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第一章 ルード皇国 編

真実

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 ルーラが意識を回復した日、俺は学校を休んで、再び洞窟へと行くことになった。ルーラが回復したことを報告し、お礼を言うためである。加えて、アギリスからは薬の入手の仕方を聞いて来てほしいと頼まれた。

 剣は持っていくかと聞かれたが、断った。俺は黒い竜を信用していた。
 そして俺は洞窟へと向かい、アギリスは城に呪いについて報告しに行った。

 洞窟の先にある空間にたどり着いたがが、前いた場所に黒い竜はいなかった。俺はその空間にある家の玄関を叩いた。
 しばらくすると、前に見た人間の姿をした者が出てきた。

「薬のおかげで母さんは助かることができました。ありがとうございました。」
会うなり俺は礼を言った。感謝していたからだ。

 それを聞いて、相手も喜んでいるようだった。
「おー、それは良かったな。我にとってもその報告は僥倖じゃ。我も1300年もの研究が成功に近づいていることが分かって嬉しいわ。ガーハッハッハ。」
そう言って豪快に笑っていた。

「呪いを研究しているのですか?何故ですか?1300年も??」
会ったら聞きたいことがいっぱいあったが、話すたびに疑問が増えて、思わず聞き返してしまった。

「我にも呪いがかけられておるからじゃ。だから、1300年くらいずっと、それを治すために研究を続けておる。我の呪いは1400年くらい前に魔王によって直接かけられた強力なものじゃ。研究している薬は、我の呪いを治すには至っていないが、間接的な呪いなら成果がでるやもしれん。そう思ってお主に持たせてみたが。どうやらうまくいったようじゃな。今の方針で薬を作り続ければ、いずれは我の呪いも治すことができようぞ。フハハハハハッ。」

「魔王って誰なんですか?」それよりも大事なことがあったので、答えが来る前にもう一つの質問をした。

「あっ、それも気になるんですが、実は呪いにかかっている竜人は母さん以外にもいるので、もしよかったら薬の作り方など教えてほしいとのことなんですが。」

「薬か。薬なら、まだまだいっぱいあるから、好きなだけ持って行っても構わん。我にとっては効かぬから失敗品と変わらぬ。遠慮なく持っていくがよい。」
そう言って薬の瓶があるところへと連れて行ってくれた。

「呪いに苦しんで、今も死にそうなものがいるかもしれないから、ひとまずこれを持って今日のところは帰ったらよい。聞きたいことがあれば、我はいつでもここにいるから聞きに来るといい。その時魔王の事も教えてやろう。」
俺は、薬の瓶を100本近く手渡された。まだまだ液体の入った瓶はあった。

「………それと、この前言い忘れたのだが、我のことを誰かに話してしまったか?」

「はい。父さんと母さん、それに医者です。もしかしたら、父さんが皇帝に報告していると思います。」

「そうか、我の事をどのように伝えた。」

「黒い竜が、薬をくれたといいましたが。ダメでしたか。」

「人間の姿の特徴は言ったか?」

「それはまだ言ってません。」

「そうか、では我のことは、これからはそれ以上伝えるな。」

「理由も今度教えてやる。」

「わかりました。今度またいろいろと聞きに来ます。」
薬のお礼を言って、洞窟をあとにした。

 家に帰るとアギリスはまだ家には帰ってなかった。もうちょっと話をしてから帰ればよかったかと後悔した。しかし、できることをしようと思い、学校に薬を持って行った。俺は事情を説明した。そして、フレイに届けてもらえるように言った。俺はフレイの家を知らないし、俺から届けても飲んでもらえるかわからなった。本当はサムシーにも渡したかったが、学校には来て元気だということだったので、ひとまず渡すのはやめた。

 そして家に帰るとアギリスがいたので、アギリスに薬を渡した。足りなければ、また持ってきますと伝えておいた。そして、アギリスは、それを受けとり、もう一度城へと戻っていった。

 その後、皇帝から呪いにかかっていたものに薬は届けられ、みんな治すことができたそうだった。

 俺は洞窟の中で、いろいろな話を聞くことができた。
「そうじゃな、何から話せばよいか・・・まずは呪いをかけた魔王からにするか・・・魔王と我は4度戦っておる。といっても単独で戦ったのは700年くらい前の時だけじゃがな。呪いをかけられたのは、1400年くらい前の人と竜の連合軍で魔王軍と戦った時のことじゃ。その時の魔王は強大な力をもっておって、世界が滅亡しかかった。現に竜族は、そのほとんどが全滅した。人間も相当な被害が出ていた。
そんな魔王を我は1人の勇者と協力して、打ち取った。が、最後に油断してしもうて、魔王の放った呪いをうけてしもうた。だから、こうして我には呪いがかかっておる。」
よくわからないところの多い話だった。

「700年前にも戦ったということですが、1400年前に死んではいなかったということでしょうか?」

「いや確実に死んでいた。そして、別の姿で蘇っておる。1400年前は鬼族の姿であったが、700年前は人魚族の姿であった。そして、西の大陸にいる魔族を率いておった。魔族は魔王以外の命令を聞くことはありえない種族だからな。その2人は魔王ということじゃ。」

「その2人の魔王は別の魔王ということはありえませんか?」

「いや、姿かたちは違うが、その2人とも同じ同一人物だと思う。後の3人は我に倒されたという恨みを持っておって、どうやら前の記憶があるらしかった。おそらく、死んでも別の肉体に生まれ変わって、前の記憶が継承されているようなのじゃ。」

「では、今も魔王がどこかにいるということでしょうか?」

「それは分からぬ。魔王と戦ったのは、3400年前と2600年前と、先ほど言った1400年前と700年前じゃ。間隔が短くなっているかもしれんが、その規則性はよくわからん。今もう生まれ変わっているかもしれないし、まだ生まれ変わってないかもしれない。我はここで、子孫たちを魔王の襲来から守っておるのよ。魔王は竜族の力を恐れておるから、竜族を滅ぼそうとしておる。いつ来るか分からぬから、この地をあまり離れぬわけにもいかんのじゃ。」

「やっぱりあなたは竜人なんですか、私の知ってる竜人たちと見た目がちょっと違うのですが……」

「どう違う?」

「私の知ってる竜人には尻尾がありますが、あなたにはありません。」
少し考えているようだった。

「我の施した魔法が世代を重ねるごとに、薄れて来ているのかもしれないのぉ。」

「どういう事ですか?」

「我が1300年前に、残った子供達に人化の魔法をかけたのよ。魔力結晶にかけた魔法は子の世代、孫の世代、そしてその先の世代にも受け継がれるようにしたのじゃ。」
魔力結晶に魔法を流して遺伝子操作みたいな事をしたのか?スケールが違いすぎた。

「何故そのような事をしたのですか?」

「その頃、竜族は魔王との戦いで滅亡しそうだったのじゃ。そこで我らは残った子供達を集め人化の魔法をかけた。1つは我らが敗れた場合竜族が根絶やしにされないように見た目を変えるためじゃ。子供らは自分で人化の魔法はかけられんからのぅ。そして、我らは結界も作り、竜族以外は近づけないようにもしたのじゃ。」
さらに続けた。

「もう1つ理由がある。人間の生活を真似てはどうかという案が出て、それを実行したのじゃ。竜は強いが、個体数が少なく。対して人は弱いのにも関わらずその数は竜の数よりもはるかに多かった。当時竜たちは、子を産み落とした後、育てることはせず放置することが多かった。そこで人間のように子育てをするという習慣をつけさせようと、人間の生き方や、子育ての仕方などの書かれた本を大量においておいたのじゃ。子供の世代で根付けばと思ってのぅ。」
頭が追いつかなかったが、納得できる部分もあった。

「なぜ、正体を隠されるのですか。」

「うむ、まー、これは我の我儘なところではあるのじゃが………前の話を聞いて思ったのじゃ。我の存在を知れば。我を恨む竜人も出てくるじゃろうからな。」

「いえ、あなたは呪いを治されたんだから、感謝されこそすれ恨まれることはありません。」

「たしかに今回、幸運にも治すことができた。これには我も喜んでおる。しかし、呪いにかかった原因も我のせいであるようじゃからな。」

「しかし、魔王が呪いをかけなければこんな事にはならなかったのでは。それに、竜人たちは呪いの原因は700年前の戦争にあると言ってますよ。」

「その戦争のとき、竜族は人間を相手に戦っておった。その隙をついて、西の大陸から魔王軍が攻めてきおったのじゃ。魔王はワレが竜族を守護してるとは思っておらんかったようじゃ。人魚族であったことと、かなり若かったこともあって、我は魔王を撃退することに成功したのじゃ。しかし、一部の魔獣が人間と竜族が戦っている方へと向かっていたので、我はそれを殲滅しにいってしまった。だが、これがまずかったようじゃ。呪いの範囲に一部の竜族がかかってしまった可能性がある。だから、呪いが、戦争後に出だしたのじゃろう。」

「でも、それだって、あなたが竜族を魔王軍から救ったという事じゃないですか。」

「そうとってもらえれば嬉しいがな。死んだものの身内からしたら、それで納得するとは思えないんじゃ。それに、我は名声も望んでおらん。我の望みは、竜族の子孫たちを守ることと、叶うならば、呪いを治して、息子や娘に会って話してみたいのじゃ。呪いさえ解ければ、ここにいたことを明かさず残りの人生を生きようと思っておる。」

 俺にはいまいち理解できない話であった。今呪いにかかってるものは、元凶をたどれば魔王である。それは間違いない。でもうつしたのはこの目の前の竜人、もしくはそのうつったものからさらに感染したものである。この場合誰を恨むだろうか……

 俺はもしルーラが死んでたらと考えた……確かに、あの時俺は目の前の竜人に一矢報いるつもりでいた。しかし、それは魔王の話を知らなかったからだ、もし知ってたら復讐の炎は魔王に向かっただろうか、それとも目の前の竜人にむかっただろうか………今となってはわからない事だった。
しかし、理解できる部分もあったので目の前の竜人の考えを尊重することにした。俺にとっては、恩人であることには変わりない事だったからだ。

 聞きたいことがありすぎて、何を聞いていいか全然分からなかった。しかし、一番個人的に聞きたいことが閃いた。人間とも協力していたという事だから知っているかもしれない。詠唱の言葉もわかるかもしれない。

「魔力結晶なしの魔法の使い方を教えてもらったりできますか?」
俺は答えに期待した。

「構わんが………お主、それだけ膨大な魔力を垂れ流しているのに、魔法が使えんのか?」
そんな答えが返ってきた。
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