―ミオンを求めて―スピンオフ世界

ハコニワ

文字の大きさ
上 下
12 / 50
第一章 カイト側

第12話 浜田幸の希望

しおりを挟む
菜穂なほちゃん…」
『知り合いですか?』
「知り合いもなにも友達よ!」
 キッと睨む。カイトは「はぁ…」と曖昧な返事を口に出し、チラッと画面を見つめた。
「良かった……生きてて……」
 つぅと頬に透明な涙が伝った。
『あ、多分ですけど死んでますよ?』
 静まった空気にカイトが何食わぬ顔で爆弾を言った。
「……は?」
『だから、多分死んでますよ』
 キョトンとした顔でいる。幸はカッと目を見開いた。
「あの子はとても強い子よ、死なないわ!」
『確定しました、死んでます』
「なっ……!!」
 幸はわなわな口を庵ぐり。顔がみるみる青ざめる。俺が代わりに聞いた。
「どうして死んでると?」

『この世は強き者は死に、弱き者ほど生きる世界です』

 ピッと電源を落とし、大型テレビがゆっくりと上に登ってく。夜の静寂。頭が置いついていけない。だか、はっきり分かるのは外でも地獄と化している事。
『この映像を見せた理由は皆さんに絶望を蒔く為です』
 初めて目がうっすら笑った。輝いていない笑み。ステージで俺らを見下ろし、恍惚した表情。
 絶望…? そんなのもう…いいや本当の絶望とはこれだけじゃない。
 絶望とは親愛なる人物の死。そして、壊された日常。
 幸をチラと見た。顔面蒼白で身体をささに支えてもらっている。今まで絶望しなかったのは、親愛なる人物が生きてるという希望があったから。だか、今は本当の絶望に押し負けられてる。あれこそがまさに絶望。ここにいる全員の顔も脱力し、絶望してるに決まってるだろう。

 この絶望になんとも魅力を感じたのは俺だけだろうか。

 瞬きした瞬間だろか。まだ、状況が読めない。ステージに男が現れた。全身黒の格好した男。
 瞬きした瞬間だぞ、また変なのが現れた。頭の整理をさせてくれ。
 カイトはふと男に気づくとそれまで無表情だったのが子供らしい明るい笑みになった。まるで、迷子になった子どもが親を発見した明るい表情。
 何やら話し込んでいる。ステージから近かったので聞き耳を立てて会話を聞いた。

「どうだ、順調か?」
「うーんと、この時点でまだ多いです。ナミは?」
「順調らしい、お菓子を爆買いしてた」
「うぅ、ナミのくせに…」
「僻むな、お前も凄い」
「……!! ありがとうございます! カミュ様!」

「か、かみっ!?」
 俺は声を上げた。
 静寂仕切った空間によく反響する。しまった…と思わず口を覆う。
 二人はキョトンとした顔でみつめていた。
まさか、これで殺されるんじゃないだろうな。冷や汗が一気に溢れる。
 しかし、二人はサッと顔を戻し、また陽気に会話を続いけてる。あれ? と思った矢先、どぉんと雷鳴でも落ちた衝動音が轟いた。下から上に、立ってもいられないほどの地鳴りがやってきた。
 悲鳴の中が益々、混乱する。あの日の爆発と同じくらい。
 足元の床がピシピシキシキシ亀裂が入り、歪むようになってきた。
 こんな時でも二人の会話が聞こえた。
二人も手を床につけ、困惑の色が隠してない。
 ゲーム主催側が困惑している?
 これは次のゲームじゃないのか…!?

「カミュ様! これってっ…!!」
「ミオンだ、このドームを壊せるのはミオンしかいない」
 男が言った。すると、また忍びのようにフッとどこかに消えていった。ステージに残っているのはカイト。口にマイクを持ってく。声色がやや早口だ。
『皆さん、落ち着いて下さい! この先、落ちても……』
 巨大扇風機が室内に入ってきた。冷たい風だ。ブワッと吹き荒れ、埃と落ちていたフォークが浮く。その力は人さえも。
 亀裂が見事重なり、足元の床が上空に投げ飛ばされた。天井を見上げた。今まで自分たちは上空の建物にいたのか…考えてる暇はなく、心也もまた、上空に投げ飛ばされた。

 上空に身を投げ出された心也たち。このまま落ちれば……。
心也たちの運命はいかに……。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

旧校舎のシミ

宮田 歩
ホラー
中学校の旧校舎の2階と3階の間にある踊り場には、不気味な人の顔をした様なシミが浮き出ていた。それは昔いじめを苦に亡くなった生徒の怨念が浮き出たものだとされていた。いじめられている生徒がそのシミに祈りを捧げると——。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ゴーストバスター幽野怜

蜂峰 文助
ホラー
ゴーストバスターとは、霊を倒す者達を指す言葉である。 山奥の廃校舎に住む、おかしな男子高校生――幽野怜はゴーストバスターだった。 そんな彼の元に今日も依頼が舞い込む。 肝試しにて悪霊に取り憑かれた女性―― 悲しい呪いをかけられている同級生―― 一県全体を恐怖に陥れる、最凶の悪霊―― そして、その先に待ち受けているのは、十体の霊王! ゴーストバスターVS悪霊達 笑いあり、涙あり、怒りありの、壮絶な戦いが幕を開ける! 現代ホラーバトル、いざ開幕!! 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...