ソーマジック・サーガ ~異世界と地球を紡ぐ物語~

渡邊渡

文字の大きさ
上 下
20 / 70
第一章:はじまりの物語

第20話 サトルの評価

しおりを挟む
 今日から11階層に挑戦する。ボンたちの話では、よりパーティーの連携力やリーダーシップが問われるとのこと。

 みんなは自分をリーダーと認めてくれているし、ここでキッチリ仕事をしないとな。

 サトルは日本で「ソーマジック・サーガ」を徹底的にやりこんできた。プレイ時間は全プレイヤーの中でもダントツの1位。

 マップやイベントに裏技、出現するモンスターの種類もパターンも、そしてドロップするアイテムも知り尽くしている。

 そしてやってきたこの惑星エヌは、サトルが知る「ソーマジック・サーガ」の世界そのものだ。

 ただ幾つか疑念もあるし、みんなに確認したいこともある。そこでサトルはダンジョンに向かいながら、みんなに話かけた。

「ところで、この世界についてどう思う?みんながあの王女から聞かされたことについても、すり合わせをしたいと思うんだけど」

「私が聞いたのは、レベルを100にすれば行ける最後のダンジョンみたいなところで、日本へ戻る方法がわかるとか」

「基本的には俺も同じだな。あとは、とにかく4人のパーティーを作ることを勧められた」

「私も同じです」

「はっきり言って、この世界は何かおかしくないか?どう考えてもゲームの世界そのものだ。

 現実的にこんなことってあり得るのか。漫画や小説の話だけだと思っていた」

「確かにどうやってここに来たのかも、どうしてあのゲームの世界なのかも、今の私たちじゃ説明できないわね」

「言葉も単位も、地図も城の形も食べ物も、アイテムも店もほとんど同じ。ただ、微妙に違うところもある」

「違うところ?」

「あぁ、一昨日見かけた角の飲み屋は、ソーマジック・サーガの中にはなかった。聞いたところ、1か月前くらいに新しく店を開いたらしい」

「それはどういうことでしょうか?」

「前からある建物や店などは、ソーマジック・サーガの世界と同じ。ただ、ここ最近の新しい店などは、あのゲームにはない」

「つまり、同じ世界だけどまったく同じではないということね」

「そうだ。ここでひとつ仮説がある。俺たちはゲームの世界に来たんじゃなくて、ゲームの元になった世界に来ているんじゃないかと」

「「「えっ?」」」

「この星かこの世界かはっきりしないが、ここを知る誰かが日本に行き、そしてソーマジック・サーガを作った。

 そして何らかの方法で、あのイベントをクリアしたプレイヤーを、ここに飛ばしてきたんじゃないかと思う。

 最初に王女が話していたが、この世界は実在する世界だと言っていた。ただ、そう言ってもゲームと似すぎている。

 ここを参考にソーマジック・サーガが作られたとするならば、反映されている情報はその時まで。さっきの飲み屋のように、ここの新しい要素がゲームにアップデートされていないから、あの店がなかったんだと思う。

 この仮説だと基本的につじつまが合う」

「確かにそうだな。そもそも日本に戻る方法があるという話だから、この世界と日本が何らかの形で繋がっているのは明白だろう」

「そして疑問は2つある。まずどうやって日本へ戻るのか。そして、なぜこんなことをしているのかだ」

「ソーマジック・サーガでも魔法使いだけが使える転移魔法がありますが、それを使うということでしょうか」

「それも考えたが、あの転移魔法は取得してから行った場所でなければ使えない。

 つまりこれからエリが覚えたとしても、日本に行けないから、その転移魔法で日本に戻るのは不可能だ。やはり何か別の方法があると考えるのが自然だろう」

「確かにな。ただ、こっちに来たんだから、戻る方法があると考えていいはずだ。意味もなくダンジョンでレベル上げっていうのはないと思うけどな」

(王女が俺たちを利用するためにレベル上げさせている可能性も否定はできない。ただこの考えはまだ話さないほうがいいだろう)

「なぜこんなことをするのか。俺たちにレベル上げをさせて何がしたいのか、これも良くわからない。

 他の星からの侵略者といっても、ダンジョンでも見たことがないし、住民からはそんな危機感も感じないだろ。

 あとはダンジョンの仕組みも意味不明だ。なぜ階層を下がるごとに相手のレベルが上がっていくのか。なぜ魔物がアイテムをドロップするのか。

 これがゲームの世界なら理解はできる。ただ現実世界でこれは理解できない」

「死んだ魔物のどこから剣が出てくるのか。確かに目の前でその光景を見ると違和感ありまくりね」

 サトルのこの世界に対する評価は「違和感」だ。異様なまでに、現実とゲームがバランスよく整っている。

 魔物、ダンジョン、アイテム、レベル、魔法、単位、通貨、食事、住民、召喚獣、王女…そのすべてに違和感を感じるが、何度考えても答えは出ない。

 ただこの違和感に気づいたことによって、後に彼らの運命は大きな荒波に揉まれていくことになる。

 そしてその横でサトルたちの疑念を聞きながら、黙々とついていく4匹の召喚獣の姿があった。


第一章終了

「第二章:明らかになっていく真実 遺跡調査」へつづく
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

処理中です...