―ミオンを求めて―スピンオフ世界

ハコニワ

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第三章 ファイルステージ

第36話 更なる闇の手

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  2日目



 その日の颯負たちの顔色は疲れきっていた。ここまで、もった平常心が薄れていく。部屋に集まったのは、生存している8人。

 最初の頃、亜里がゴロゴロしていたソファーの上には和奈や葵が腰掛けている。
冷蔵庫を隅から隅まで見張る矢野の代わりにナイトが冷蔵庫の中を荒らしてる。

 口数が少なくなり、話題といっても何もない。喋るとしたら、今後の話題だけ。静寂しきった室内の中、誰も今後の事に首を突っ込まない。
寧ろ、喋る事がタブーとされる程、おもぐるしい。

「え、これ賞味期限切れてんじゃん」
 この静寂しきった中で放った、ナイトの一言が緊迫した空気を壊す。ナイトは冷蔵庫と棚を物色しながら、色々と物をあさくる。
すると、明がこの時を待っていたといわんばかりに声を上げた。
「こっちには未来もみえる占い師、玲緒がいるぜ! こういう時は出番じゃないのか!?」
 丁度、飲もうとしてたお茶をヒックリ返す所を慌てて受け止めた。
 明が尊敬の眼差しで玲緒を見つめる。玲緒はプィとその視線から目を外し、期待の裏の答えを言う。

「占いって稀だし…ほら、前占いの結果をナミの前で言おうとしてたじゃない? あれ、ナミの言う通りだなぁって…私の占い…当たらなかたし」
 しんと静まり返った。
 尊敬の眼差しだった明の表情がうっすら、冷めた顔になるのを見過ごさない。
 暗い曇天の空気に嫌気がさしたのか、葵の溜息が深かった。
「……で、どうすんの?」
 若干、苛立っている口調。
 葵は颯負の目を睨むように問いだした。
「外に行ったらかっこうの餌食に、敵の本拠地に潜り込んでも何があるかわかんない。このままじゃ、こっちが全滅させられる。何かないわけ?」

「何かって…」
 うーん、と頭を捻っても纏まった考えは浮かばない。しかも、考えてるのは人を消す方法。あまり、浮かんできてもほしくない。
その時、この時を待ってたかのように自信満々で三月が手をあげた。
「呼び寄せる…とかは?」

「呼び寄せる…?」
 一斉、三月の言葉を揃えて言った。三月はうんうんと頷き、フフンと自慢げに内容をペラペラ話す。
「誰かが数人を引き寄せて、その隙に本拠地を狙う、とか!?」

 自慢げに話した後は案の定、やっぱりかと期待を裏切った空気になった。玲緒は一つ深い溜息を吐くと、冷めた目で

「誰かが引き寄せる役って誰がすんの? それって、自分から死んでいくのと同じじゃない、そんなのこの中で、誰もいない」
 そう言っきったあと、颯負がなんと手を挙げた。
「俺がやる、この中で一番やれるきがする」
 出たよという避難を浴びるかと思いきや、早々に承諾してくれた。









―――
 集まった一同の口は閉じ、静寂な時間だけが進んでいた。
「あ、あの人…まだ生きてるよね?」
 麻野が問いかけてきた。チョイと指先で帝斗を指差す。
「……生きてるよ、けどあまり無理はできない」
 そう言うと、麻野の顔が輝いた。
「良かったー生きてる」
 安堵の面持で声を出す。他の皆の息も安堵が漏れている。こいつらにとって人数の数さえあれば、それだけでいい。誰かが、負傷しても別にいいのだ。
「これからどうすんの?」
 ささの曇った声で、部屋がまた静まり返る。人数減りゲームが始まって、2日と経ったのが、この人数になっている。
 緊迫と不安と不審感に押しつぶされそうになる。
 そう、俺に対しての不審感が増している。一斉の顔は被害者面していた。
あの作戦に乗ったのは自分たちなのに。今でもくってかかりそうな目をしてる奴もいた。
「皆、よそう、こんな時は助け合いだよ!」
 ささが声を上げた、が、俺とは目線を合わせない。口先だけの偽善で、クスと笑いが込上がってきた。心也にとって、こんな空気は然程、平気だ。
 皆の視線が痛いとも感じない。
むしろ、良い方向をしたと思っている。

 〝自分の命を犠牲にし、相手の戦力を減らす〟作戦はもう、通用しない。だとしたら、今度はどうでる。

 脳裏にある作戦がよぎった。それは身の毛もよだつものだった。

 ポツリと口を開いた。
一斉に視線が集中する。視線や表情からも喋るなというオーラが伝わってきた。

「皆は生き残りたくはないのか? 外には…あらゆる罠がはってある、時代劇の仕掛けとかいっぱい…」
そう言うと、一斉の視線が痛くなった。
「この期に及んでまた、企むのかよ!」
「勘弁して!」
と絶叫にも似た声が心也に襲いかかった。心也は溜息つかず、外にある罠というものを淡々と喋った。
 最初から最後まで喋ったら、全員の目が泳いだ。心也が語った罠の内容は、この状況を切り抜ける話しだったからだ。
うまく、駒のように手の平で廻ってくれる。ここで、心也が後押しのように言葉をいれた。

「今からこの作戦をやらないとこのままでは皆、死ぬよ? 俺の考えた策でいけば絶対に生き残れる」
 辺りがしんとなった。全員の顔を順々に見比べてみる。
 不審化や不穏があった空気が一変し、心也の作戦にのる。
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