ソーマジック・サーガ ~異世界と地球を紡ぐ物語~

渡邊渡

文字の大きさ
上 下
37 / 70
第二章:明らかになっていく真実

第37話 最強の戦士ケン

しおりを挟む
「マサノリさんの中で、あの20人の中から最強のチームを作るとすれば誰を集めますか?」

「そうだなぁ、魔法剣士は関東チームのサトルで間違いないな。魔法使いは北海道東北チームのサクラ、僧侶は九州沖縄チームのアサコで、戦士は関西四国チームのケンだろうな。

 おそらくこの四人が組めば1番強いチームにはなる。もし俺たちの時代にいれば、かなりの戦力になったはずだ。

 ただそれだとどうしても全体のバランスが悪くなる。計画では、最低でも水準以上のバランスのいい5チームが必要。でなければすべてを撃退できない。今は他のメンバーがあの四人の影響を受けて強くなってくれることが理想だ」

「そのケンはどんなプレイヤーなんですか?」

「はっきり言って脳筋、頭よりも先に体が動くタイプ。

 だがその格闘センスは抜けている。

 相手の弱点を見抜く感性、そしてどの魔物から倒せば全体の攻略が有利になるかを見抜く力、他の3人はこのケンに引っ張られていると言って間違いない」








 マサノリから高い評価を集めているケンは、関西四国チームのメンバーと共に4つ目の「虫の沼ダンジョン」を攻略中だ。

 この四人は地元が近い関西四国地方のメンバーということもあり、非常に仲がいい、そしてテンションが高いことが特徴だ。

 戦士のケン、魔法使いのアキ、僧侶のミツ、魔法戦士のトシという構成で、アキとミツが女性、20代前半で怖いもの知らずである。



「なんや、さっきの戦い方は?もっとシャキッとせんかい!」

「ほなお前がやってみ。魔法も使えんくせによう言うわ」

「簡単に言わんといて。ケンは張り切りすぎなんよ」

「そんなことよりお前らちょっとボケが足りねーぞ!俺が突っ込めねーじゃねーか」



 緊張感もなく、こんなノリでサクサクとダンジョンを攻略している。


 リーダーは戦士のケンだが、何かが優れているというよりもみんながケンを信頼していると言っていいだろう。

 危険な橋は必ず自分から渡り、常に三人の盾になる責任感、そしてどんな相手にもひるまない精神力。ピンチになっても逆転を引き出すことができる胆力に、チームは何度も助けられた。





「やっぱりうちはブラゼルやなぁ」

「いやマートンだって」


 全員20代前半ということもあり、お気に入りの野球選手は同じ年代の選手が多い。

 もし別のチームのファンが混じっていればそれはそれで争いの種にもなるが、この4人は全員が虎党なので問題ない様子だ。


「暗黒期は終わったから、来年からは虎の時代になるやろ」

「しかし開幕前にレベル100にして、日本に帰りたかったわ~」



 そんな雑談が続いたころ、トシの索敵に巨大なモンスターが引っかかった。


「!」


「お前らストップや。あの角の先になんかいるで」

「星人ちゃうんか?」

「アホ言うな。

 こんなところにぬらりひょんがいたらヤバイやん」



「デカいな」

「「「…」」」


 ケンがトーンを下げて警戒感を高めると、三人もおふざけモードから本気モードに切り替わる。


 通路の先は広い空間となっており、階層のボスがいることは明白だった。

 そして通路の奥で待ち構えていたのは、巨大なカマキリのようなモンスター。

 思わず4人はその大きさに驚かされた。


「なんか道頓堀のグリコを思い出すな、あれ」


「いちおう聞くが、どうする?」

 チームの作戦を立てるのはケンの役割であり、あのモンスターと戦うにしても、ケンの判断を尊重するのは暗黙の了解だ。




「いつものパターンでいこう。俺がダメージを与えられたら、速攻で倒す」


「わかった」

「了解」

「気ぃつけてな」


 ここまで特に苦戦することもなく快進撃を続けてきた3人に異論はない。



 ケンは集中力を高め、同時に4つのスキルを開放する。

(瞬発力増強、快心撃、意識阻害、ダメージアップ…)



 すべてのスキルが効果を発揮する状態になると、ケンは一気に駆け出し、すでに目をつけていた弱点とおぼしきモンスターの後頭部に強烈な一撃を撃ち込んだ!

 意識阻害によって直前までケンの存在に気付かなかったモンスターは、回避する動きすらできずにその一撃を受け入れざるを得ない。


「ズガギャカタライアァーッ!!!!!」


 部屋にもの凄い衝撃音が響き、巨大な魔物は悲鳴を喚き散らしながら吹き飛ばされる。



「やっぱり後頭部が弱点でオッケー。次の一撃でとどめをさすから、みんないつも通りいくで!」


 ケンがそう叫ぶと、今度は後ろに下がって力を溜め始める。

 その姿を見た魔法剣士のトシは相手を錯乱させる動きを見せ、少しずつだが体力を削り取っていく。

 僧侶のミツは3人に補助魔法をかけながら、何かあればすぐに対応できるよう集中する。

 魔法使いのアキは、ハイテンションでひっきりなしに攻撃魔法を叩き込んでいく。

「落ちろ!落ちろ!落ちろ!」





 3人の動きは一見まとまりがないようにも見えたが、実際は攻撃も動きも隙が無く、あとはケンの準備を待つのみとなっていた。


 そのケンは、最後のスキルである「一撃必殺」を発動。

 このスキルは瞬間的に攻撃力が3倍になるという破格の性能があるが、発動までの溜め時間が長く、さらに攻撃後に10秒間体が膠着するというリスクの高さを持っていた。

 つまり最後のとどめを刺す瞬間でしか使えないスキルであり、周囲との連携はもちろん、最悪の事態も想定したチームの判断力が要求されるのだ。


 しかしこれまで一度も失敗がない。


 つまりケンがこのスキルを使用するときは、必ず相手にとって最後の一撃となるものであった。

 そして2撃目でこのスキルを選択したあたり、ケンはここが勝負どころと判断したのである。


「いくぞ~!青春の握り拳!」

 意味の分からない掛け声とともに、ケンはスキルの準備が整ったことをチームメイトに伝える。

 ケンが右手を高々と掲げると、ケンの武器である巨大なハンマーもともに輝き出した。

 そして一気にジャンプすると、渾身の力で相手の弱点にハンマーを叩きこんだ!



「バーニングハンマー!!!!!!!!!」



 まさに一撃必殺、先ほどとは比較にならない強烈な一撃が魔物を襲う。


「グギャギャガガガ~!!!」

 耳をつんざく叫び声が響きわたると、スキルを使い切ったケンは体の硬直が始まり、その場に座り込んだ。


 ケンの周囲に集まった3人は警戒を解かず、魔物をじっと見つめている。

 あの必殺技で倒せないのなら、ケンを抱えて一度撤退することを事前に決めているからだ。




 しかし彼らの不安は杞憂に終わる。

 倒れた魔物は微動だにせず、4人はそれぞれのステータスで50階層をクリアしたことを確認したのである。


「お疲れさん!」

「さすがやわ~」

「また美味しいところを持ってかれたわ」

「やっぱこの技、反動がキツイねん」

「見てみぃ、アイテムが出てきたで」

「どれどれ、おぉー!これは、あれやないか!」

「なになに?どれくらい凄いん?」

「いや、わからん」

「「「知ったかすんな!(バシッ!!!)」」」




レベル50を超えるモンスターとの激戦後でも、4人はいつも通り絶好調だった。



「レンジャー4人の今」へつづく
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

処理中です...