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第一章 ルード皇国 編

お伽噺

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 放課後、クラスで帰り支度をしていると、ウェンディーが教室に飛び込んできた。
「アギラ一緒に帰ろう。」
扉の外ではイグニスがいた。
俺は嬉しかった。『けど、まだ知らないだけかも知れない。』そう思うと暗い気持ちになった。
俺たちは3人で家路についた。


「それで格闘戦どうだった?」

「負けちゃったよ。ウェンディーは?」

「私達は勝ったよ。秘密特訓のおかげだね。」
2人は同じクラスなのでお互いの結果は知っているようだった。俺は気絶していたのでクラスの結果は分からなかったけど・・・

「そうか。おめでとう。」
俺は元気なく祝福した

「あまり気にするな。まだ始まったばかりだ。格闘戦は6年間続く、お前ならやれるよ。」
イグニスが俺を励ましてくれる。

「あの、あのさ。2人は人間が戦争をしかけたとか。魔力結晶を狙ってるって知ってたの?」
意を決して聞いてみた。

「知ってたよ。」
「知っている。」
「じゃあ、俺のこと嫌じゃないの?」

「あはははは。嫌なわけないじゃん。アギラのことを、昔から知ってるんだから。他の人間とアギラは違うじゃん。そんな事気にしてたわけ?」

「いや、するだろう。前にフレイが人間は野蛮だって言ってて意味が分からなかったけど、今日ようやくわかったよ。魔力結晶を高値で取引してるってことは、殺して奪ったりしてるって事じゃないのか?」

「それでも、アギラはそんな事しないじゃん。」
ウェンディーは真剣な眼差しを向けてきた。その目には涙がこぼれそうになっていた。

「それに、そう簡単に竜人や竜を人間が殺せるとは思えないからな。竜の死骸から魔力結晶を取り出しただけかもしれないし。」
イグニスはフォローをいれた。

「そういや。私たち昼休みにアギラの教室行ったのに、いなかったんだけど、どっか行ってたの?」
「学校の外にある大きな木の近くで弁当を食べてた。」

「もう、私たちも誘ってよ。明日から私たちも一緒に食べるからね。先に終わったら待っててよ。」
その誘いはすごく嬉しく、涙が出そうになった。

「2人ともありがとう。」
俺は涙をこらえるのがやっとだった。


 家に帰って食事をした。その時に学校での出来事を、いろいろ聞かれたが、当り障りのない答えを返し、寝室へと向かった。今日一日の事を思い返し、本当のことを言えなかったことで、涙が出そうになった。

腕で目をこすっていると、ルーラが後ろから「どうかしたの?」と声をかけてきた。いじめられたことは心配させてしまうので、俺はウェンディーとイグニスにした話をルーラにもした。
「そうね。700年前に理由もなく攻めてきた人間達は好きじゃないわ。でもアギラはその人間達とは違うじゃない。」

「母さんもやはり、人間は嫌いですか?」
嫌いと言われると、自分も嫌われている気がするので聞くじゃなかったと思ったが返答は予想とは違っていた。

「いえ、私は人間が好きよ。」

「私が人間だからですか?」

「もちろん。それもあるわね。でも、それだけじゃないの。攻めてきた人間は確かに嫌だけど。それに参加してなかった人間の方が多いはずよ。心優しい人間もいれば、心無い人間もいる。竜人だって、いい者もいれば、悪い者もいるわ。それと一緒よ。人間全部が悪いわけじゃない。」
俺の頭を撫でながら話を続けた。

「それにね、言い伝えによれば。昔は竜と人は協力していたと言われているの。明確な証拠が残ってはいないのだけど。私は、1300年前頃までの文献しか残ってないからだと思うの。そのもっと前は竜と人は一緒に暮らしていたかもしれないわ。」
ルーラは何か確信を持っていそうだった。

「何でそう思うのですか?」

「いろいろな童話やおとぎ話や吟遊詩人の歌詞にそういった竜と人をテーマにしたものが多いのよ。」

「例えば、どんな話なのですか?」
その聞いた話は前世で聞いたおとぎ話に似ていた。

昔々あるところに、人間の勇者がいたそうな。魔王島では悪の大魔王が支配しており、そこに住む魔族や魔獣を従えていたそうな。その魔王島から、たまに人間の島に出てきては、悪行の限りをつくし、またある時は、竜の住まう島を訪れ、竜の翼を引きちぎって暴れまわっていたそうな。人間の勇者は、味方をひきつれ竜の国にわたり、腰につけた瓶から不思議な液体を竜に与え、すっかり意気投合したそうな。そして勇者一行と竜達と魔王島に渡りこれを撃退し。それぞれの国に帰ったそうな。それ以降共に戦った勇者一行と竜達は1年に1度集まり親睦を深めましたとさ。

「他にも天空の城に竜と人の住む世界があるという神話なんかもあるわ。」
いろいろな話を聞いていると、ルーラは本当に人間を嫌ってないという事が分かった。それは日中にあった出来事を吹き飛ばしてくれた。

しかし、ルーラは悪い人間は嫌いだと言っていた。
「隠し事をする人間は嫌ですか。」

「何かつらいことがあったら言ってほしいわ。でも、みんなそれぞれ大なり小なり隠し事は持ってるわ。相手のことを思ってのことや、人を傷つけないのであれば、多少のことは大丈夫よ。私も昔、どうしても流星群を見たくて夜中にこっそり望遠鏡を持って北にある山を登ったこともあるのよ。」
そう言って舌を出した。

「北の山って事は、魔の森を通っていったのですか?危なくないですか?」

「そうよ、母さんこう見えて強いのよ。」
 ルーラと話していると本当に幸福を感じられた。話していると愛情が感じ取ることができたからだ。
学校でのことも、前世の記憶を持って転生していることや、拾われた頃の会話も知っていることを話したかった。自分のすべてを知ってもらいたいという気持ちがあった。ルーラは受け入れてくれる気がしたからだ。しかし、それらのことを言うことはなかった。

「それじゃあ、おやすみなさい。母さん。」
その一言を残して俺は寝室へと向かった。

後ろから「つらい事があったら言うのよ。」と声をかけてくれた。

布団の中で俺は涙を流した………
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