―ミオンを求めて―スピンオフ世界

ハコニワ

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第一章 カイト側

第7話 捨て駒

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「初めまして銀杏のキング久保心也殿、そしてさようなら…」
 不敵に笑ったのを最後に五人の一斉に放った銃声が轟いた。嘘だろ、こんなのに俺は死ぬのか。弾がくるまでスローモーション。
 嫌だ、こんな所で死にたくない! 咄嗟に逃げる態勢をした。が、自分には反射反応がない事を今さら知る。
 すると、心也の前に帝斗が覆うように前に出た。
「ナメられたモンだねぇ…」
 背から感じる冷たい冷気、黒い何かが帝斗の身体から浮き出た。持っていたバットを野球の如く構えた。

「満塁……ホームラーン!!」
 と5人の小さい弾を一発で投げ飛ばした。見事に飛ばした弾は真ん中の男の頭に命中。
「やっべ、ホームランできんかった」
 訛ったな~とケラケラ笑う。男は血を噴き出し、ドサッと地に倒れた。両目は白目を向き、口を半開き。ドクドクと頭から赤い液が水のように噴き出す。倒れたと同時にささが声を上げた。
「帝斗さま、やめて用があるのは心也くんだけだから!」
 俺を鋭く指さした。俺は唖然と頭がついていけなかった。ただ、腹の虫から怒りが込上がってきた。こっちはまだ、手を出していない筈なのに、狙われてしかも、ささを餌にして、こんな策略をねる紅葉は一体…怒りと快感と好奇心が心中の中に芽生えた。

 すると、心也だけの足元が光った。
「凪が……僕たちのキングがそこにも罠を貼れって……」
 男が言った。顔面蒼白で首にはどっぷりの汗が。しまった、逃げないと…! そう足を動かすが光から微動できない。
 光の先から引っ張られてるみたいに。徐々に光が強くなり目を開けられない程、そして、遂には前が見えなくなった。

























 ゆっくりと目が覚めた。
 部屋の中央で首を項垂れた状態で胡座していた。長時間、気を失ってたからなのか、腰と首が痛い。
 朦朧する意識の中、気を失う前の記憶を振り返る。
 そうだ、俺は紅葉の策略によってつかまったんだ。はっきりとしない視界で辺りを見渡した。牢獄と同じ広さ、アスファルトの壁に木材かプラスチックでできた木の柵、床は凍える程冷たい。
 唯一、外の光が差し込まれてる小さな穴が天井にある。
 ここは紅葉の牢獄場所か、やはり、俺は捕まったんだ。巧妙に仕組まれた罠にはまって。
はらわたが煮えくりそうだ。この俺が、女にハメられるなんて……この策を考えた女に一度でも人目会いたいと好奇心が芽生えた。

 矢先、暗闇から声が。

「体調どう? キング」

 紛れもなく女の声。薄暗い廊下から徐々に姿が現れる。あどけない顔に顔とは不釣り合いな程、胸が突き出ている。
「お前が紅葉のキング大迫 凪おおさこ なぎ?」
「そうだよ、初めまして」
 ニコッと笑った。
 あどけない顔は顔写真で脳に記憶してるから人目でわかったのだ。
「殺さないのか?」
「流石に首チョンパは無理なんだよね」
 真正面で体育座りした。なんと、パンツがくっきり見えている。が、ここで欲情する男はまずいない。
 しかも、こんな幼顔で勃つもんもない。一人知ってるけど…まぁ、置いといて。
「あの罠はいつからはった」
「朝、あんたらのエリアに人を置いて餌を撒いたの、案の定引っかかって良かったよ」
 朝…?しかし、朝は確か杏子だった。ささのように服が変わるシステムでも何故仮に杏子にさせたんだ? 紅葉でも良かったのに。
 女がクスと不気味に笑った。
「私たち、紅葉はねあんた達が知らない間に杏子と同盟を組んだの」
 女の目が途端ギラついた。狂ったように声を上げ、柵に顔を乗り出す。
「同盟くんだ私たちの敵はあんた! あんたには死しか選択肢がない!」

「凪ちゃん…」

 凪の背後から違う女の声。戸惑うような少し震えた声。凪がピタと止まった。俺も前に乗り出し凪の後ろを窺う。
 そこには、困った顔をした少女がいた。目まで掛かる前髪をお花の形したピンで止めている。
胡桃くるみどうしてここに?」
「皆が、心配して、たの、行こう」
 微かに震えてる。凪ははぁと諦めたようにここから立ち去った。胡桃という女の横を通り過ぎる際、肩同士をドンと叩きつけた。尚、お構いなしにスタスタ歩く。姿が闇に溶け込んだ後、胡桃という女が小走りで駆けつけた。
「同盟は本当だけど、凪ちゃんもよく分からないの……だから敵は一人じゃない、よ……あと……」
 目がおよおよと魚のように泳ぐ。言っていいのかな、うんと…という戸惑いが口から漏れてる。が、よし!と目をキリッとした顔でやっと言い放った。
「キングさん……あなたの仲間がキングを返せって城を攻め立ててるの、今はこっちが優位に立っている……けど、あなたの仲間が大勢死んでるの」
「構わないよ」
「え!?」
 胡桃の今まで小さかった声がここで大きくなる。ぎょとした仰天の目で俺を見る。俺はフッと優しい笑みをし、毒にも似た言葉を言った。
「仲間というのはね、捨て駒と一緒さ大勢って言ってるけど大丈夫、死んだ数ほど俺はここを抜け出せる」


「心也くん!」

 聞き覚えのある声、暗闇から鞘のある刀を持った幸が走ってきた。胡桃の目は飛び出しそうに驚いてる。俺は笑みが隠せなかった。発言した言霊が現実になったのだから。

「ほらね…」

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