―ミオンを求めて―スピンオフ世界

ハコニワ

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第一章 カイト側

第11話 絶望なる内へ

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 赤い幕で隠してるステージ上の照明だけがついてる。それは静寂仕切った辺りには眩しい程。赤い幕が突然、引いていった。
 ステージの中央にただ一人、ポツンと少年が立っている。黒がかかった茶髪はどこかで見覚えがある。赤い目が細めた。口にマイクを持ってく。

『レディースアーンドジェントルメン!! 皆さんご機嫌よう!!』

 口調と声色ではっきりと分かる。
 今まで映像しか顔を合わせてないのでここで やっと録音したものではないと分かる。ざわざわと騒ぎだした。
 少年、カイトの両目から放つ光が明かりのせいなのか光沢しギラついていた。そして、腕を横に広げた。それで、一同はやや黙る。
『さて、ここいらで余興は終わりです』
 広げてた手をパチンと鳴らした。
 すると、皿を持っていた者や食べていた連中が暴れ出した。ブクブクと水膨れのように身体が膨れ頭が風船のように膨らんでいる。
「いやああああ!!」
「ぅ……ひっ!!」
 暴れ出した連中は助けを求めるように向かって来るが、それをゴキブリのようにあしらう。
 下半身は痩せ上半身だけは風船のように膨らんでる者や目が飛びでそうな者もいる。最後には風船が割れたようにパンと辺りを血の色にさせた。
 コロコロと血の海を転がる目玉。

 暫くは悲鳴が轟いた。嗚咽吐く者やさらに暴れる者も。異様な異臭が室内に漂う。腐った食べ物よりも強烈な臭いに鼻を摘んだ。
 それでも尚、顔色一つ変えないカイトはまた喋る。

『この場に残ってる者たちはいわば運があったという事ですね。銀杏 11名、紅葉 14名計25人レッスン4合格ですね』
 ざわざわとまだ騒いでる。そんなのをお構いなしでカイトは何かのリモコンを取り出した。
 すると、ステージの真上からステージと同等の広さを持つテレビが下がってきた。テレビというかよく、学校で映画鑑賞に用いるあの白いフイルムだ。まさか、この状況で映画鑑賞するつもりなのか。
『このゲームは世界各国で試されています。世界中の皆さんが懸命にゲームを遂行していますよ』
 ピッと電源を入れた。すると、そこに写ってたのは……。






『こちら……す…大規模爆発が起きてゴフッ…起きて丸ふつ…ゴホゴホ…丸2日が経ち……ゴホ!』
 50代に見える女性アナウンサーが咳をしながら実況してる。やや、ノイズがあり聞きとりづらい。その奥に瓦礫の山となっている建物が映ってる。アナウンサーの咳込みも激しく、テレビからでも緊迫した雰囲気が分かる。
 この時点で一同の目が釘付けになった。騒いでたのが一瞬にして静かになる。
 カイトが違うチャンネルにかえた。

 次に映ったのは『東京都心大付属大学病院とうきょうとしんだいふぞくだいがくびょういん』の院内の中が映ってる。両親が務めてる病院だ。両親のことなんて、頭から消えていた。
 院内の中は丸2日が経っても尚、患者が運びこまれてる。普段は渡り歩く廊下に患者が横たわっていた。院内は想像もできない不穏と恐怖に彩られてた。
 叫ぶ者や暴れる者、それを看護師が必死にとめ、その横で命救おうと必死な医師。
「おかあさん…」
 誰かが言った。その声は押しつぶされるほど、弱々しい。
「どうして!? 外の人たちは関係ないはず!」
ささが声を上げた。その声に誰もが賛同した。しかし、カイトの胸には堪えてない。いつもの表情。いいや、無表情に近い。

『外に残った人々たちにも死を味あわせて頂きます。選択にも爆発にも巻き込まれなかった者たち、この2日で起きたこと、全て見ますか?』

 カイトの問に誰も返答しない。
 ドッと冷や汗がかくほど緊迫した。理解できない。
 状況と頭の整理も整えないまま、また違うチャンネルに変えられた。次に映ったのは瓦礫の山と荒れ狂う人々。
『これは数時間前のナミ側の人々です』
 ざわとした。
 崩壊した建物と人の身長を悠々と超えた動物が人を襲っていた。
「なにあれ、巨大ネズミ?」
「牛も酉もいる…」
 俺には、はっきり分かった。この動物たちは十二支だ。でも、何で動いてるのか分からない。あっちでは一体何が起きてる。
『ナミ側もこちらと同じくレッスン4を終えたと思います』
 ピッピッとチャンネルを変える。何処を変えても、荒れている。
「ちょっと待って、今の止めて!」
 幸がステージに駆け寄り、いきなり声を上げた。しかも、カイトに向かって。幸はカイトを鋭く睨みつけた。対して、カイトはキョトン顔で黙って先程のチャンネルに変える。
 幸が指名したテレビの奥に映っていたのは、二人の人間。対して可愛くもない女と男が映っている。
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