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第三章 ファイルステージ
第46話 良い夢へ…
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「託されたんだ…希望も夢も…」
ポツリと颯負が小声で呟いた。
心也は何か武器になるものを想像するが、心也もだいぶ、ダメージを受けている。
「託された…!? そんなの、他人の願望を任されただけに過ぎない!」
くってかかる勢いで心也が言う。
マグマがもう、目前と近い。落ちかけた時のあの暑さではない。自分から落ちるのとは訳が違うことが分かった。勇気も覚悟もそれ相応にいる。
「…ある子には希望の世界を託されて、ある女の子には生きる事を託された…」
心也か、または自分自身に言っているのかポツリポツリと細切れに力なく言う。
もう一歩、行けば、マグマの溝だ。あぁ、暑い。くっついているから、余計に暑苦しい。
「…けど、わかったんだ。希望という名の世界にはその子がいない…このまま残ってもナミたちの器になってしまう。それはどんな苦痛でどんなものなのかはっきりとわからない。ナミたちにとって、器は希望だ。このゲームで残ったら、ナミたちの思い描いた世界になってしまう。世界が全部、人ではなくなる…だから」
トマトのような赤いマグマが二人の顔を照らす。
一歩という所で足をとめ、個店にいるナミに振り向いた。一切の光が見えない赤い瞳と目が合う。
「この世界、〝人〟の絶望で終わらせ、お前らの描いた希望も終わらせる!」
強く言ったあと、コロンとポケットに入れてた懐かしのものがコンクリートの床に落ちた。カランと乾いた音が辺りにこだまする。
落ちたものは、菜穂が桜に属していた際の証、ピンクのピンだった。ずっと、握りしめ、死んだ時に形見を残そうと菜穂からとったものだった。
ずっと持っていたからなのか、薄汚れてて、所々、ピンクの塗料が堕ちているのがある。しかし、それでもマグマの湯気によって、光沢していた。
まるで、ピンからは〝やりな! 颯負くんのしたい事、思いっきりやらなきゃ!〟と菜穂が拳を握りしめ、強く言ったような気がした。フッとその時、死という恐怖が和らいだ。
ゆっくりとナミから、マグマのほうに顔を向け、片足だけコンクリート製の床から足を離れた。その勢いに心也の重みと覚悟がつらなり、マグマの溝にゆっくりとスローのように落ちていく。
「おい、おいおいおいおいおい!」
心也は瞳孔が開き、泣き叫ぶようにその場に声だけを残したまま颯負と一緒にドブンと暑い灼熱のマグマへと落ちていった…。
〝おかえりなさい! よくここまで頑張ってきたね!〟
菜穂がいつもの笑顔で颯負に抱きつく。
〝遅い! いつまで待たせるつもり!?〟
それを横目で見てた玲緒は途端、鋭い目つきに変わり、声をあげた。
〝ほんとほんと〟
少し離れたところでナイトがこくこく首を頷いている。
〝感動の再会です!! うっ涙が…〟
目に貯め込んだ涙を堪え切れなく和奈が泣き出した。
みんな、ここにいたのか。やっと、会えた。
〝会えた、じゃない! 無茶してばっかり! さ! 行きましょ〟
白くって細い菜穂の腕が颯負の前に伸びてきた。その手のひらをまじまじ見つめ、颯負はふと、後ろを振り向いた。
あいつは?
〝あいつって?〟
一緒に来たつもりなんだが、迷子か?
〝たぶん、もう行ったんじゃないかな? 早く行きましょ! ここより先にあなたを待っている人たちが大勢いるから!〟
優しい笑みで颯負の手を握り、前へと歩いた。その先には一筋に光が。マグマよりも鮮明で太陽のような温かさ。光を見ただけで、体が溶けそうだ。
菜穂が握り締めた手のひらを今度は握り合うように、お互い指の関節の間に指を絡みあわせ、隣で歩いた。
もう、今度は絶対、離さぬようにと…。
その光へと、菜穂と一緒に並んで進んだ。
ポツリと颯負が小声で呟いた。
心也は何か武器になるものを想像するが、心也もだいぶ、ダメージを受けている。
「託された…!? そんなの、他人の願望を任されただけに過ぎない!」
くってかかる勢いで心也が言う。
マグマがもう、目前と近い。落ちかけた時のあの暑さではない。自分から落ちるのとは訳が違うことが分かった。勇気も覚悟もそれ相応にいる。
「…ある子には希望の世界を託されて、ある女の子には生きる事を託された…」
心也か、または自分自身に言っているのかポツリポツリと細切れに力なく言う。
もう一歩、行けば、マグマの溝だ。あぁ、暑い。くっついているから、余計に暑苦しい。
「…けど、わかったんだ。希望という名の世界にはその子がいない…このまま残ってもナミたちの器になってしまう。それはどんな苦痛でどんなものなのかはっきりとわからない。ナミたちにとって、器は希望だ。このゲームで残ったら、ナミたちの思い描いた世界になってしまう。世界が全部、人ではなくなる…だから」
トマトのような赤いマグマが二人の顔を照らす。
一歩という所で足をとめ、個店にいるナミに振り向いた。一切の光が見えない赤い瞳と目が合う。
「この世界、〝人〟の絶望で終わらせ、お前らの描いた希望も終わらせる!」
強く言ったあと、コロンとポケットに入れてた懐かしのものがコンクリートの床に落ちた。カランと乾いた音が辺りにこだまする。
落ちたものは、菜穂が桜に属していた際の証、ピンクのピンだった。ずっと、握りしめ、死んだ時に形見を残そうと菜穂からとったものだった。
ずっと持っていたからなのか、薄汚れてて、所々、ピンクの塗料が堕ちているのがある。しかし、それでもマグマの湯気によって、光沢していた。
まるで、ピンからは〝やりな! 颯負くんのしたい事、思いっきりやらなきゃ!〟と菜穂が拳を握りしめ、強く言ったような気がした。フッとその時、死という恐怖が和らいだ。
ゆっくりとナミから、マグマのほうに顔を向け、片足だけコンクリート製の床から足を離れた。その勢いに心也の重みと覚悟がつらなり、マグマの溝にゆっくりとスローのように落ちていく。
「おい、おいおいおいおいおい!」
心也は瞳孔が開き、泣き叫ぶようにその場に声だけを残したまま颯負と一緒にドブンと暑い灼熱のマグマへと落ちていった…。
〝おかえりなさい! よくここまで頑張ってきたね!〟
菜穂がいつもの笑顔で颯負に抱きつく。
〝遅い! いつまで待たせるつもり!?〟
それを横目で見てた玲緒は途端、鋭い目つきに変わり、声をあげた。
〝ほんとほんと〟
少し離れたところでナイトがこくこく首を頷いている。
〝感動の再会です!! うっ涙が…〟
目に貯め込んだ涙を堪え切れなく和奈が泣き出した。
みんな、ここにいたのか。やっと、会えた。
〝会えた、じゃない! 無茶してばっかり! さ! 行きましょ〟
白くって細い菜穂の腕が颯負の前に伸びてきた。その手のひらをまじまじ見つめ、颯負はふと、後ろを振り向いた。
あいつは?
〝あいつって?〟
一緒に来たつもりなんだが、迷子か?
〝たぶん、もう行ったんじゃないかな? 早く行きましょ! ここより先にあなたを待っている人たちが大勢いるから!〟
優しい笑みで颯負の手を握り、前へと歩いた。その先には一筋に光が。マグマよりも鮮明で太陽のような温かさ。光を見ただけで、体が溶けそうだ。
菜穂が握り締めた手のひらを今度は握り合うように、お互い指の関節の間に指を絡みあわせ、隣で歩いた。
もう、今度は絶対、離さぬようにと…。
その光へと、菜穂と一緒に並んで進んだ。
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