―ミオンを求めて―スピンオフ世界

ハコニワ

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第一章 カイト側

第3話 空

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 帝斗が脇に手をいれてきた。ささに限ってはそれだけでヒャァンと甲高い雌声をだす。
 ぐるりと一周すると、遠くに飛ばされた。まるで、砲丸投げのような。
 飛ばされた勢いは巨大扇風機を間近であびたような勢いだ。ささとはその勢いで離れてしまった。

 どうやって着陸しようかと迷った際、一つの大きな空洞があった。そこに手をかける。一瞬、落ちそうになったが、残ってた力で踏ん張った。

 ささがいない今、やっとこのゲームを楽しめると思った。
 残り時間が分からない今、ひたすらに前だけを見た。蔦のトゲがまだある手の平を自分でえぐるように段を掴む。雲の上を自分は登っている事に息は続くのだろうかと考えたが一瞬で消えた。
 突風が吹き、ますます身体が冷たくなって徐々に段を掴む手の平さえも麻痺してく。
上を見上げた。あの男のおかげで、頂上が近い。

『ブロック解除します 残り30分』

 どこからか透き通った淡々とした女性のアナウンスが渡ると掴んでいた石垣が突如、ガタガタ緩み、ついにはフッと消えた。
 間一髪、違う石垣を掴んだが反応が遅かったら下に真っ逆さまに落ちていた。ゾッとした。
心の奥底に新しい何かが芽生えそうになった。
「何してんの?」

 ジーンと心躍る感情が胸に浸っていたら、足元から声がかかった。
 ハッと我に返り、足元を見る。そこには、さっき同じスタート地点にいた男、帝斗がいた。百面相していた俺の顔見てニタニタ笑ってる。
「速いな……」
「ガンガン踏んづけできたからね」
 眩しい笑顔で言う。人を踏んづけて、ひきずり出して前に進む輩はコイツだけじゃない。
 周りを見渡せば数人ほどいる。気が狂ったように人を空中へと投げ出してる。

――
「何今の!?」
 ささの声が空に渡った。現段階で石垣のポジションに加わったので、こんなシステムがあるということは当然、知らない。
 慌てふためいたものの、今や辺りは、前しか見てない。誰もささの問には答えてくれない。
 そんな時、黒髪ロングの女の子が答えてくれた。
「10分ごとにあるシステムだよ、時間ごとに掴んでる石垣が消える、だから早く登らないと」
「そうなんだ…」
 若干、冷たい顔してるが優しい一面に惚れ惚れしたささはロング女の子のあとをついて回る。
「ねぇ、あの時間何してた? 私はねヤり終わったとこだったのあ、私は牟田ささ」
「……」
 無言で軽蔑な目で見られる。しかし、ささにとってこの目は日常茶飯事のようで気にしない。陽気に聞いてみる。「ねぇねぇ~」としつこく聞いてくるささに対して嫌気がさしたのか仕方なくと少女の口は開く。
「寝てた……私は浜田 幸はまだ さち
「幸! 一緒に頂上まで登りきろう!」
「え? 一緒に?」
 うんうんと首を縦に振る。幸は若干、嫌な顔したが仕方なくささと一緒に頂上に向かう。

――

「よっこらせっと」
 頂上に先に着いたのはなんと、帝斗だった。
スタート地点から休まず登ってきたこいつの身体はどんな能力があるんだ。
 そんな思いで帝斗を見上げてた。余裕ぶりでゴロンと寝っ転がり欠伸をかいてる。
「来ないのか?」
 ふいに聞かれた。
 ジッと鋭い目が見下ろしている。
 心也が頂上が目の前だっていうのに登りきらないのは理由がある。もう一度、あの感覚に浸りたいからだ。
 しかし、自分に残っていた力はもう既に底をつきている。冷たい風にあたりすぎて手の感覚も麻痺してる。こんな状態でまたあのシステムがきたら次こそ落ちる。
 あの快感は得たいが死にたくはない。嫌々で、頂上にあともう少しの石垣を掴み、やっと登りきった。
 空中に浮いてる白いプレートを見れば、俺らと同じく登りきっている輩がちらほらいた。
プレート内の空気は安堵と異様な静けさだった。
ふいに寝っ転がっている帝斗がケラケラ笑って言った。
「お前……世に言うサイコパスだろ」
「………は?」
 言われた言葉に正直戸惑った。何言ってんだと男を睨む。しかし、帝斗は全て見透かしてる目を細め不敵に笑った。
「お前と一緒にすんな」
 限りなく低音で喋った。すると、ぐでんと横になり、ガーガー寝てしまった。
「一体なんなんだ…」

『時間をきりました。レッスン1終わりです』

 上空にまた映像が浮かび、カイトが真顔で映っていた。プレートを見れば、ごく少数人いる。その中でささを探した。
 明るい金髪のウイッグをしているのですぐに発見した。やっと登り切った感じで身体だけをプレートに、足はまだ上空に浮かんでる。

「ぎ、りぎり……」
「もっ、ほんと……こんなのこりごり……」

 突如、空中に浮いてた石垣が崩れ始めた。まだ、登ろうとしてる者も一緒に。俺はささのとこに向かった。
「ささちゃん、お疲れ」
「あ、心也くん……」
 隣にいる女の子が「誰?」と問う。束の間、帝斗が寝起き顔でやってきた。
「はぁぁん♡ 帝斗様、約束の!」
 ささが両手を胸の前で合わせ帝斗に向かってた。帝斗は「いいよ~カモン!」とポーズを取り笑ってる。
それを他所に
「約束…?」
 女の子がこの状況を見て怪訝に聞いてくる。女の子、幸はあの時いなかった為、知らないのも当然である。

 カイトが両手を胸の前で合わせた。

『皆さん、お疲れ様です今は風などをシャットダウンしてるので大丈夫ですよ。では…』

『レッスン2に進みたいと思います』

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