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第4話 魔法
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俺は今、ハイハイを使って目的の場所へと移動している。
そこは赤ちゃんだけに行くことが許される聖域。
それは……みんなの夢がつまった……
スカートの中である。
メイドのスカートは裾が長く地面すれすれまであり、俺が後ろからスカートの中に潜り込めばすっぽりと納まってしまうのだ。
俺はメイドの1人であるヒルダに狙いを定めた。ヒルダは20代前半くらいで、黒髪は肩くらいで切りそろえられ清楚な印象を受ける女性である。その女性のスカートの中にどんな秘密が隠されているのか………これは是非調査せねばなるまい。
俺はヒルダの後ろからひっそりとハイハイで近づき、目的地の目前まで迫ったら、素早くスカートの中にへと潜り込んだ。そして、仰向けになり、ヒルダの歩くスピードに合わせて地面を這いずった。
そこには楽園が広がって……いなかった。
真っ暗である。
俺は体の動き止めた。すると、スカートの中の暗闇から解放され、視界は明るくなった。仰向けに転がった俺は首を後ろに倒すと、後方にはヒルダが遠ざかる後ろ姿が見えた。
ふむ、パンツの道は一日にして成らずというわけか……
俺はそこで思いついた。
魔法である。この世界に魔法があるというのなら、光を照らす魔法等を覚えられないだろうか。
書斎の位置は把握している。広間から階段を上り、右に進んだ突き当りの部屋がそこである。俺は慎重に階段を上る。2階に到着した時にはかなり疲れてしまったので、少し休憩してから、書斎へと向かう。
なんという事でしょう。ドアノブに手が届かない……
俺は書斎の扉に体当たりをしてみる。
しかし、反動で開くかと思ったが、しっかりとした造りである。ぴくりとも開く様子がない。
どうしようかと扉を見上げていると、扉が自動で開く。
「誰?」
中からお兄様が顔を出す。
「ジークじゃないか。一人で2階に上がってきたのかい」
「あう」
「本に興味があるのかい?」
「あい」
流石はお兄様。俺の考えは全てお見通しですね。
お兄様は俺を抱え上げて書斎の中に入り、扉を閉める。
「ここにはいろいろな本があるからね。ジークは何に興味があるのかな……」
「あおー、あおー」
「ん? 魔王かい。どこでそんな事を覚えたんだ……魔王はね200年前に勇者に封印されたと言われているんだ。こっちの本に、挿絵付きの物語が……」
俺はぶんぶんと首を振る。というか魔王なんている世界なんですね……でも封印されているなら関係ないか。そんな事より魔法ですよ。お兄様。
「あおー、あおー」
必死に腕を振ってお兄様に伝えようとする。
「もしかしてこっちの魔法の本に興味がある?」
流石です、お兄様。
お兄様は、魔法関連と思われる本を本棚から手に取り、俺に見えるように広げてくれる。
そこにはイラスト付きで文字がびっしりと書き込まれていた。
だが、俺には全く読むことができなかった。
「あう」
俺が落胆の表情を見せると、お兄様は声に出して読んでくれる。
「魔法は大気中の魔素を取り込み、イメージを具現化する方法である。人により各々得意な属性があり、火、水、土、風、光の5属性と、それに当てはまらない無属性の魔法に分類される。……ここにはこう書かれているけど、もっと細分化すれば、これ以外の属性もあるからね。それに、悪魔達が使うと言われている闇魔法何てものもこの世にあるんだよ。この本は言わば入門編みたいなものだよ」
まだ喋る事もままならぬ赤ちゃんであるのにも関わらず、お兄様はやさしく教えてくれる。
「何か興味のあるものはあるかい」
そう言って、ぱらぱらとページをめくってくれる。
「あう」
俺は人差し指から光らしきものを発しているイラストを見て、声をあげた。
「【ライト】かい。これは光を出して維持する魔法だね。これを応用して、魔石を使って部屋の明かりにしていたりするんだ」
お兄様は部屋の明かりを指さす。
この世界は電気ではなく魔法の力で明かりをとっているということか……
「あう、あうあう」
俺は了解したとばかりに頷く。
「使ってみようか?」
お兄様は【ライト】を使えるんですか。それは是非。
「あう、あう」
俺のテンションはあがる。
「جمع الضوء【ライト】」
短く何か聞きなれぬ言葉を唱えると、人差し指の先に光が集まった。
「うおい、にいに」
俺は手を叩いて喜んだ。それを見てお兄様は優しく微笑んだ。
「大気中の必要な属性の魔素を集めて詠唱をするんだ。そうすれば精霊さん達の力を借りてイメージを具現化する事ができるんだよ。きっとジークにも使えるようになるはずさ」
お兄様は俺の頭をなでてくれる。
俺としてはすぐにでも使えるようになりたいところだが、練習するしかあるまい。
「あうあう あうあうあう 【あいお】」
お兄様が唱えた言葉を完璧にトレースして、俺は腕をぶんぶんと振る。
「あはは。ちゃんと喋れるようになってからだね」
「あう」
ちぃ、俺の発声器官ではまだもう少しというところか……
その後もいろいろと魔法の本のページをめくりながら、いろいろとお兄様は教えてくれましたが、俺はいつの間にか眠ってしまい、気付いたらゆりかごの中に納まっていた……
そこは赤ちゃんだけに行くことが許される聖域。
それは……みんなの夢がつまった……
スカートの中である。
メイドのスカートは裾が長く地面すれすれまであり、俺が後ろからスカートの中に潜り込めばすっぽりと納まってしまうのだ。
俺はメイドの1人であるヒルダに狙いを定めた。ヒルダは20代前半くらいで、黒髪は肩くらいで切りそろえられ清楚な印象を受ける女性である。その女性のスカートの中にどんな秘密が隠されているのか………これは是非調査せねばなるまい。
俺はヒルダの後ろからひっそりとハイハイで近づき、目的地の目前まで迫ったら、素早くスカートの中にへと潜り込んだ。そして、仰向けになり、ヒルダの歩くスピードに合わせて地面を這いずった。
そこには楽園が広がって……いなかった。
真っ暗である。
俺は体の動き止めた。すると、スカートの中の暗闇から解放され、視界は明るくなった。仰向けに転がった俺は首を後ろに倒すと、後方にはヒルダが遠ざかる後ろ姿が見えた。
ふむ、パンツの道は一日にして成らずというわけか……
俺はそこで思いついた。
魔法である。この世界に魔法があるというのなら、光を照らす魔法等を覚えられないだろうか。
書斎の位置は把握している。広間から階段を上り、右に進んだ突き当りの部屋がそこである。俺は慎重に階段を上る。2階に到着した時にはかなり疲れてしまったので、少し休憩してから、書斎へと向かう。
なんという事でしょう。ドアノブに手が届かない……
俺は書斎の扉に体当たりをしてみる。
しかし、反動で開くかと思ったが、しっかりとした造りである。ぴくりとも開く様子がない。
どうしようかと扉を見上げていると、扉が自動で開く。
「誰?」
中からお兄様が顔を出す。
「ジークじゃないか。一人で2階に上がってきたのかい」
「あう」
「本に興味があるのかい?」
「あい」
流石はお兄様。俺の考えは全てお見通しですね。
お兄様は俺を抱え上げて書斎の中に入り、扉を閉める。
「ここにはいろいろな本があるからね。ジークは何に興味があるのかな……」
「あおー、あおー」
「ん? 魔王かい。どこでそんな事を覚えたんだ……魔王はね200年前に勇者に封印されたと言われているんだ。こっちの本に、挿絵付きの物語が……」
俺はぶんぶんと首を振る。というか魔王なんている世界なんですね……でも封印されているなら関係ないか。そんな事より魔法ですよ。お兄様。
「あおー、あおー」
必死に腕を振ってお兄様に伝えようとする。
「もしかしてこっちの魔法の本に興味がある?」
流石です、お兄様。
お兄様は、魔法関連と思われる本を本棚から手に取り、俺に見えるように広げてくれる。
そこにはイラスト付きで文字がびっしりと書き込まれていた。
だが、俺には全く読むことができなかった。
「あう」
俺が落胆の表情を見せると、お兄様は声に出して読んでくれる。
「魔法は大気中の魔素を取り込み、イメージを具現化する方法である。人により各々得意な属性があり、火、水、土、風、光の5属性と、それに当てはまらない無属性の魔法に分類される。……ここにはこう書かれているけど、もっと細分化すれば、これ以外の属性もあるからね。それに、悪魔達が使うと言われている闇魔法何てものもこの世にあるんだよ。この本は言わば入門編みたいなものだよ」
まだ喋る事もままならぬ赤ちゃんであるのにも関わらず、お兄様はやさしく教えてくれる。
「何か興味のあるものはあるかい」
そう言って、ぱらぱらとページをめくってくれる。
「あう」
俺は人差し指から光らしきものを発しているイラストを見て、声をあげた。
「【ライト】かい。これは光を出して維持する魔法だね。これを応用して、魔石を使って部屋の明かりにしていたりするんだ」
お兄様は部屋の明かりを指さす。
この世界は電気ではなく魔法の力で明かりをとっているということか……
「あう、あうあう」
俺は了解したとばかりに頷く。
「使ってみようか?」
お兄様は【ライト】を使えるんですか。それは是非。
「あう、あう」
俺のテンションはあがる。
「جمع الضوء【ライト】」
短く何か聞きなれぬ言葉を唱えると、人差し指の先に光が集まった。
「うおい、にいに」
俺は手を叩いて喜んだ。それを見てお兄様は優しく微笑んだ。
「大気中の必要な属性の魔素を集めて詠唱をするんだ。そうすれば精霊さん達の力を借りてイメージを具現化する事ができるんだよ。きっとジークにも使えるようになるはずさ」
お兄様は俺の頭をなでてくれる。
俺としてはすぐにでも使えるようになりたいところだが、練習するしかあるまい。
「あうあう あうあうあう 【あいお】」
お兄様が唱えた言葉を完璧にトレースして、俺は腕をぶんぶんと振る。
「あはは。ちゃんと喋れるようになってからだね」
「あう」
ちぃ、俺の発声器官ではまだもう少しというところか……
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