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第一章 ルード皇国 編

呪い再発?

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 俺は師匠との修行を学校の放課後にすることが日課となった。

 アギリスとの稽古は代わりになくなることになった。そもそも、アギリスは竜族の中でやっていけるように、そして禁忌の洞窟の調査に乗り出せるための力をつけるために俺を鍛えてくれていたのだ。その両方とも目的は達せられたのである。

 俺は、洞窟の中で魔法を教えてもらいに行くことを伝えると、アギリスは了承してくれた。
 そして、師匠の事は話せないことが多かったが、呪いは魔王の仕業であるということや、700年前の戦争で人は呪いに関与していないことなどをアギリスに伝えておいた。

 呪いの元凶は間違いなく魔王にあるのである。師匠経由で呪いにかかったものがいるかもしれなかったが、そこは伏せておいた。師匠も竜族を守るためにいろいろやっていたのは事実なのだから、そのくらいは伏せても大丈夫だと思った。師匠は感謝されるべき存在なのだ。

 アギリスは俺から聞いたことを、皇帝に伝えた。そして、魔王に対して備えをどうするか。人と協力しなければならないか。などの議論が城ではなされていると聞いた。

 まだまだ、人を信用していない竜人もいるらしかった。そこで、南の大陸に竜人を送って、人間は信用できるかを調査することにもなったという。

 この半年後、南の大陸の北の海沿いにある人間の港町で、1つの噂が出回ることになる。
 奴隷の不自由な足が不思議な紫の液体により完治したというものだった。その液体とは師匠が作った失敗作品だったわけだが、人の世界では「奇跡の水」と呼ばれ探し求められるようになった。

 俺はというとそんな城での議論など、気にすることのできない日々を送っていた。
 7月は格闘訓練があった。師匠は格闘訓練での魔法は身体強化と魔法防御だけに限定した。相手の魔法をその身に受けて、自分でも使えるようになった方がいいということだった。師匠は呪いの影響で一日に何発も魔法を撃つことができなかった。あまり魔法を使いすぎると、呪いの影響が魔力結晶に及んでしまうということだった。

 魔法を使って勝ちたいという気持ちもあったが、師匠の命令だったし、これも修行だと思って魔法を使わなかった。それでも、身体強化と魔法防御は今までの魔力だけで戦うより、安全に戦えるようになった。

 魔法に当たったり、相手の攻撃を受けても致命傷にはならなくなったのだ。俺は相手の攻撃を見切って躱したり、魔法の効用を見極めたりといろいろなことに取り組む余裕ができた。

 それはまさに、エレオノールが前に言っていた訓練を楽しいということを俺も思えるようになったのだ。

 フレイはというと、呪いが治ったという話は聞いたが、まだ念のため療養しているとの事だった。夏休み明けには出てこれると聞いた。サムシーは、俺に対してよそよそしい態度をとっていた。俺と視線が合うと、ばつが悪そうにして、顔をそらしていた。

 そして、夏休みに入った。俺は師匠とみっちり魔法の修行をした。師匠からは、昔の話もいろいろと聞いた。魔王と戦った話や、人間との暮らし、勇者の話、そのどれもが聞いてて興味深かった。

 そして、いくつかの話は、ルーラから聞いた御伽噺や神話などに似た話がいくつかあった。
師匠は人間のことが気に入っているようだった。特に勇者との話をする時は本当に嬉しそうだった。

 夏休みも終わり、1か月過ぎた頃ルーラの容体がすぐれなくなった。俺は呪いがまだ治っていなかったのかと思い焦った。そして、医者を呼んだ。

 医者は深刻な顔で診察をしていた。
『まさか・・・』
しかし、意外な言葉が医者から発せられた。

「おめでとうございます。妊娠しております。」

『うんっ??』

「まあ。」
ルーラは涙を流して喜んでいた。

「これからは1人の体じゃないから、体を大事にするように。」
そう言って医者は去っていった。

『てことは………俺が魔法の修行で死にそうになってる時、家で……』
いや深くは考えまい。俺も素直に喜んだ。

「母さんは寝ててよ。今日は俺が料理を作るよ。」
授業で料理なども習っていたので、俺が夕飯を作ることにした。

アギリスが帰ってから、そのことを報告すると、アギリスはルーラと抱き合って喜んでいた。

『そうか、俺は兄ちゃんになるのか………妹か、弟か………』

竜人の子供は小さくても強いのだ。かっこいい兄貴でいるためにさらに努力しようと決意した。
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