―ミオンを求めて―スピンオフ世界

ハコニワ

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第二章 ナミ側

第25話 ひと時の…

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「ってか風呂入りたい…」
 葵がくんくんと自分の袖を嗅いだ。ゲェと鼻を摘み、腕を放す。
 確かにと、颯負も自分の匂いを嗅いだ。
 その匂いはまるで、何日も洗い忘れたユニフォームの匂い以上にキツかった。
 その場の全員も自分の服の臭いをフンフンと嗅ぎつける。一斉に眉をあげる。
「風呂ならあったよ」
 ナイトが指先で体育館の扉付近を指さした。一斉にそこに向かう。なんと、そこにはちゃんと女子風呂と男子風呂が設置されてた。
「風呂だあああああ!」
 明がその場でスッポンポンになり、男子風呂に一目散。女子は甲高い悲鳴を上げ、明に罵り言葉を言うが本人は気づいてない。
 明を最初に、女子たちも風呂に入っていった。

§

「………何で皆、そんな大きいわけ?」
湯船を鼻まで浸かり、玲緒がふてくされた顔で言う。
「し、仕方ないよ、玲緒さんはまだ成長期…だもんね」
 和奈が湯船に浸かっても尚、震え声を出す。玲緒は和奈の膨らみを目だけ送った。タオルで隠しても形はバレバレ。
「……成長期、終わったつぅの」
 益々、ふてくされた顔をする。
「亜里のおっぱい大きい!」
「い~や~!!」
 三月が背後から亜里の胸を鷲掴みし、上下に揉む。拍子に巻いていたタオルが取れ、コポッと水面上に浮き上がった。その様子を見てた玲緒はチっと舌打ちする。嫌悪感ではなく、嫉妬からだ。
 二人はいちゃいちゃと裸で攻防戦し、水面が海のように波打っている。
「はぁ、うるさ」
 葵が湯船から上半身を起き上がらせ、石段に乗る。その身体にはタオルすらも巻いてない。
白くてたわわに実った2つのものとピンク色したその突起物はまさに女でさえも魅了する。
「なによ」
 葵がふてくされた玲緒の視線に気がつく。玲緒は鼻まで浸かるのをやめ、フンと鼻をならし、あからさまに顔を逸らした。和奈はそれを見て、1人アタフタする。

§

「おーい、風邪ひくぞ~」
 颯負が呼んでも、明と矢野だけは女子風呂に繋がる壁に耳を当ててる。
「たくっ…」
 湯船に浸かり、頭に置いたタオルを整えた。
「この次…あるのかな?」
 不意に隣にいたナイトが口を開く。会った時よりも表情がかなり動いてる。
「さぁな…」
「人間やめたね」
 その発言に思わず顔を見た。全て見切ってる目で遠くを見つめてる。それは、颯負が猿や虎に放った力の事を言ってるのか。

「あの時…自分でもわからなかった…あの感じ、ずっと前からあった気がしてならない」

 湯船から片手を前に出した。手の平の中にはやや白いお湯が入ってる。
 目を瞑れば、あの時の力のない自分と菜穂の死ぬ際が見える。悪夢のように連続して。颯負はナイトよりも先に湯船から上がった。

 もともと着ていた桜の服はボロボロで着れないので、各ロッカールームに用意された服に着替えた。色彩したシャツだった。
 颯負は着替えるとずっと隠し持っていたピンをポケットに。女子風呂から女子も上がると、颯負たちはステージにナミがいる事に気がつく。
『13人…。よくここまで頑張ってきたね。ナミ、涙が出るよ』
 涙なんて流してない目元に手を持ってく。ステージから階段を使って降りてきた。
『ここまで生き残ってる者は体力、思考、判断力に五感…それに、運があるってことだよねっ!!』
 パチリとウインクをした。少しずつ近づいてきてる。
「ナミ、約束覚えてるよな?」
『ちょい待ち、約束は次のレッスンの後でいい?』
 上空に手を伸ばし言った。ナミの口から次と言った瞬間、辺りがヒンヤリする。
 途端、ニッと不敵な笑みをした。
『お次は空中落とし!』
 途端、体育館の屋根や床、壁が全て後ろに後退した。部屋の隙間から冷たい風が吹き荒れる。
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