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第一章 カイト側
第9話 涙が伝って
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接着剤の液は人より巨大になり、見事にその場の足を止めた。ヌルヌルした液が広がり、足だけではなく、身体までもが、白い液に捕まっている。
「しまっ……抜け……」
肝心の凪も足元だけじゃなく腰までつかっている。
「きゃぁ! 何よこれ!?」
「気持ち悪ー」
警護としてやってきた者たちにも接着剤が回り、身体が身動きとれてない。
凪はこの仕業は一体誰なのか一瞬で分かった。
「胡桃の奴……役立たず!」
「ヤバイです! この、接着剤……中々抜け……」
奈津子が接着剤に抵抗しようと暴れてる。そのせいで、かなり手足や髪の毛までも白い液がくっついてる。
茂みから男が現れた。
鞘を抜いた日本刀を手に持ち、こちらに向かって来る。キラッと日本刀の刃が光った。鋭いのが分かる。男が向かってくるのは奈津子の方だった。
「……え」
ここで要約気づく。狙われてたのは自分だと。
「奈津子ぉ!!」
凪が叫んだ。しかし、その声は奈津子の耳には聞こえない。
奈津子はこれまでの出来事を走馬灯のようにに思いだした。楽しかった事、辛かった事、友達と屈託のない話しをしたあの日の事だって。今まで繋がってた身体ともお別れ。男がもう目の前までやってきた。一切の躊躇もなく刀を上げる。
「参り……ました」
奈津子は呆然と言った。自分は死ぬんだと初めて知った絶望感とこのゲームでこの男と先に同盟を組めば良かったのではと後悔がうずく。
が、その声は近くにいる凪さえも聞こえてない。無論、心也も。
涙が頬を伝った。親や先生たちに簡単に涙を流してはいけませんと教えられてきた。けど、真っ暗に佇む絶望と目の前に広がる死の恐怖がそそり、勝手に涙が出てくる。
刀が振り下ろしてきた。躊躇もない攻撃と奈津子の名前を何度も叫んでる凪の声がマッチしてる。
『ストーーーーップ!!』
奈津子の首間際で刀止まった。声のした方向を剥き出しに心也は睨んだ。上空に映像が浮かんでいる。無論、カイトだ。何食わぬ顔でいる。いいところでとめたカイトにふつふつと怒りがこもった。
「なんの用だ」
『ただいま、杏子が白旗をあげました。よって勝敗が決まりました』
パンと両手を合わせフッと笑った。俺はふつふつと沸騰しそうになる怒りを抑えた。
「話しが違う。首をとれば終わると言ったじゃないか」
『ええ、確かに、ですがキングよ白旗をあげてる者をそれでも撃ちますか?』
撃つ、その先に快感があったら。
それを見透かしたのか、カイトが目を細めフッと上空に手を伸ばした。
『勝者、銀杏 敗者、杏子になりました。よって杏子は私刑です』
手を伸ばした指を交差し、パチンとならした。
その瞬間、パァン!と肉が破裂する音が響いた。目の前にいた奈津子や周りにいた杏子の者たちが見る形も影もない。残ったのはポタポタと滴する赤い血。
奈津子の首間際で止めてた刀もどうすることもできず黙って下ろした。
次にカイトが真顔で問いかけてきた。
『勝者の言い分を聞きます。紅葉をどうしますか?』
途端に凪の身体がピクッと動いた。俯き、顎がカチカチなる程身震いしてる。
『紅葉と杏子は同盟を結んでました。同盟は死んでも生きてます。敗者国杏子がいない今、紅葉をどうしますか?』
この女は使える時に使ったほうがいいかもと思う。例えば、身代わりや実験…とか。
「紅葉は生きててほしい…」
カイトがなる程と首を頷く。そして、両手を横に広げ、パン!と手の平同士を合わせた。
『決まりました。現在、銀杏 17名 紅葉 21名計38人レッスン3合格!』
わぁと物陰から幸が出てきた。笑顔で駆け寄ってくる。
他にも、生き残った紅葉や銀杏の者らが広場にざわざわと集まった。
安堵の顔が漏れている。話し込む者やわんわん泣く者まで。
接着剤の効力がきれ液体が全て水になった。赤い血と水がこの場に濡らしてる。そんな地面でも尚、凪は腰を落としてる。
当然のように茂みから帝斗とささが寄ってきた。ささは帝斗の胸に顔を埋めながら少々顔が赤く染まってる。俺がいない間、二人はそんな関係になってるのかと理解した。
別に二人が関あんな関係になろうが知ったこちゃない。
「お久~拷問された?」
幸と同じ質問をぶつけてきた。
「されてねぇよ、ところで何処に居た」
「森奥」
ニコニコとやってきたという笑顔で言う。はぁと溜息をつく。
「な、凪ちゃ」
「この役立たず!!」
地べたに落ちている凪を不安げに胡桃は覗いてきた途端、目をギラつかせ声を上げた。胡桃はビクビクし、ごめんなさいの一転ばり。その近くに同じく紅葉の一員麻野が近寄ってくる。
「どうどう……ここは落ち着いて」
「はぁ!? この私が!!策略に気づかなかった! こ・の私が! 私をここまで生かしとくの、絶対撒き餌にするつもりだ!」
息を詰まらせないでフゥフゥと息を上げ肩で息をした。麻野はその揺れてる肩をポンと手をおいた。
「落ち着いて、ね? ここはあんたらしく冷静に……考えて」
「……っ!!」
凪は益々縮こまった。悔しさと恐怖で頭がいっぱい。なのに考えてられない。悔しさでどうしようもなく拳を地面に叩きつけた。何度も。水浸しになった地面はベッチョリして泥水の水滴が辺りを散らす。
一人の善良のキングが死に、凪の憎悪にも似た後悔と心也の人間の奥深しい闇でレッスン3は終わった。
「しまっ……抜け……」
肝心の凪も足元だけじゃなく腰までつかっている。
「きゃぁ! 何よこれ!?」
「気持ち悪ー」
警護としてやってきた者たちにも接着剤が回り、身体が身動きとれてない。
凪はこの仕業は一体誰なのか一瞬で分かった。
「胡桃の奴……役立たず!」
「ヤバイです! この、接着剤……中々抜け……」
奈津子が接着剤に抵抗しようと暴れてる。そのせいで、かなり手足や髪の毛までも白い液がくっついてる。
茂みから男が現れた。
鞘を抜いた日本刀を手に持ち、こちらに向かって来る。キラッと日本刀の刃が光った。鋭いのが分かる。男が向かってくるのは奈津子の方だった。
「……え」
ここで要約気づく。狙われてたのは自分だと。
「奈津子ぉ!!」
凪が叫んだ。しかし、その声は奈津子の耳には聞こえない。
奈津子はこれまでの出来事を走馬灯のようにに思いだした。楽しかった事、辛かった事、友達と屈託のない話しをしたあの日の事だって。今まで繋がってた身体ともお別れ。男がもう目の前までやってきた。一切の躊躇もなく刀を上げる。
「参り……ました」
奈津子は呆然と言った。自分は死ぬんだと初めて知った絶望感とこのゲームでこの男と先に同盟を組めば良かったのではと後悔がうずく。
が、その声は近くにいる凪さえも聞こえてない。無論、心也も。
涙が頬を伝った。親や先生たちに簡単に涙を流してはいけませんと教えられてきた。けど、真っ暗に佇む絶望と目の前に広がる死の恐怖がそそり、勝手に涙が出てくる。
刀が振り下ろしてきた。躊躇もない攻撃と奈津子の名前を何度も叫んでる凪の声がマッチしてる。
『ストーーーーップ!!』
奈津子の首間際で刀止まった。声のした方向を剥き出しに心也は睨んだ。上空に映像が浮かんでいる。無論、カイトだ。何食わぬ顔でいる。いいところでとめたカイトにふつふつと怒りがこもった。
「なんの用だ」
『ただいま、杏子が白旗をあげました。よって勝敗が決まりました』
パンと両手を合わせフッと笑った。俺はふつふつと沸騰しそうになる怒りを抑えた。
「話しが違う。首をとれば終わると言ったじゃないか」
『ええ、確かに、ですがキングよ白旗をあげてる者をそれでも撃ちますか?』
撃つ、その先に快感があったら。
それを見透かしたのか、カイトが目を細めフッと上空に手を伸ばした。
『勝者、銀杏 敗者、杏子になりました。よって杏子は私刑です』
手を伸ばした指を交差し、パチンとならした。
その瞬間、パァン!と肉が破裂する音が響いた。目の前にいた奈津子や周りにいた杏子の者たちが見る形も影もない。残ったのはポタポタと滴する赤い血。
奈津子の首間際で止めてた刀もどうすることもできず黙って下ろした。
次にカイトが真顔で問いかけてきた。
『勝者の言い分を聞きます。紅葉をどうしますか?』
途端に凪の身体がピクッと動いた。俯き、顎がカチカチなる程身震いしてる。
『紅葉と杏子は同盟を結んでました。同盟は死んでも生きてます。敗者国杏子がいない今、紅葉をどうしますか?』
この女は使える時に使ったほうがいいかもと思う。例えば、身代わりや実験…とか。
「紅葉は生きててほしい…」
カイトがなる程と首を頷く。そして、両手を横に広げ、パン!と手の平同士を合わせた。
『決まりました。現在、銀杏 17名 紅葉 21名計38人レッスン3合格!』
わぁと物陰から幸が出てきた。笑顔で駆け寄ってくる。
他にも、生き残った紅葉や銀杏の者らが広場にざわざわと集まった。
安堵の顔が漏れている。話し込む者やわんわん泣く者まで。
接着剤の効力がきれ液体が全て水になった。赤い血と水がこの場に濡らしてる。そんな地面でも尚、凪は腰を落としてる。
当然のように茂みから帝斗とささが寄ってきた。ささは帝斗の胸に顔を埋めながら少々顔が赤く染まってる。俺がいない間、二人はそんな関係になってるのかと理解した。
別に二人が関あんな関係になろうが知ったこちゃない。
「お久~拷問された?」
幸と同じ質問をぶつけてきた。
「されてねぇよ、ところで何処に居た」
「森奥」
ニコニコとやってきたという笑顔で言う。はぁと溜息をつく。
「な、凪ちゃ」
「この役立たず!!」
地べたに落ちている凪を不安げに胡桃は覗いてきた途端、目をギラつかせ声を上げた。胡桃はビクビクし、ごめんなさいの一転ばり。その近くに同じく紅葉の一員麻野が近寄ってくる。
「どうどう……ここは落ち着いて」
「はぁ!? この私が!!策略に気づかなかった! こ・の私が! 私をここまで生かしとくの、絶対撒き餌にするつもりだ!」
息を詰まらせないでフゥフゥと息を上げ肩で息をした。麻野はその揺れてる肩をポンと手をおいた。
「落ち着いて、ね? ここはあんたらしく冷静に……考えて」
「……っ!!」
凪は益々縮こまった。悔しさと恐怖で頭がいっぱい。なのに考えてられない。悔しさでどうしようもなく拳を地面に叩きつけた。何度も。水浸しになった地面はベッチョリして泥水の水滴が辺りを散らす。
一人の善良のキングが死に、凪の憎悪にも似た後悔と心也の人間の奥深しい闇でレッスン3は終わった。
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