俺はそこにある薬品を手に取りながら、瓶に書かれているラベルを読んだ。
『マグナタイト』、『エーテリア』、『パララフェナジン』、『テトラニチン』、『コカテロール』………
俺はラベルを確認した後アーサーの亜空間に入れていったのだが、ある事に気付いてしまったのだ。
その薬品がどのような効用をもたらすか全く分からないのだ。『ポーション』とか『エリクサー』とかなら回復系だと分かるのだが、そんなものは一切ないのである。
ここにあるのを持って帰ったして、一つ一つ効用を確かめる………そんな事ができるのだろうか………この膨大な量の薬品を・・・まして混ぜ合わせる事も考えれば、その組み合わせは俺の一生で調べる量を超えているのではないだろうか。
俺は薬品が見つかればその効用が分かると思っていたが、現実はそんな甘いものではなかったのだ。
あらかた置いてある薬品を全てアーサーの亜空間に収納した時、カインが俺に話しかけた。
「どうする? 俺達は目的を達したからこれで帰ろうと思うが、さらに下の階層に進むか? アギラが行くなら俺達も行くが。」
どうするか迷った。これ以上薬品を発見したところであまり意味がないように思えたのだ。アスカも異常なほどに早く帰るように急かしてくる。
さらに『 聖光魔浄陣 』という魔力を大幅に使う光魔法はもう使わないようにと俺の体の事も心配してくれているのだ。実際はまだまだ余裕だったが、あまりにも心配して何度も言うので俺はなんだか申し訳ない気がした。
「そうだな………帰るか………」
俺達は遺跡から帰還する事にした。
帰る遺跡の途中で一人の男が瀕死の重傷を負って倒れていた。俺はアーサーから師匠から貰った薬を出させ、その者を救ってあげた。
話を聞くとその男はバロワ商会に雇われた冒険者で、商会のものと一緒にこの遺跡に来ていたらしい。それがいきなり裏切られて後ろから襲われたという事だった。
「あいつらは、最初から裏切るつもりだったんだ。そして遺跡で見つかったものを自分たちのものにして、俺に報酬を払うつもりなんてなかったんだ。きっとそうに違いない。」
「それは不幸でしたね。あと少しで出口というところで裏切られるなんて。」
俺はその男に同情した。
「いや。それが………遺跡から帰ってきたところではなくて、今から遺跡に入ろうとしたところで、いきなり後ろからグサッさ。あいつら何を考えているのかさっぱりわからねぇ。あんな奴らの依頼を受けちまって後悔しかねぇぜ。」
入り口で裏切って殺すって………何のためにこの男を雇ったんだ………
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