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第一章 ルード皇国 編
謁見
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「よく来てくれたわね。」
俺は城に来ていた。片膝を立てて頭を低くして皇帝と対面した。
驚いたことに、皇帝は女性だった。それも、20代くらいに見えた。たしか、1300歳くらいのはずだった。
その容姿は竜人の多くがそうであるように美形な顔立ちをしていた。カールがかったブロンドの長い髪で、切れ長の目、その瞳には赤みがかった色があり、ふくよかな唇は瑞々しかった。
そして驚いたことに、竜人特有の尻尾がなかったのだ。すこし見回すと、謁見の間に居並ぶ竜人の何人かは同じように尻尾がなかった。
「今日来てもらったのには理由があるんだけど……その前に、3年前に国に蔓延する竜の呪いを解決してもらった事に礼を言わねばならないわね。呪いのかかったもの達を救ってくれて、ありがとう。」
そう言って、女王は頭を下げた。
「そして、直接の礼が遅れたのは申し訳なかったわ。」
俺は、アギリスを通じてその辺の事情は聞いていた。呪いが治ってから、皇帝はすぐにお礼をしようと言ってくれていたらしい。しかし、城にいる何人かが、人間に礼を言うなんてありえないと言い出して揉めていたそうである。それで、少しでも何かできればということで、お酒を手配してくれたのが皇帝であるということだった。
「いえ、私は大した事はできませんでした。しかしそれが育ててもらったこの国の助けになれたのなら、私も嬉しいです。お礼も以前に頂いたもので十分でございます。」
一番の功労者である師匠もあの酒を喜んでくれていたから、俺はそれ以上は望んでいなかった。
「そう言ってもらえると、私も助かるわ。でも、私達からこれを、あなたへの友好の証として贈りたいの。受け取ってくれるかしら。」
女王の横に立っていたものが、歩を進め俺のところに来て俺にペンダントを渡した。
「そのペンダントには私の力が込められているわ。もし、この国を離れた時に、この国ゆかりの竜族にそのペンダントを見せれば力になってくれることでしょう。あと、それには結界を通るときに神殿の警報がならないように魔法を施してあります。あなたが、それを身につけているなら自由にこのルード皇国に出入りしてくれて構いません。」
俺は体育の授業で外に出ていたが、その時はいつも前もって学校が通知していたそうだった。
つまり、俺はこの国に信用されたという事を理解した。
「身に余る光栄です。ありがたく頂戴いたします。」
「喜んでくれて嬉しいわ。」
女王も俺がそのペンダントの意味を理解したのを察して満足したようだった。
「そして、もう一つ呼び出したのは理由があるの。あなたは今年、学校を卒業したら南の大陸へと行くと聞いたわ。私達は今人間の国との友好関係についてどうするべきを議論しているの。それを決める手掛かりとして、竜人を南の大陸へと送り出しているんだけど………その竜人は南の大陸の北に位置するステラという港町の少し外れたところに居を構えているんだけど、その竜人にこの手紙を届けてもらいたいの。特に急ぎというわけでもないので、学校を卒業してからで構わないわ。」
そして、また隣にいた竜人が俺に近づいて、一通の手紙と地図を渡した。
「わかりました。必ず届けます。」
「よろしく頼むわ。今日は来てくれてありがとうね。あなたにひと目会えて良かったわ。」
こうして謁見は終わった。
それから学校が卒業するまでの4か月はあっという間に過ぎ去った。12月の終わりに俺はウェンディーとイグニスとエレオノールが成竜の儀に行くのを見送った。
「3人とも頑張って。」
俺は3人の顔を順番に見ながら言った。
「ああ。アギラも頑張れよ」とイグニス。
「帰ってきたら人間の国についていろいろ聞かせてよ。」
と相変わらずなエレオノール。
「ありがとう。それよりもー………」
ウェンディーは俺の手を引っ張り、俺だけに聞こえる声で話を続ける。
「もっとエレオノールに言うことあるんじゃない?」
どうもウェンディーは俺がエレオノールの事を好きだと思ってる節があった。俺にはそんな気はなかったし、エレオノールも俺に対してそんな感じが全然しない。ウェンディーは何故、そんな勘違いしてるのかが全然わからなかった。
「いや……」
しかし、全力で否定することもできなかった。
かわりに俺は3人に向き直り、お礼を言った。
「3人とも聞いてほしいんだけど……今まで本当にありがとう。俺はこの国で3人と友達になれて、とても楽しかったよ。俺が挫けそうな時もそばにいてくれて………俺は種族が違うのに………そんなことは関係なく接してくれて……」
言ってると涙が込み上げてきた。言いたいこと、伝えたいことはいっぱいあったが、言葉が出てこなかった。
「本当にありがとう。」
「何言ってんの。そんな事気にしてたの。アギラはアギラだよ。種族が違うとか思った事ないし。」
ウェンディーは少し泣いていた。
イグニスとエレオノールを見ると、2人も頷いていた。
俺はこの国でこの3人と知り合えたことを感謝した。
そして、新年を迎えて、今度は俺の出発の日になった。
別れる時に、前もって話してあったのだが、妹のルーリスはよく分かっていなかったみたいで大泣きをしていた。
「お兄ちゃんいなくなっちゃうの?ぐすっ………もう会えないの?」
俺はルーリスの頭を撫でた。
「必ず戻ってくるよ。またすぐ会えるさ。」
「必ず?絶対だよ!すぐ帰ってきてね。」
「ああ、約束する。」
ルーリスの泣き顔が、満面の笑顔になった。
「じゃあ、行ってくるね。」
俺はルーリスに言ったあと、アギリスとルーラにも出発を告げた。
「父さん、母さん、行ってきます。」
「気をつけてな。」
「いつでも帰ってくるのよ。」
そして、俺はルード皇国の結界を抜けた。
師匠のところにも旅立ちの挨拶をしに行こう。そう思い、俺は北の洞窟へと向かった。
俺は城に来ていた。片膝を立てて頭を低くして皇帝と対面した。
驚いたことに、皇帝は女性だった。それも、20代くらいに見えた。たしか、1300歳くらいのはずだった。
その容姿は竜人の多くがそうであるように美形な顔立ちをしていた。カールがかったブロンドの長い髪で、切れ長の目、その瞳には赤みがかった色があり、ふくよかな唇は瑞々しかった。
そして驚いたことに、竜人特有の尻尾がなかったのだ。すこし見回すと、謁見の間に居並ぶ竜人の何人かは同じように尻尾がなかった。
「今日来てもらったのには理由があるんだけど……その前に、3年前に国に蔓延する竜の呪いを解決してもらった事に礼を言わねばならないわね。呪いのかかったもの達を救ってくれて、ありがとう。」
そう言って、女王は頭を下げた。
「そして、直接の礼が遅れたのは申し訳なかったわ。」
俺は、アギリスを通じてその辺の事情は聞いていた。呪いが治ってから、皇帝はすぐにお礼をしようと言ってくれていたらしい。しかし、城にいる何人かが、人間に礼を言うなんてありえないと言い出して揉めていたそうである。それで、少しでも何かできればということで、お酒を手配してくれたのが皇帝であるということだった。
「いえ、私は大した事はできませんでした。しかしそれが育ててもらったこの国の助けになれたのなら、私も嬉しいです。お礼も以前に頂いたもので十分でございます。」
一番の功労者である師匠もあの酒を喜んでくれていたから、俺はそれ以上は望んでいなかった。
「そう言ってもらえると、私も助かるわ。でも、私達からこれを、あなたへの友好の証として贈りたいの。受け取ってくれるかしら。」
女王の横に立っていたものが、歩を進め俺のところに来て俺にペンダントを渡した。
「そのペンダントには私の力が込められているわ。もし、この国を離れた時に、この国ゆかりの竜族にそのペンダントを見せれば力になってくれることでしょう。あと、それには結界を通るときに神殿の警報がならないように魔法を施してあります。あなたが、それを身につけているなら自由にこのルード皇国に出入りしてくれて構いません。」
俺は体育の授業で外に出ていたが、その時はいつも前もって学校が通知していたそうだった。
つまり、俺はこの国に信用されたという事を理解した。
「身に余る光栄です。ありがたく頂戴いたします。」
「喜んでくれて嬉しいわ。」
女王も俺がそのペンダントの意味を理解したのを察して満足したようだった。
「そして、もう一つ呼び出したのは理由があるの。あなたは今年、学校を卒業したら南の大陸へと行くと聞いたわ。私達は今人間の国との友好関係についてどうするべきを議論しているの。それを決める手掛かりとして、竜人を南の大陸へと送り出しているんだけど………その竜人は南の大陸の北に位置するステラという港町の少し外れたところに居を構えているんだけど、その竜人にこの手紙を届けてもらいたいの。特に急ぎというわけでもないので、学校を卒業してからで構わないわ。」
そして、また隣にいた竜人が俺に近づいて、一通の手紙と地図を渡した。
「わかりました。必ず届けます。」
「よろしく頼むわ。今日は来てくれてありがとうね。あなたにひと目会えて良かったわ。」
こうして謁見は終わった。
それから学校が卒業するまでの4か月はあっという間に過ぎ去った。12月の終わりに俺はウェンディーとイグニスとエレオノールが成竜の儀に行くのを見送った。
「3人とも頑張って。」
俺は3人の顔を順番に見ながら言った。
「ああ。アギラも頑張れよ」とイグニス。
「帰ってきたら人間の国についていろいろ聞かせてよ。」
と相変わらずなエレオノール。
「ありがとう。それよりもー………」
ウェンディーは俺の手を引っ張り、俺だけに聞こえる声で話を続ける。
「もっとエレオノールに言うことあるんじゃない?」
どうもウェンディーは俺がエレオノールの事を好きだと思ってる節があった。俺にはそんな気はなかったし、エレオノールも俺に対してそんな感じが全然しない。ウェンディーは何故、そんな勘違いしてるのかが全然わからなかった。
「いや……」
しかし、全力で否定することもできなかった。
かわりに俺は3人に向き直り、お礼を言った。
「3人とも聞いてほしいんだけど……今まで本当にありがとう。俺はこの国で3人と友達になれて、とても楽しかったよ。俺が挫けそうな時もそばにいてくれて………俺は種族が違うのに………そんなことは関係なく接してくれて……」
言ってると涙が込み上げてきた。言いたいこと、伝えたいことはいっぱいあったが、言葉が出てこなかった。
「本当にありがとう。」
「何言ってんの。そんな事気にしてたの。アギラはアギラだよ。種族が違うとか思った事ないし。」
ウェンディーは少し泣いていた。
イグニスとエレオノールを見ると、2人も頷いていた。
俺はこの国でこの3人と知り合えたことを感謝した。
そして、新年を迎えて、今度は俺の出発の日になった。
別れる時に、前もって話してあったのだが、妹のルーリスはよく分かっていなかったみたいで大泣きをしていた。
「お兄ちゃんいなくなっちゃうの?ぐすっ………もう会えないの?」
俺はルーリスの頭を撫でた。
「必ず戻ってくるよ。またすぐ会えるさ。」
「必ず?絶対だよ!すぐ帰ってきてね。」
「ああ、約束する。」
ルーリスの泣き顔が、満面の笑顔になった。
「じゃあ、行ってくるね。」
俺はルーリスに言ったあと、アギリスとルーラにも出発を告げた。
「父さん、母さん、行ってきます。」
「気をつけてな。」
「いつでも帰ってくるのよ。」
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