―ミオンを求めて―スピンオフ世界

ハコニワ

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第三章 ファイルステージ

第40話 爆発

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 腹立たしさで家を出た。
込上がってくるのは腹立たしさだけじゃない。放置された孤独心と劣情を曲げられた事。
心の中にどす黒い感情が浮かぶ。

 朝から気合をいれてポニーテールにしたつもりが無駄になってしまった。家を出て、外を首だけキョロキョロ見渡した。
帝斗はおろか、人一人いない。
 はぁと深い溜息を口からし、髪に結んでいるお気にいりの碧緑色したギンガムチェックのシュシュをパサッと取った。
 気合をいれすぎたのか、金色の髪の毛が頭から抜け落ちてくる。
シュシュを手首にはめ、仕方なしと、森に入った。
 人一人でも見つける為、鬱蒼とした森に入る。
 木が周りに囲まれ、黒い空に天高くまで伸びている。鬱蒼とするだけにヒヤリと冷気のような冷たい空気が感じられる。それが肌に伝わり、鳥肌がたつ。
「やっぱ、帝斗様…待とっかな」
 ささはきびすをかえそうと足元を一歩後退した。
 だか、その時頭の中にふと嫌悪感がさす。今、踵を返し、帝斗様に寄り付いても相手にしてくれない。ましてや、こんな時に何やってんだ。
はぁとまた深い溜息をもらした。


「あな…―だよ…わたしの…―に、いるのは」
「そん―…ないあた…―も…―」
 ふと、声がした。
 森の中で反響し、何処にいるかわからない。だか、確実にいる。聞き覚えのある声だった。小さくてどこかふわふわした特徴ある声はたぶん、胡桃だ。いつも人の後ろでおどおどしている内気な性格の持ち主だったが、ふと気づいた時には人の隣にいるようになってきた。
いつも仁王立ちしている女が消えてから特に。

 もう一人は確か…麻乃かな。強きな口調で内気な胡桃を引っ張ってくれるリーダー各のような存在。
 二人とも、こんなところで何話してんだろ。
思わず、聞き耳をたて雑木林に囲まれた周りを見渡した。が、景色はみな同じ。人影は見えない。

 気になったので、いっそう闇に溶け込んだ木の間に足を踏み入れる。小枝を踏むたび、パキと乾いた音がする。徐々に二人の声がはっきり聞こえるようになってきた。

「私、こう見えても看護師の夢、持っているの…」
「うわ~すっご!あたしは正直いってそんな夢持ってないな~せいぜい事務かな~?」
 将来の夢について希望あふれた会話が聞こえる。

 森をぬけ、人の影も姿もはっきりと見えるようになってきた。広場のような広い場所に足が止まった。中央には壊れた噴水がある。水が流れていない。ところどころ、ヒビが入り黒ずんだカビがある。
 その噴水の近くに椅子があり、こちらも壊れかけで錆がある。椅子の上に胡桃と麻乃が並んで座っていた。
 もうここまでくると、会話も丸聞こえだ。二人とも笑みを絶やさず楽しい会話をしている。そんな二人の間に入るのは少々、気まずい。が、どうしても話したい事があるのだ。
「でさ…―」
「あははは…どうしたの?」
 急に会話が途切れたかと思いきゃ、二人の間にささが入ってきた。
「いないと思ったらどこ行ってたの?」
「……探索派と狩り派に別れて行動しているよ」
 麻乃と胡桃がささを見て同時に言う。
「そう、なんだ」
 胡桃が手招きして、ささも椅子の上に座る。二人の空いた席に座ると、時同じくして、数名の見知った人物がやってきた。
「疲れた~」
「狩りすぎてお腹すいたわー」
「とっととずらかろうぜ」
 何を意味していて言ってるのか検討がつく。
「あ、帰ってきた!」
 表情が何故かいきいきしている。

満足そうに大股で歩いてくる。
「何人か死んだね…」
「うん…」
麻乃が帰ってきた奴らと話す。


 その時、広場に女が駆け込んできた。

 見知らぬ顔たち。黒い髪に清楚が伝わってくる。森の中を走ってきたのか、肩で息し、汗だくで、ヨロヨロとおぼつかない足取りで近づいてくる。

髪の毛から覗かせる顔の表情はわからない。

ただ、感じたのは『死』…――

 そう直感した直後、衝撃波と光が女のほうから突然現れ、広場から森まで辺りを黒焦げにさせた。









「…―ん」

何が起きたのだろう。

正直わからない。けど、爆発が起きて吹き飛ばされたんだ。一体誰が?

薄っすらと瞼を開けてみた。からだが重い。思うように動かない。

砂埃と強烈な火薬の臭いで鼻の神経がおかしくなる。

いいや、脳から伝わる全ての神経が鈍っている。

まだ、状況が曖昧な中、視界がやっとはっきりとなった。

大朴が倒れ赤い炎を纏っている。赤い蛍扮も舞い、広場とはいえない場所となった。いいや、ここはもう広場じゃない。目の前には、カイトに用いられた私たちの家がある。
ここまで、吹き飛ばされたんだ。

それじゃあ、私と一緒にあの場所にいた皆は…。

虚ろな思考であの時間をゆっくりと思い出した。

ふと、視界に見覚えのある顔たちした男が。ささを見下ろしている。まるで必死に餌を運ぶ蟻を見つめる眼差し。

「てい―…と……さま」
「……」

乾ききった弱々しい自分の声に驚いた。
それ以前に、からだの一部に違和感がある・・・・・・・・・・・
どうして、そんな眼差しを向けられてるのかはっきりとわからない。

「わ……たし…とやって……くれま、すよね……?」

やっと口に言えたのは自分の願望だった。しかし、帝斗の顔は変わらない。冷めた表情に冷たい眼差し。

何故か呼吸が苦しい。早く答えが聞きたい。
それを、分かったのか帝斗が腰を曲げ中腰になってささを見上げてきた。そして、不敵にクスっと嗤う。

「無理だよ。そんな身体だとね・・・・・・・・

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