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第三章 ファイルステージ
第34話 弱者は強者へ
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心也が強烈な言葉を放った10分後の話。
撒き餌さにする心也の考えは凪に見ぬかれていた。凪は自分は撒き餌さにはなりたくないと、胡桃や麻野をつれ自分の部屋に篭った。
他にも、レッスン2から仲間になった二人もいる。凪の部屋には計5人の人間が円を囲むように座っていた。
今ごろ、他の皆は人を狩っている。静まった空気の中、緊迫と不安が大きくなった。
円の中心には人数分用意されたコップ。その中身は、毒にも似た死を呼ぶ飲料。
「いい? いくよ」
凪がすぐさまコップを掴み、天井に上げた。それを合図とし、5人もコップを掴み凪のコップの側に寄る。凪は5人の顔をしっかりと見渡しそのコップを口に運んだ。
それと、一緒に二人も飲む。飲む途中、カランとコップと液体が零れた。床もその液体で濡れる。濡れた床の中で凪と二人は足をジタバタ藻掻き苦しみだした。ある者は側にあった物やコップを足で飛ばし、ある者は大股で床を叩き出す。
凪は鼻水や涙を零しながらもまだこの状況で飲んでいない胡桃と麻野を見上げた。ライオンのような目つきが塩水でウサギとなっている。
ここでいつもならビビる胡桃は今や、床に這いつくばってる凪を見て微笑してる。
「凪……本当にごめんね」
這いつくばってる凪の顔付近の床にコップを置く。まだ、液体が入って真上の照明を映してる。それと同じく麻野も床に置く。
「凪とは昔から一緒だったけど、今の今まで分かり合えなかったね…別にいいの私には麻野ちゃんがいるから………凪は凄いよ、頭だけ。けどね、凪といるとね虫唾が走るの!!」
凪の部屋を麻野を連れて出る。苦しんでいる凪を扉が完全に閉まるまで見上げてた。
凪は死んだ、今ここで。
麻野が黙って胡桃を胸の中におさめる。笑ってる筈なのに、麻野にはそれが悲しんでる表情に見えたらしい。胡桃には良き理解者がいなかった。凪と一緒につるむ時、本当は自分は存在してないんじゃないか、死んでるのと同じじゃないか、としかし、このゲームで本当の理解者である麻野と出会い胡桃は変わった。
いいや、変わり始めたのだ。ありがとう、麻野と出会えたこのゲームは最高だよ。
―――
リビングルームに置いてあるテレビを颯負がつけると、そこに表示してあったのは相対する2つの数字。
『1日目 カイト側10人 ナミ側8人』
「だいぶ、減ったね」
玲緒がポツリと言う。静かな部屋にやたらと反響した。全員、チラッと葵に目がいく。それは同情的な気持ち。葵がその視線に気がつく。
「何よ、別に妹が死んでも悲しくないから」
強がりで言ってるかもと思いきや、本当に妹の雫の死を悲しんでいない。冷静でいつもと変わらない冷めた顔。しかも、目の端から涙も現れてない。
「そんな事ないだろぉ!!」
いきなり明が立ち上がり、声を上げた。涙腺が崩壊し、ポロポロ涙がこぼれている。
声も震えている。葵は明の表情をガン見しやや戸惑った表情をする。
「ほ、本当に悲しくないから涙拭きなさいな」
「これは汗だーーー!!」
大量というか濁流にも似た水をこぼしながら声を上げた。葵の口端が微かにひきつく。
「……か、悲しいなぁ~」
完全に棒読みと分かる程の口調。しかし、明は完全に騙され、それを聞いた途端ドバッと涙腺が崩壊した。
「そうだろそうだろ!! よし俺の胸の中で泣け!!」
「無理」
汚い、汚れる、却下と四拍子を即答でしかも、汚い人を見る目で言った。明は、益々ふさぎ込んだ。
それを横目で颯負はテレビ画面をきった。液晶画面が黒くなると、探索した短い時間で何を得たのか外に行ってない三月らに報告した。
「マンホール…あれは特殊で、別のマンホールへと行き来する事ができる…見つけたのはこれぐらいだ…すまん」
「いいよいいよ! 帰ってきただけでも勇者だもの!!」
三月がブンブンと手を顔の前で降る。その一言は希望で光のように眩しい。
「これからどうする?」
玲緒が放った一言でこの場は、現実の世界へと戻される。一瞬で、しんと静まり返った。全員の思考にはこのゲームから脱出する魂胆を探すが死のゲームから逃れられない事を知る。颯負はぐるぐると思考を働かせ、懸命にこのゲームに勝つ方法が考えた。考えても考えても、やはり、一つの答えに辿りつく。
「…やっぱり」
ポツリと口を開く。
一斉の視線が颯負に当たる。淡い期待と希望の目が颯負の心に鋭く当たる。颯負は声が曇りながらも、響くように呟いた。
「考えてもやっぱり…人を消さないと勝てないんだ」
しんと静まり返った。大丈夫。これが本当の反応だから。颯負は返ってくる答えはないだろうとたかをくくっていた。しかし、そんな考えは一瞬でナイトに断ち切られる。
「そんなの、皆とっくに気づいているし、ただやらないだけ」
ふぅと呑気に新商品のお茶を口に運んだ。この緊迫した空気の中、一人だけお茶を平らげている。皆も、そんな反応。分かり切ってる事で、誰も口に出さなかった問題を颯負が軽々と言ってのけた。
「あっちには犬飼がいる…油断はできん」
「でも、致命傷は与えたんでしょ?」
玲緒がナイトをチョイと指をさす。呑気にお茶を飲んでいるナイトは怪訝にその指を見る。
撒き餌さにする心也の考えは凪に見ぬかれていた。凪は自分は撒き餌さにはなりたくないと、胡桃や麻野をつれ自分の部屋に篭った。
他にも、レッスン2から仲間になった二人もいる。凪の部屋には計5人の人間が円を囲むように座っていた。
今ごろ、他の皆は人を狩っている。静まった空気の中、緊迫と不安が大きくなった。
円の中心には人数分用意されたコップ。その中身は、毒にも似た死を呼ぶ飲料。
「いい? いくよ」
凪がすぐさまコップを掴み、天井に上げた。それを合図とし、5人もコップを掴み凪のコップの側に寄る。凪は5人の顔をしっかりと見渡しそのコップを口に運んだ。
それと、一緒に二人も飲む。飲む途中、カランとコップと液体が零れた。床もその液体で濡れる。濡れた床の中で凪と二人は足をジタバタ藻掻き苦しみだした。ある者は側にあった物やコップを足で飛ばし、ある者は大股で床を叩き出す。
凪は鼻水や涙を零しながらもまだこの状況で飲んでいない胡桃と麻野を見上げた。ライオンのような目つきが塩水でウサギとなっている。
ここでいつもならビビる胡桃は今や、床に這いつくばってる凪を見て微笑してる。
「凪……本当にごめんね」
這いつくばってる凪の顔付近の床にコップを置く。まだ、液体が入って真上の照明を映してる。それと同じく麻野も床に置く。
「凪とは昔から一緒だったけど、今の今まで分かり合えなかったね…別にいいの私には麻野ちゃんがいるから………凪は凄いよ、頭だけ。けどね、凪といるとね虫唾が走るの!!」
凪の部屋を麻野を連れて出る。苦しんでいる凪を扉が完全に閉まるまで見上げてた。
凪は死んだ、今ここで。
麻野が黙って胡桃を胸の中におさめる。笑ってる筈なのに、麻野にはそれが悲しんでる表情に見えたらしい。胡桃には良き理解者がいなかった。凪と一緒につるむ時、本当は自分は存在してないんじゃないか、死んでるのと同じじゃないか、としかし、このゲームで本当の理解者である麻野と出会い胡桃は変わった。
いいや、変わり始めたのだ。ありがとう、麻野と出会えたこのゲームは最高だよ。
―――
リビングルームに置いてあるテレビを颯負がつけると、そこに表示してあったのは相対する2つの数字。
『1日目 カイト側10人 ナミ側8人』
「だいぶ、減ったね」
玲緒がポツリと言う。静かな部屋にやたらと反響した。全員、チラッと葵に目がいく。それは同情的な気持ち。葵がその視線に気がつく。
「何よ、別に妹が死んでも悲しくないから」
強がりで言ってるかもと思いきや、本当に妹の雫の死を悲しんでいない。冷静でいつもと変わらない冷めた顔。しかも、目の端から涙も現れてない。
「そんな事ないだろぉ!!」
いきなり明が立ち上がり、声を上げた。涙腺が崩壊し、ポロポロ涙がこぼれている。
声も震えている。葵は明の表情をガン見しやや戸惑った表情をする。
「ほ、本当に悲しくないから涙拭きなさいな」
「これは汗だーーー!!」
大量というか濁流にも似た水をこぼしながら声を上げた。葵の口端が微かにひきつく。
「……か、悲しいなぁ~」
完全に棒読みと分かる程の口調。しかし、明は完全に騙され、それを聞いた途端ドバッと涙腺が崩壊した。
「そうだろそうだろ!! よし俺の胸の中で泣け!!」
「無理」
汚い、汚れる、却下と四拍子を即答でしかも、汚い人を見る目で言った。明は、益々ふさぎ込んだ。
それを横目で颯負はテレビ画面をきった。液晶画面が黒くなると、探索した短い時間で何を得たのか外に行ってない三月らに報告した。
「マンホール…あれは特殊で、別のマンホールへと行き来する事ができる…見つけたのはこれぐらいだ…すまん」
「いいよいいよ! 帰ってきただけでも勇者だもの!!」
三月がブンブンと手を顔の前で降る。その一言は希望で光のように眩しい。
「これからどうする?」
玲緒が放った一言でこの場は、現実の世界へと戻される。一瞬で、しんと静まり返った。全員の思考にはこのゲームから脱出する魂胆を探すが死のゲームから逃れられない事を知る。颯負はぐるぐると思考を働かせ、懸命にこのゲームに勝つ方法が考えた。考えても考えても、やはり、一つの答えに辿りつく。
「…やっぱり」
ポツリと口を開く。
一斉の視線が颯負に当たる。淡い期待と希望の目が颯負の心に鋭く当たる。颯負は声が曇りながらも、響くように呟いた。
「考えてもやっぱり…人を消さないと勝てないんだ」
しんと静まり返った。大丈夫。これが本当の反応だから。颯負は返ってくる答えはないだろうとたかをくくっていた。しかし、そんな考えは一瞬でナイトに断ち切られる。
「そんなの、皆とっくに気づいているし、ただやらないだけ」
ふぅと呑気に新商品のお茶を口に運んだ。この緊迫した空気の中、一人だけお茶を平らげている。皆も、そんな反応。分かり切ってる事で、誰も口に出さなかった問題を颯負が軽々と言ってのけた。
「あっちには犬飼がいる…油断はできん」
「でも、致命傷は与えたんでしょ?」
玲緒がナイトをチョイと指をさす。呑気にお茶を飲んでいるナイトは怪訝にその指を見る。
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