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第一章 ルード皇国 編
成竜の儀
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「私の名前はジャスティーヌです。今日は、あなたたちに様々な歴史をあなたたちに教えていきますね。」
教壇に立ったのは20代くらいの男の竜人だった。精悍な顔立ちで、肉体もかなり筋肉質だった。
「これから成竜の儀までの6年間にいろいろなことがあると思います。しかし、この学園で、よく学び、よく鍛えてください。そして、成竜の儀を経て立派な一人前になってください。そうして、1人立ちした時、ここで得た知識は必ず君たちのためになるでしょう。それでは、今日はですねぇ・・・」
授業を始めようとした時、フレイがそれを中断して発言した。
「せんせー、この中に1人前になれない奴が交ってるんスけど。」
「そうでやんす。そうでやんす。」
「ふふふ。」
そこで声を出した3人はあの時、公園で見た3人に違いなかった。初回の授業から絡んで来るなんて。
「なんでこの学校に人間が入学してるんスか?」
「そうでやんす。そもそも、このルード皇国は竜人以外のものが入れないように結界で覆われているはずでやんす。」
「そうね。どうやって潜り込んだのかしら。」
そのやり取りを聞いて他の6人の生徒は俺とフレイ達の方を交互に見た。いや、よく見ると1人はずっと本のようなものを読んでいるようだった。
「待て、待て。アギラのことを言ってるのだと思うが、彼は正式な手続きを経てアギリスさんの子供として皇帝から認められている。さらに、この学校にも彼が通うことに手続き上なんの問題もない。」
「皇帝から認められているなんて嘘っぱちだろ。」
「そうでやんす。ありえないでやんす。」
「彼の父上であるアギリスさんは、皇帝直属の護衛騎士の1人だから皇帝には直接奏上することができる立場にあるんですね。だから皇帝から直接認められることもありえるんですよ。」
それを聞いて、3人はびっくりしていた。当然俺もびっくりだった。日中どこへ行ってるのかと思ったら皇帝の護衛をしていたのか。
しかし、フレイはそれを聞いてもなおも食い下がり、
「しかし、成竜の儀には出られないんだから、この学校に来ても意味ないんじゃないっスか?」
『どうしても俺を追い出したいのか・・・』
あれから、何もしなかったわけではない。ずっと特訓を重ねてきたのだ。
「成竜の儀に出れないって、何で言い切れるんだ。」
俺はフレイに言い放った。
それを聞いたフレイの取り巻きの女は、
「ふふ、人間には無理でしょう。」
「そうでやんす。我々、竜人にしか無理な事でやんす。」
「やってみなくちゃ、分からないだろ。」
俺は反論する。
「ちょっと、ちょっと、落ち着いて。」
ヒートアップしそうになる俺たちを先生が制止した。
「いい機会だ。どうせ成竜の儀についてはきちんとみんなに教えるつもりだったから、今から教えるね。ちなみにアギラは成竜の儀については誰からも教えられなかったの?」
「詳しいことは・・・成竜の儀を終えれば、その証として竜の牙で作った剣をもらえるって事ぐらいしか。」
「けっ、お前がもらえるわけがねーんだよ。」
フレイがまたしても噛みついてきた。
「ちょっと、ちょっと。フレイ落ち着いて。アギラ以外のみんなは詳しく知っているのはどのくらいいるの?知ってるものは手をあげて。」
フレイとその取り巻きの2人に加えて、他に2人が手を挙げた。
「詳しく知ってると思ってるだけかもしれないから、よく聞いておいてね。端的に言えば、成竜の儀とは我々竜族が本来の竜の姿に戻ることを意味するんだ。これは、たぶんみんな聞いたことがあると思うけど。」
そう言って辺りを見回した。
『本来の姿?竜?人の姿が仮で本当は竜なの??』
いろいろ疑問な点が浮かんできたが、話は続いた。
「我々竜族は、12歳を迎えると人の姿が解かれ、本来あるべき姿である竜の姿に戻る。そして、その姿で北にある島国で3年間過ごしてもらうことになる。そこの環境は過酷な環境で、吹雪が吹き荒れるかと思えば、活火山の影響で灼熱の天候にも変化する。食料も少ない過酷な生存競争が待っている。
そして晴れてそこで15歳になった時、竜の歯が入れ替わる。その時落ちた歯を集めて作ることができるのが、このオリハルコンの強度に勝るとも劣らない剣というわけだ。」
腰に帯刀した剣を見せた。
「そして、この剣を手に入れたら、君たちはその後の人生を竜として生きるのか、人化の術で竜人としてこの国でいきるのかの選択に迫られる。」
そこで、机の上に本を出し読みふけっていた子が手を挙げた。
「先生、質問です。」
「何かね?エレオノール。」
「だいたい何割くらいが竜として生きるのでしょうか?」
たしかに、興味があることだった。
「それは教えちゃいけない事になっているんだ。変な先入観を植え付けてその選択を決めて欲しくないからね。その選択の時どうするのか。それを決めるための判断材料としていろいろなこの世の中の知識を我々が提供していくつもりだ。だから授業を聞いてその意味を自分なりに解釈していってもらいたい。」
「もう1ついいですか?」
どうぞ、というジェスチャーをして質問を促す。
「抜けた歯から、2本の剣を作るということは可能でしょうか。」
「それは無理だろう。この剣を作るのにだいたい40本ほどの牙が必要になる。それを集めて凝縮してできたのが、竜の牙の剣だ。我々の歯は上下合わせて41~42本しかないから、2本作るのは不可能だ。」
そこまで黙って聞いていたフレイが自分の机をドンと叩き
「じゃあやっぱりアギラには成竜の儀は不可能ってことじゃないっスか。学校で学ぶ意味があるんスか?」
「成竜の儀に関係なく生きていく上で知識は大切なことだ。他のみんなも、成竜の儀のためだと言ったが、その後の人生でもこの学校で学んだことはきっと役に立つ。・・・・それにアギラにも使命というものあると聞いている。内容まではわからないが、その使命を果たせるように学校で知識と鍛錬をと皇帝からも仰せつかっている。」
いろんな疑問がありすぎて何から突っ込めばいいかわからなかった。しかし、どうやら俺はやはり何かの役目を負っているのは確かだった………
教壇に立ったのは20代くらいの男の竜人だった。精悍な顔立ちで、肉体もかなり筋肉質だった。
「これから成竜の儀までの6年間にいろいろなことがあると思います。しかし、この学園で、よく学び、よく鍛えてください。そして、成竜の儀を経て立派な一人前になってください。そうして、1人立ちした時、ここで得た知識は必ず君たちのためになるでしょう。それでは、今日はですねぇ・・・」
授業を始めようとした時、フレイがそれを中断して発言した。
「せんせー、この中に1人前になれない奴が交ってるんスけど。」
「そうでやんす。そうでやんす。」
「ふふふ。」
そこで声を出した3人はあの時、公園で見た3人に違いなかった。初回の授業から絡んで来るなんて。
「なんでこの学校に人間が入学してるんスか?」
「そうでやんす。そもそも、このルード皇国は竜人以外のものが入れないように結界で覆われているはずでやんす。」
「そうね。どうやって潜り込んだのかしら。」
そのやり取りを聞いて他の6人の生徒は俺とフレイ達の方を交互に見た。いや、よく見ると1人はずっと本のようなものを読んでいるようだった。
「待て、待て。アギラのことを言ってるのだと思うが、彼は正式な手続きを経てアギリスさんの子供として皇帝から認められている。さらに、この学校にも彼が通うことに手続き上なんの問題もない。」
「皇帝から認められているなんて嘘っぱちだろ。」
「そうでやんす。ありえないでやんす。」
「彼の父上であるアギリスさんは、皇帝直属の護衛騎士の1人だから皇帝には直接奏上することができる立場にあるんですね。だから皇帝から直接認められることもありえるんですよ。」
それを聞いて、3人はびっくりしていた。当然俺もびっくりだった。日中どこへ行ってるのかと思ったら皇帝の護衛をしていたのか。
しかし、フレイはそれを聞いてもなおも食い下がり、
「しかし、成竜の儀には出られないんだから、この学校に来ても意味ないんじゃないっスか?」
『どうしても俺を追い出したいのか・・・』
あれから、何もしなかったわけではない。ずっと特訓を重ねてきたのだ。
「成竜の儀に出れないって、何で言い切れるんだ。」
俺はフレイに言い放った。
それを聞いたフレイの取り巻きの女は、
「ふふ、人間には無理でしょう。」
「そうでやんす。我々、竜人にしか無理な事でやんす。」
「やってみなくちゃ、分からないだろ。」
俺は反論する。
「ちょっと、ちょっと、落ち着いて。」
ヒートアップしそうになる俺たちを先生が制止した。
「いい機会だ。どうせ成竜の儀についてはきちんとみんなに教えるつもりだったから、今から教えるね。ちなみにアギラは成竜の儀については誰からも教えられなかったの?」
「詳しいことは・・・成竜の儀を終えれば、その証として竜の牙で作った剣をもらえるって事ぐらいしか。」
「けっ、お前がもらえるわけがねーんだよ。」
フレイがまたしても噛みついてきた。
「ちょっと、ちょっと。フレイ落ち着いて。アギラ以外のみんなは詳しく知っているのはどのくらいいるの?知ってるものは手をあげて。」
フレイとその取り巻きの2人に加えて、他に2人が手を挙げた。
「詳しく知ってると思ってるだけかもしれないから、よく聞いておいてね。端的に言えば、成竜の儀とは我々竜族が本来の竜の姿に戻ることを意味するんだ。これは、たぶんみんな聞いたことがあると思うけど。」
そう言って辺りを見回した。
『本来の姿?竜?人の姿が仮で本当は竜なの??』
いろいろ疑問な点が浮かんできたが、話は続いた。
「我々竜族は、12歳を迎えると人の姿が解かれ、本来あるべき姿である竜の姿に戻る。そして、その姿で北にある島国で3年間過ごしてもらうことになる。そこの環境は過酷な環境で、吹雪が吹き荒れるかと思えば、活火山の影響で灼熱の天候にも変化する。食料も少ない過酷な生存競争が待っている。
そして晴れてそこで15歳になった時、竜の歯が入れ替わる。その時落ちた歯を集めて作ることができるのが、このオリハルコンの強度に勝るとも劣らない剣というわけだ。」
腰に帯刀した剣を見せた。
「そして、この剣を手に入れたら、君たちはその後の人生を竜として生きるのか、人化の術で竜人としてこの国でいきるのかの選択に迫られる。」
そこで、机の上に本を出し読みふけっていた子が手を挙げた。
「先生、質問です。」
「何かね?エレオノール。」
「だいたい何割くらいが竜として生きるのでしょうか?」
たしかに、興味があることだった。
「それは教えちゃいけない事になっているんだ。変な先入観を植え付けてその選択を決めて欲しくないからね。その選択の時どうするのか。それを決めるための判断材料としていろいろなこの世の中の知識を我々が提供していくつもりだ。だから授業を聞いてその意味を自分なりに解釈していってもらいたい。」
「もう1ついいですか?」
どうぞ、というジェスチャーをして質問を促す。
「抜けた歯から、2本の剣を作るということは可能でしょうか。」
「それは無理だろう。この剣を作るのにだいたい40本ほどの牙が必要になる。それを集めて凝縮してできたのが、竜の牙の剣だ。我々の歯は上下合わせて41~42本しかないから、2本作るのは不可能だ。」
そこまで黙って聞いていたフレイが自分の机をドンと叩き
「じゃあやっぱりアギラには成竜の儀は不可能ってことじゃないっスか。学校で学ぶ意味があるんスか?」
「成竜の儀に関係なく生きていく上で知識は大切なことだ。他のみんなも、成竜の儀のためだと言ったが、その後の人生でもこの学校で学んだことはきっと役に立つ。・・・・それにアギラにも使命というものあると聞いている。内容まではわからないが、その使命を果たせるように学校で知識と鍛錬をと皇帝からも仰せつかっている。」
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